劇場公開日 2021年8月27日

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ホロコーストの罪人のレビュー・感想・評価

全26件中、1~20件目を表示

4.0浮き彫りになる幾つもの表情に胸えぐられる

2021年8月30日
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ナチスによる大量虐殺を描いた映画は数多い。が、本作のような作品に触れると、その一つ一つに事情の異なる惨劇が刻まれていることに胸えぐられる思いがする。例えばこの映画の舞台はノルウェーで、当地には当地特有の、今なお禍根を残す事情が刻まれている。ここにはナチス侵攻後、手先となってユダヤ人政策を推し進めた秘密警察の存在があった。すなわち同国民の手によって多くの人が収容所へ送られたのである。幸福の中にあったユダヤ人家族がたどる運命に焦点をあてつつも、やはり強烈な印象を残すのは、ごく普通の人々が淡々と職務を遂行するように政策遂行に手を染める姿。人はおのれが悪魔へ変貌しているときほど、その事実に気づかない。あるいは気づいていても平然と自分を正当化しようとしているかのようだ。そうした幾つもの表情が本作では克明に浮き彫りにされ、言いようのない衝撃が広がる。これもまた人類の教訓として受け止めるべき一本である。

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牛津厚信

3.5ユダヤ人について勉強不足で…

2022年2月6日
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同じ人間なのになぜこんなにいがみ合い、殺しあうのか悲しくなる。宗教、肌の色の違いなど原因は様々だが、解決する日はくるのか…。私の勉強不足でした。

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ろくさん

4.0ユダヤ人としての誇り。

2021年12月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲惨さは語らずも、ナチスの酷さがノルウェーまで及んでいたという事にも驚く。

国がユダヤ人を登録させた時に誰もが無視をしていたら…。
誰がユダヤ人なのか?分からなかっただろうなと思う。
敢えて自ら登録してしまった経緯がユダヤ人なんだなと思う内容でした。

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April

4.0ノルウェーでのホロコースト

2021年10月24日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

第2次世界大戦中のノルウェー。ユダヤ人一家のブラウデ家はボクサーの息子チャールズが結婚し、幸せな生活を送っていた。しかし、ナチスドイツがノルウェーに侵攻し、世帯調査を行い、ブラウデ家の人達をはじめとするユダヤ人男性はベルグ収容所に連行され、過酷な労働を強制された。残された妻や母たちは父や夫の帰りを待ちながら、スウェーデンへ逃亡する準備も進めていた。しかし、1942年11月、ノルウェー秘密国家警察によってノルウェーのユダヤ人全員がオスロ埠頭へ移送され、船に乗せられ、アウシュビッツへ送られた。着いた日にシャワーを浴びるという名目で全裸にされガス室へ送られて全員虐殺されたホロコーストのノルウェー版の話。
ユダヤ人に対する虐殺の作品は何本も観てきたし、ナチスドイツの酷い行為も知っているが、この作品のポイントはノルウェー人が指示されたとはいえ自国民のユダヤ人に対してホロコーストに加担していた事実だろう。2012年になって初めてノルウェー政府がこの事実を認めたとの事で、やっと作れた作品なのかもしれない。
ノルウェーだけでなくナチスドイツが侵攻した地でのユダヤ人に対する酷い仕打ちは全ての地で起きていたことを予測出来ると思った。
ぜひ知っておきたい、観ておきたい作品だと思う。

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りあの

3.0自分より上なのか下なのか

2021年10月7日
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鑑賞方法:映画館

人間は意識しなくても、他人を自分より上なのか下なのかを判断し、接していると思います。
だから、下(ユダヤ人)と判断されてしまた場合は、攻撃対象にされてしまいます。
これは今の社会も同じですね。
学校、会社、または家庭の中でも、発生していると思います。
この問題を解決しない限り、人間は戦争を何度も繰り返すはずです。
だから、ノルウェー人がユダヤ人の迫害に加担していたというのは氷山の一角で、実際はヨーロッパのいたる場所で、似たような迫害が発生していたんだろうな・・と思いました。

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はるっち

4.0きっかけがあれば国や人は舵を切る

2021年9月29日
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鑑賞方法:映画館

降伏したから?敗戦したから?違うでしょう。
ナチスが強かったからというのはあるのでしょうが、ノルウェー内にユダヤ人を追い出したい人々は居たと思います。決して少なくない人数。根絶やしにしたいとは思っていなかったとしても、ナチスと利害が一致する人々は居たはず。

少しでも火種があれば、強い風が吹けば一気に大きな炎になる。ナチスへの降伏は風が吹いただけだったのではないかな?って思います。この火種がある限りいくらでも人は国はあの頃の過ちを繰り返す可能性があるのだとおもいます。日本にだってジェノサイドは発生した過去があるんです。この恐ろしさを改めて本作で味わいました。

日常がいきなり否定されて取り上げられる。人間として扱われなくなる。扱わない人間が生まれる。それを良しとする日々。淡々と無慈悲に進む悪夢からのラストの生々しさは胸が締め付けられます。これは、観るに耐えられないくらいです。人間はホントに恐ろしい。

このような家族がいったい何組いたのだろうか。

ホロコーストは繰り返してはいけない。しかし、火種がある限り繰り返すであろう。そして火種は確実に存在します。だって、学ばない人間のニュースは今でも目にする、世界のどこかで。

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バリカタ

3.5切なすぎる

2021年9月26日
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鑑賞方法:映画館

日常が奪われていく様が、ごく自然な事の様に描かれていた。抗えない事って驚くほど自然に起きる、なんて残酷なんだろう。

立場で人間は豹変する。
甘い汁を吸ってしまった側の醜さを自分も持っているのかと思いたくないが、否定できない。

船に乗せられるシーン、あれ母さんじゃないか?と母の姿に気がつく息子と父親。切なすぎる。

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パプリカ

4.0切ない

2021年9月23日
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鑑賞方法:映画館

ホロコーストや戦争の残酷さを心に沁みつけるために、定期的に観るようにしているが、この映画は切なかった。
自分にも、息子2人がいるので、自分も妻も観ている最中に苦しくなった(妻にはあとで聞いた)。
実際のモデルになった家族がいるのもショックだが、残酷なシーンがないのが救い。

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hanataro2

3.5答えのない答え

2021年9月16日
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鑑賞方法:映画館

「ドイツ」ではなく「ナチス」が悪になった為なのか、何よりもナチスは消滅している(表向き)のでホロコーストも含め作品化しやすいのかもしれない。そういった意味では日本はまだまだ「真正面から触れている」とは言い難い。良い作品もあるのだけれども、中々に難しい所。「関東軍」に押し付けるのも無理があるしね。
でも、この作品からは日本も向き合えるきっかけの様なものがあった気がしました。ドイツに占領されたとは言え、全力でホロコーストに加担したノルウェー。そのノルウェーが、「忘れてはいけない」と作った作品。実話ベース(最後まで知らなかった)なので、抱えた重苦しさが半端無く、ラストの老夫婦の歩みの中にある「なぜ??」にスクリーンの中も外も答えられない。してしまった事をシャープに記憶していくのも大事なのだと、改めて教えられた映画でした。

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lynx09b

2.5「ユダヤ人とは?」についての説明が欲しい

2021年9月7日
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鑑賞方法:映画館

単純

ヒトラー・ナチス関連の映画は毎年必ず新作が公開されます。過去の悲惨な出来事を忘れないために映画として記録並びに記憶するためです。でもドイツ人が観たらどういう気持ちなのか考えてしまいます。いつまでたっても「戦争犯罪人」のレッテルを貼られ続けています。つまりナチスはそれだけ多くの憎悪を今でも生み出している証拠です。
ただ私たちアジアに住んでいると、ユダヤ人がヨーロッパにおいてどのような立場だったのかが明確にわからないのです。そしてユダヤ教とは、ユダヤ人とは、さらに人種とは何かがいまひとつ明確につかめないのです。肌の色によって差別偏見ではなく、ユダヤ人と言うのはどういう人なのかと言われると説明がつかないのです。

海外旅行へ行った際、真っ黒い服を着て、大きな帽子をかぶって髭もじゃな人をユダヤ人と教えてもらったことがあります。

ですから、本映画の中に出てくるユダヤ人の人たちが普通の「白人」つまりノルウェー人に見えてしまって、いまひとつ心を寄せることができなかったのです。もちろん戦争は反対です。拷問も反対です。何より許せないのは女性と子供に暴力を振るうことです。これは人間として最低の行いだと思っています。

結局本映画はナチスの悪夢が今でも続いていると言うこと、二度と繰り返してはいけないと言う事を訴求していると思うのです。ただですね、最終的な映画の着地点が不明瞭なんです。主人公は生き残るんですよね。それは良かったと思うんです。
あれだけ愛していた奥さんと再会しますか、結局離婚して彼はその後に2度結婚するとテキストが流れました。ここがゲンナリしてしまうんです。作りとしてです。最近の映画の傾向でエンディングで、テキスト説明が入ることが多いです。できるのならテキストではなく映像で表現してほしいのです。文字なら本を読めばいいのです。

もし本当にナチスの悪夢が今でも続いているのであれば、主人公の彼が精神的な問題を抱えて人生を過ごしていたと言う事は描いて欲しかったですね。奥さんと別れるのも、2度結婚するのもうまくいかなかった理由は、すべてナチスドイツの悪夢が原因だったとか。またノルウェー人は今でも反省しているとか。などなど。
うーん、評価がなかなか難しい映画ですね。

『運だぜ!アート』のluckygenderでした

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『運だぜ!アート』

3.0ノルウェー版ユダヤ受難記

2021年9月4日
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大戦中のノルウェーで起きた、ユダヤ人一斉検挙のお話しで、あるユダヤ人一家の視点から平穏な生活が徐々に侵されていくのを非常にリアルかつ丁寧に描いています。一方で、丁寧過ぎてお話の展開が遅く、内容も新味に欠けるので、やや眠けも…。また、一斉検挙に地元ノルウェー人が関わっていたと言う反省がテーマになっている割には、ノルウェー側の状況や葛藤が大して描かれていないので、最後のテロップも取って付けたような印象です。役者では,主人公の嫁さん役のクリスティン・クヤトゥ・ソープが魅力的でした。

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シネマディクト

3.5何とも呆れるだけ・・・

2021年9月3日
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鑑賞方法:映画館

本作品、見ていて可哀想だとか、悲惨だとかではなく、呆れるだけ・・・・

当時、なぜ、ユダヤの人がこんな仕打ちを受けるのか、ノルウェーもなぜ、ドイツのこう言った考え方に賛同していたのか・・・・

どの映画も、ドイツ人全ての人がああ言った事をしたように描かれているけど、ドイツ人の中でも、ユダヤ人を守ろうとした人もいただろうし・・・・

本作品の内容を見ているだけだよ、ただただ呆れるだけ・・・・

現代に合わせて考えても、これから同じような事が起きても不思議じゃないし・・・・

結局、地球にとっても、自然界にとっても、ガンは人間なんだろうし・・・・

正直、その過ちを乗り越えられるのも人間なんだろうけど・・・・

日本人にとって色々な意味で馴染みのない内容なので、理解に苦しむ事もありますが、この様な映画がこれからの世の中に多大な影響がある事を祈ります。

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sally

4.5ひたすら悲し

2021年9月2日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

穏やかな日々が一転し闇に転ずるのは、ディア・ハンターを思い出してしまった。
ユダヤ人。
これは差別の根源なのでしょうか。
今でもセクハラなど色々な差別が叫ばれていますが、もうそんなことはどうでもいいでしょと言いたくなるほどの国をあげての理不尽な差別。

真っ黒い巨大なドナウ号か出現した時は怖さしかなかったですね。これが地獄への道なのか。
人間てのは本当に愚かな生き物。
悲しいですね。

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ダラ

3.5ホロコーストに関与したノルウェー

2021年9月2日
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ノルウェーの秘密警察の関わりをもう少し掘り下げて欲しかった。

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Oyster Boy

4.0こうも広範囲な国境を越えた大量虐殺はなぜ起こったのだろう

2021年9月1日
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鑑賞方法:映画館

ノルウェーの警察が、一般人の役所の事務員(と思う)が秘密国家警察からの急な命令に疑いもせず従う。
命令に反く恐怖は何故にここまで人を縛るのか。

どのホロコースト映画でも島国の日本人には理解しがたい。

ここで700人強のユダヤ人がつかまった一方で、千数百人は隣国スウェーデンに逃げ延びる。
スウェーデンはユダヤ人を捕まえない国だったと思われる。

印象的なのは船で運ばれ最後貨車でアウシュビッツに到着し、家族が束の間の再会を果たした後。
そのまま女子供年寄りはガス室へ直行なのだ。

何分だったろうか、無音。
何が起こるかわからないままただ黙々と指示にしたがうスクリーンの中の無言の人々、映画館の暗闇で何が起こるかわかっている我々観客を 無音と言うBGMが包むのだ。

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motti

3.0出来れば思い出したくない事。

2021年8月31日
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今年のホロコースト3本目

占領下だったとはいえ、ノルウェーがナチスに協力してユダヤ人を狩ったという事実を実在の家族の運命をもとに世に知らしめる目的で作られた贖罪映画。
長年事実を認めてなかったが2012年に国として初めて謝罪したそうだ。

まず謝らない事には許される事もない、、、自分で自分を許してはいけない、、だれも見ていなくても神が見ている、、こういうのはやっぱり宗教の違いかなぁ?

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masayasama

3.5「裏切り」と「家族愛」

2021年8月31日
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本日、「沈黙のレジスタンス」に続いて鑑賞。
こちらは上記作品より、時系列や登場人物がわかりやすく観やすい映画だと思います。
当時のノルウェーのお国事情で、自国の警察によって追い詰められていくユダヤ人家族がやるせない。同じ国民だったのに、事務員でさえ淡々と収容所にユダヤ人を送る仕事をこなす姿も怖い。隣人も信じられない環境で疑心暗鬼になりながら、家族や同じ民族を救いたいと願うユダヤ人たち。家族がバラバラになり財産も没収され処刑され、というのはよくあるお話かもしれませんが、アウシュビッツでの別れ方がとても切ない。「ソフィーの選択」を思い出しました。
個人的には、主演の男優さんが好み❣️

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ちゃっぴー

3.0「J」の押印

2021年8月30日
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悲しい

怖い

1940年のナチスの侵攻により壊れたノルウェーのユダヤ人一家の実話に基づく話。

ユダヤ人ではない女性と結婚したボクサーの二男を中心に、ある日突然ベルク収容所に連行された3兄弟と父親、及び、残された妻と子供達、そしてノルウェー人の加担等をみせていく。

ユダヤ人であるということを軽視した発言に対する父親のリアクションは、ルーツとか信仰とかそういうものに拘りの無い自分の胸には嫌な引っ掛かりがあったけれど、それはホロコーストの結末を知っているからいえることだよな…。

どこまでわかっていたのか、想像出来たのかわからないけれど、少しゆったりし過ぎにもみえた母親の後悔とか、スウェーデンへの脱出に対する葛藤とか、ある一つの真実の姿がみられてなかなか良かった。

現在では既に常識として何があったのかはわかっているだろうという前提なのだろうけれど、伝える作品としてラストはもう一歩先までみせて欲しかったし、字幕の部分ももう少しドラマとしてやって欲しかったかな。

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Bacchus

4.5【差別/沈黙する神】

2021年8月30日
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ナチス・ドイツは、第二次世界大戦中、大陸欧州のほぼ全域を占領下に治めていた。

ノルウェーの他、北欧ではデンマーク、ベルギー・オランダ・ルクセンブルクのベネルクス3国、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト3国、アウシュビッツのあるポーランド、いまは2国分かれたチェコスロバキア、ハンガリー、アルバニアなど東欧、オーストラリア、そして、フランス。一部地域や小国を含めたらもっとだ。

この作品のエンドロールの後に流れるテロップが、メッセージとしては、実は、様々なことを示唆し、重要であるように思う。

ノルウェーでは、映画に描かれてはいないユダヤ人に対する差別が他にも多くあったこと、更に、1200人ものユダヤ人がノルウェーからスウェーデンに逃れたことだ。

先に述べた国々では、ユダヤ人に関する調査が実行され、それは、虐殺を前提にしたものとは考えられなかったため、多くの人が、誰がユダヤ人であるのか知らせたり、半ば、告発のようなことが行われた。

ユダヤ人は人種ではなく、ユダヤ教を信じる人達のことだ。

しかし、昔から、苛烈な差別を受けたことにより、パレスチナを追われ、ヨーロッパ中に散り散りになった後も、ユダヤ人は、団結し、分け合い、困難を乗り切ってきたのだ。

教育水準は高く、音楽など芸術にも通じ、実は豊かでもあり、それを、他の人々は恐れ、嫉妬心を募らせたのだ。

往々にして、差別などというものは、こうして起こるのだろう。

いくつか、大戦中のユダヤ人のおかれた過酷な状況を映画化したものはあるが、このユダヤ人家族が出て行けば、この土地屋敷は、自分のものになるといった動機付けが描かれたものもあって、人は恐ろしいなと考えたりもした。

ナチス・ドイツは、こうした古くからある差別を巧妙に利用し、罪を共有させたのだ。

(以下ネタバレ)

映画の間中、結果を想像してか、重苦しい雰囲気がずっと続く。

事実に基づいた物語なのに、もっと早く逃げなよ、余計なことするなよ、神は沈黙しているじゃないかなどという想いが頭をよぎるが、最後に、最大の拠り所が実は家族なのだと気付き、更に胸が苦しくなる。

妻が非ユダヤ人だったことで、生き残るチャールズ。

エンドロール前のテロップで、戦後、チャールズ夫婦が離婚したと知って、チャールズの背負った、自分だけが助かったという十字架の苦悩を改めて考えてしまう。

約600万人のユダヤ人がナチスによって虐殺された。

コロナ禍でやや風向きが変わっているかもしれないが、近年のヨーロッパでは、人種主義に基づいた大衆迎合主義の台頭が著しかった。

しかし、こうした作品が作られることの意義を理解し、差別を背景にした悲劇が二度と起こってはならないと考える人が多くいることは大切なことだと思う。

ユダヤ人に対する嫉妬や差別が虐殺を助長したことは、ヨーロッパの人々は決して忘れてはならないし、戦時中の日本軍の行った他人種への虐殺を顧みることを日本人も止めてはならない。

日本は無宗教的な人はもとから多いが、アメリカやヨーロッパでも、熱心に宗教を中心に生活する人は少なくなってきているようだ。

元来、宗教の担っていた分け与えるといったところを、社会保障など社会システムが肩代わりしてきた結果だろう。

しかし、民主主義が十分じゃない地域や、紛争地域では、未だに、宗教を背景にした争いが続いている。

戦後、ユダヤ人を厄介払い出来ると考えて、イスラエル建国に傾いたヨーロッパの人々には、現在パレスチナで起こるイスラエルと、イランの支援を受けるハマスやヒズボラとの争いを、協力・仲介して、無くなるよう責任を持った行動が必要だと思うし、日本もイランと友好国であることを活かして、役割を共有して欲しいと強く思う。

アフガニスタンでタリバン政権が復活し、女性や教育を受ける権利は奪わないとする一方、あくまでもイスラム法の解釈の下でという括弧書きが付け加えられている。

国際社会は、強く団結して取り組まないとならないのだと、改めて強く思う。かつて、苛烈な差別に対抗するために団結し分け合ったユダヤ人のようにだ。

申し訳ないが、神はまた沈黙するだろう。
だが、それは、人間が自らの知恵で解決することを期待しているからに違いないのだ。

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ワンコ

4.0無力感に気が遠くなる

2021年8月29日
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鑑賞方法:映画館

 観ていて辛い作品である。第二次大戦時のユダヤ人の受難を扱った作品は何本も観たが、本作品はどういう訳か、登場人物の誰にも感情移入できなかった。
 ユダヤ人家族の描き方に問題があると思う。描かれたブラウデ家は家族第一主義であり、ユダヤ主義である。家族を大事にしているかという説教があり、食事の前の長ったらしい祈りの儀式を後生大事に守ろうとする。愛情よりも形式なのだ。これではこの家族に好意を持つ人はいないだろう。
 しかしユダヤ人でない嫁を受け入れた点を考えても、実際のブラウデ夫妻は映画が表現するようなスクエアな人格ではないと思う。製作者の意図は不明だが、少なくともユダヤ人に対して好意的な描き方ではない。ブラウデ家の人々に感情移入できなかった理由の多くはそこにある。もしかしたらノルウェー人にはいまでもユダヤ人に対する差別意識が残っているのではないか。

 何をもってユダヤ人とするのか、いくつか議論があるようだが、少なくとも日本人や中国人がユダヤ教を信じて儀式を完全に行なったとしても、ユダヤ人とは呼ばれにくい気がする。ヒトラーがユダヤ人と呼んだ定義は不明だが、アジア人や黒人は見た目だけでユダヤ人ではないと判断されただろう。白人でも、日頃からヘブライ語を話しているならともかく、ノルウェーに住んでノルウェー語を話す人間をユダヤ人と判断できるのはどうしてなのか。
 このあたりが日本人にはなかなか理解し難いところである。在日の朝鮮人や中国人がいても、日本語を流暢に操れば日本人と区別がつかないし、戦後の日本人には朝鮮人や中国人を差別する意識は殆どないだろう。無宗教の日本人には食事前に祈るような厄介な風習もないから、差別にも繋がりにくい。そもそも隣人や同僚を中国人や朝鮮人ではないかと疑ったりすることがない。在日三世の人たちは日本語しか話せない人も多い。

 ところが戦前の国家主義や国粋主義を引きずっている精神性の人間の中には、石原慎太郎のように「三国人」といった発言をする者もいる。2000年4月のことだ。ニュースでその発言を聞いたときは腰を抜かしそうになった。ヒトラーが「ユダヤ人」と言ったのと同じだからである。ドイツで同様の発言を政治家がしたら、政治生命を失うどころか、逮捕すらされかねない。石原は戦後55年を経ても尚、民主主義に首肯しなかった政治家である。不寛容さにかけてはタリバンにも引けを取らない。
 にもかかわらず石原はその後の都知事選で3回も圧勝している。当方はこの結果を見て、東京都の有権者に絶望してしまった。ヒトラーと同じ精神性の政治家に都知事を4期も務めさせたのだ。このことの恐ろしさに気づいている有権者もそれなりにいるかも知れないが、圧倒的多数は気づいていない。同じ精神性の小池百合子が何度も都知事選で圧勝するのがその証拠だ。そして同じような精神性の政治家はたくさんいる。つまりそういう政治家を当選させる有権者が膨大に存在するということだ。無力感に気が遠くなる。

 チャールズを演じた俳優がマット・デイモンみたいでなかなかいい。ブラウデ家がまともな描き方をされていたら、この人に感情移入して、本作品を観るのにもう少し気持ちがこもったと思う。
 ただ、連行されて強制労働させられ、裸にされてガス室に送られるのがユダヤ人だけではなく、そのうち日本人もそういう運命になるのではないかという悪い予感はした。パラリンピックの学徒動員を見て、その日はそう遠くないのではないかと思った。

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耶馬英彦