「これは開放か破滅か」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
これは開放か破滅か
ポスターを見る限り、タイトルの「メタル」はきっと「ヘビーメタル」なのだろうな
と思い鑑賞するも、違っていた。
テーマは「依存からの解放」だと思える本作。
本当に欲しいものが手に入らないから、代替品にしがみついてしまう依存。
そんな依存のうちに迷走する主人公は、ドラッグに始まり、ほかにも生活の至る所に依存の対象が顔をのぞかせている。
その一つが音楽だったとして、
音楽を追えば追うほど「真に欲しい物」こそ手に入らない様が、
むしろすれ違いと勘違いで失われてゆく喪失感が強烈だった。
だからして最後、しがみついてきたもの全てを手放したとき訪れる安堵と平穏は救いのようにも感じられるが、
同時に、しがみついてきたものばかりで出来上がっているような主人公にとってそれは「無」を感じさせてならず、
エンドロールが流れている間、これで主人公は本当にこで救われたのか、
救われるのか、
果たしてその逆まで行き着いてしまっただけか、とても考えさせられた。
ろうの世界を体験できる音響演出が、時々自分はちゃんと聞こえているのか、
不安にさせるリアルさ。
ゆえに音楽で煽る演出はまるでないものの、
そんなことなど忘れさせるほどの濃い作品と鑑賞する。
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