劇場公開日 2022年10月14日

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「主演のクリステン・スチュワートの熱演に注目!」スペンサー ダイアナの決意 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0主演のクリステン・スチュワートの熱演に注目!

2022年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ダイアナ妃を主人公にした映画は、つい先日ドキュメンタリー映画である「プリンセス・ダイアナ」を観たばかりでしたが、ほぼ同時期に本作「スペンサー ダイアナの決意」も上映していたので、比較してみるのも面白いと思い観に行きました。「プリンセス・ダイアナ」はドキュメンタリーなので、当然ダイアナ妃ご本人が登場する訳ですが、本作は俳優が演じる創作。しかしチラシや予告編を観ると、主演のクリステン・スチュワートが本物かと思うくらいダイアナ妃にそっくりなので、まずそれに驚かされました。初めて観る女優さんなので、元々ダイアナ妃に似ている方なのかと思ってググってみると、実際は全くそんな雰囲気はなく、寧ろ対極に位置するような感じの女優さんだったので、さらにビックリしました。因みにチャールズ皇太子を演じたジャック・ファーシングは、さほど似ているとは思えませんでしたが、エリザベス女王を演じたステラ・ゴネット、結構似ていたと思います。

内容については、ダイアナ妃が丁度30歳の時、1991年のクリスマス前後の3日間を舞台に、ダイアナ妃の心的風景を描いたものでした。当時ダイアナ妃は、夫であるチャールズ皇太子(現イギリス国王 チャールズ3世)の浮気に思い悩んでおり、後のインタビューで自傷行為や摂食障害にもなっていたという史実を膨らませる形で創られていて、幻覚にも悩まされているというお話になっていました。

面白かったのは、16世紀当時、自らの離婚のためにイギリスをローマ教皇圏から独立させ、英国教会を設立したことで有名なヘンリー8世と彼の2番目の妻であるアン・ブーリンにまつわる話と、チャールズとダイアナの話がリンクされて創られていたところ。ヘンリー8世は生涯で6人の妻を娶った稀代の好色家でしたが、そうした自分は棚に上げ、アン・ブーリンを不義密通などを働いた廉で処刑しました。本作の中のダイアナ妃も、チャールズ皇太子がカミラ女史(現 カミラ王妃)と通じているにも関わらず、他の男性と通じているのではないかと疑いが掛けられ(実際ダブル不倫することになる訳ですが)、周囲から窘められます。
この辺りは、イギリスの歴史を知っているとより楽しめると思いますが、知らなくても充分に楽しめる創りになっていたかと思います。(実際私も映画を観た後に調べました(笑))

ただ、ダイアナ妃の混乱した内心を表すため、アン・ブーリンの幻覚が登場すると同時に、ホラー映画チックな音楽が多用されていたのには、ちょっと違和感を覚えました。制作の意図は分からないではないですが、完全なホラー映画ではない訳で、あのホラー調の音楽は中途半端感が満載でした。

また、本作が描かれた3日間の体験を通じてダイアナ妃が離婚を決意し、自由に羽ばたくということで締めくくられていましたが、鳥かごを飛び出た「雉」が、その後どうなったかを知っている我々としては、非常に複雑な思いを抱かざるを得ないことも事実でした。

そんな訳で、主演のクリステン・スチュワートの熱演には大いに拍手を送りたいところですが、作品全体としてみると手放しで称賛できるものではなかったため、評価は★3としました。

鶏