「三人寄れば文殊の知恵」ローズメイカー 奇跡のバラ Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
三人寄れば文殊の知恵
できすぎ。
ありえなさすぎ。
ここまで現実味がないと、エンタメとして成立していないと思う。
出だしは良かった。
「ババアの匂いだ」という冒頭のフレッドの発言は、フレッドの嗅覚の鋭さを物語る、何気ない伏線であった。
タトゥーを見て新種のアイデアを思いつくところは面白いし、泥棒シーンでは「おっ!そっちもアリか」と楽しんだ。
優れているが、独りよがりな育種家ヴェルネが、「三人寄れば文殊の知恵」とばかりに、素人メンバーとの交流で、新しい世界を切り開いていく話だと思ったのだ。
しかし、観終わってみれば、どのエピソードを取っても、小手先のありえない話の集積でしかなかった。
唯一、まともな人間ドラマであるフレッドのファミリーストーリーも、バラとは何の関係もない、取って付けたような話だ。
どれもこれも、話が浅すぎる。ここまで浅いと、フレッドの嗅覚の話さえ、ご都合主義に思えてくる。
中国産の原生種っぽいものと、脆弱だが最高の香りを持つ“オールドローズ”をかけ合わせて・・・というのは、いかにもありそうな発想だ。
しかし、たった1年で“コンクールでグランプリを狙う”なんて、ヴェルネのようなプロの育種家ならば、ありえないギャンブルではないだろうか。
自分はバラについて何も知らないので、この映画が育種家の実際の姿を再現してくれることで、いろいろ蘊蓄を与えてくれると期待したが、たいしたことはなかった。
そもそも、畑や温室での作業シーンが乏しすぎる。
コンクールでは、バラの形や色だけでなく、香りも重要な判定要素であることは、「やはりそうなのか」であった。しかし形が悪くても、香りが良い種はあるだろうし、香りの専門家でない審査員に何が分かるのか? と不思議な気がした。
また、記憶違いかもしれないが、ラマルゼル社では、水耕栽培で大量生産しているというシーンがあったと思うが、今やそうなのだろうか?
「最初はバニラとレモンで、次にパイナップル、最後はチョコ」、そんな香りをもつ健康で形の良い「奇跡のバラ」を、“ど素人三人による文殊の知恵”で作れるなら、苦労はないのである。
本作品の制作者は、恥を知れ。