劇場公開日 2021年4月9日

BLUE ブルー : 特集

2021年4月5日更新

意外――主人公はとてつもなく “弱い”ボクサー
松山ケンイチが2年間役作り、俳優人生かけた渾身作

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ヒーローは強くなければいけない。迫りくる脅威を圧倒的な力ではねのけ、常に輝かしい勝利を観客に見せつける。強靭さと、その先にある勝利こそが、魅力的な主人公を形作るのに不可欠な要素だと考えられてきた。

しかし4月9日に公開される映画「BLUE ブルー」の主人公・瓜田は、作劇上のお約束とは無縁のように思える。なぜならば瓜田は、とてつもなく“弱い”プロボクサーだからだ。

ボクシングを愛し、長い年月を捧げてきたが、瓜田はまったく試合で勝つことができない。噛ませ犬にすらなりきれない。実力とその優しさゆえか、一回り近く年が離れた後輩にも見下されながらも、瓜田はボクシングに打ち込み続ける――。

“勝ち負け”では語れない人生。そんなキャラクターに、稀代の実力俳優・松山ケンイチが共鳴した。「犬猿」「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督とタッグを組み、俳優人生をかけた熱演をフィルムに焼き付けたのだ。

この特集では本作の見どころ(物語、主演俳優の覚悟、共演・監督)と、窪田正孝ら俳優や映画人たちの絶賛評を紹介する。


【予告編】平凡と非凡、憧れと嫉妬、友情と恋 もがく人々の物語。

【見どころ】主人公は“負けっぱなしのボクサー”
松山ケンイチらの熱演が魂を震わす、珠玉の人間ドラマ

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[物語]くそったれな青春―― 残酷で、だからこそ切実に輝かしい“挑戦者の人生”

時に人生は残酷だ。どんなに努力をしても、成功や幸福は約束されていない――。本作の見どころのひとつは、主人公が“弱すぎるボクサー”であり、彼の姿を通じて“切実な挑戦者の人生”を映し出す点にある。

誰よりもボクシングを愛する瓜田(松山)は、どれだけ努力しても負け続き。一方、瓜田の誘いでボクシングを始めた小川(東出昌大)は、抜群の才能を見せつけ勝ち続け、いまや日本チャンピオンに王手をかける。さらに瓜田の幼馴染・千佳(木村文乃)との結婚を控えていた。

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瓜田にとって千佳は初恋の人。そして、“この世界”へ導いてくれた人でもある。強さも恋も何もかも、瓜田が欲しいものは全部、小川が手に入れていた。それでも瓜田はひたむきに努力し、夢へ挑戦し続ける。ところが、ある出来事をきっかけに、瓜田は抱え続けてきた思いを2人の前で吐露。彼らの関係が、音を立てて変わり始める。

人生の残酷さを真正面から描きだす本作。しかし、だからこそ、切実に輝かしくて愛おしい“ブルーコーナー(挑戦者を象徴する色)”の人々の姿には情動を禁じえない。

この物語には瓜田のほかに数々の挑戦者たちが登場する。誰もが葛藤を抱え、思い通りにならない日々にもがき続けている。しかし本作は、そんな“努力の美しさ”を肯定し、勝ち負けだけで人生は語れないことを示すのだ。見れば魂を震わさずにいられない、珠玉の人間ドラマだ。

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[主演]松山ケンイチ 稀有な才能が、人生をかけて熱演したら――

もうひとつの見どころは、何はともあれ主演・松山ケンイチである。映画のファーストシーンはテープを巻いた拳にマジックで3つの×印を刻む様子から始まるが、次いでカメラが松山の顔をズバッととらえた瞬間、見る者に衝撃が走るだろう。

頬のこけ具合、浮き出たあばら骨が胸まわりにつくる陰影、鈍さと鋭さが同居した瞳の輝きなど、どこを見ても“減量を経たボクサー”として完璧な仕上がり。本作の脚本に惚れ込み、およそ2年間もジムへ通い徹底的な役作りに身を投じたという。気合いの入りようは半端ではない。

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松山のすごさが良くわかる映画だ。飄々とした風体ゆえか、“負ける人間”を演じても悲壮感がない。しかし圧倒的に勝つわけではないし、目が覚めるような爽快なアクションを見せるわけでもない。勝利と敗北、そして希望と絶望の間にある人間味みたいなものを芸術的なバランスで体現する“絶対的な実力”が、松山の真骨頂である。

「聖の青春」では壮絶な増量を経て、早世の天才棋士・村山聖の半生を演じきったことで知られる松山。“役作りの鬼”とも称される稀有な俳優が、俳優人生をかけてボクサーを熱演したら、とんでもない作品ができてしまった。

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特にラストシーンの松山は、神々しさすら身にまとっている。報われない努力を重ねた者の人生を、美しく肯定するかのようなその背中は、見れば本年度の映画賞の席巻は確実ではないか、そう思わせるほどだ。

この映画で、松山は敗北し続ける。しかし、そこには人間の営みがあり、生命のきらめきがある。ぜひともスクリーンで、彼の生き様を見届けてほしい。


[共演・監督]木村文乃&東出昌大&柄本時生 “本気”こめたオリジナル作品

共演陣もとにかく素敵だ。木村文乃が瓜田の初恋の女性・千佳に扮し、人生の慈愛と残酷さを象徴。彼女の葛藤と選択を通じて、男たちがボクシングに打ち込む理由が浮き彫りになっていく。

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さらに東出昌大が、瓜田のよき後輩であり、才能に満ち溢れた小川を演じる。終盤の“リング上での死闘”における熱演が、ひときわ印象に残る。右のまぶたが裂け流血しながらも、鬼気迫る眼差しで対戦相手を睨みつけ、両拳をバンバンと叩きつけ立ち向かっていく。この男に降りかかる“悲劇”が、物語を一段も二段も濃密なものへと変えていく。

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そして人気個性派・柄本時生は、ゲームセンターで中学生にボコボコにされたことからボクシングを始めた楢崎役に。当初はスパーリングしただけで泣きべそをかいていたが、やがてサウスポーをいかして才能開花。楢崎が成長していく姿が、物語にサクセスストーリーのフレッシュな空気を送り込む。

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ちなみに松山と東出と柄本の共演は「聖の青春」以来だ。くわえて「あゝ、荒野」「アンダードッグ」などでボクシング指導または俳優として参加し、日本のボクシング映画には欠かせない存在である松浦慎一郎は本作にも出演。どんな役で登場しているか、注視してみてほしい。

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物語を創出し、キャストの熱演を引き出したのは、「ヒメアノ~ル」「犬猿」「愛しのアイリーン」などで人間の光と影を表現し続けてきた吉田恵輔監督。自身が30年以上も取り組んできたボクシングを題材にオリジナル脚本を書き上げており、「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に“花束”を渡したい気持ちで作った」と語る。

キャスト、スタッフが本気を込めて紡いだ渾身作。魂をさらけ出して鑑賞するべし。


【人気俳優や映画人から絶賛】窪田正孝、ムロツヨシら
「惚れた、まいった」「ウソのない人間賛歌の映画」

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最後に、本作を鑑賞した俳優や映画人たち、映画ファンからのコメントを紹介して、特集を締めくくろう。


窪田正孝(俳優/吉田監督作「犬猿」など出演)

「ボクシング映画では珍しく悪者を感じない。選手全員を応援したくなった。強さは単に力だけではなく、目には映らないところにこそ存在する。キャラクターの強さがまざまざと殴り書きされていた。かっこ悪い先に真のかっこよさがあった。その極限に到達できる勇気を持つ人間はそういないだろう」


白石和彌(映画監督/「凶悪」「孤狼の血」など)

「己の肉体の中に蠢く情熱は誰にも止められない。人生には勝ち負けだけではない大切なものがある。この見終わった後の凄まじい余韻を体感して欲しい。言語化できない感情を描くために映画はあるのだ。吉田監督ありがとう!」

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江上敬子(お笑い芸人/吉田監督作「犬猿」など出演)

「負け続けている人達の話。情け無くて、かっこ悪くて、でも目が離せなくて。めっちゃ変なシーンで泣きました。『こんなところで泣く??』ってところで。『負けるが勝ち』なんて、そんなの綺麗事だよ。負けは負けじゃい! でも、負けても生きていくんじゃい!!」


宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)

「誰もが主役で誰もが挑戦者という、過去のどのボクシング映画にも似ていない傑作。いや、ボクシング映画というより、持つ者と持たざる者の真実を残酷に描いた普遍的な青春映画。名手吉田恵輔監督にとって、問答無用の代表作が誕生した。」


ムロツヨシ(俳優/吉田監督作「ヒメアノ~ル」など出演)

「知らない青、なりたくない青、なりたい青を知った。東出も時生も、そしてラスト55秒の松山ケンイチ演じる男に惚れた。まいった」

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■一足先に鑑賞した映画ファンの感想もアツい── 試写会でも絶賛続々!

・熱い!!とにかく熱い!!!拳を握って叫びたくなるほど、久しぶりに熱い映画!!私も瓜ちゃんたちのように、何があっても手放せない、心から夢中になれるものを見つけたい。

・率直に言って、すごく好きだった。松山ケンイチ演じる主人公がかっこよくて、かっこ悪くて、すごく引き込まれたし、魅了された。キャスト陣の演技力、キャラの細かな設定、演出、映像まですごく好きだった。劇場でもう一度見たいと思う。

・負け続けのボクサーの話だけど、なんでこんなに魅力的なんだろう? 吉田恵輔監督のボクシング愛をすごい感じる。

・目が離せなくなるほど魅力的な映画で、青春って、幾つになっても心に残っているんだよなって思える映画

・これは単なるボクシング映画ではない。誰もが誰かのために生きる、優しさと強さの物語。

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