劇場公開日 2021年10月1日

  • 予告編を見る

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということのレビュー・感想・評価

全118件中、1~20件目を表示

3.5それでも、人生は続く(取り戻す、を手放すとき)

2021年10月16日
iPhoneアプリから投稿

(話は飛躍するが、)子育てをしていると、「変わらない」物事はなく、後戻りはもちろん、「取り戻す」ことは到底できないなとつくづく思う。これまではこうじゃなかった、こんなはずじゃなかった、と思っても、子は刻一刻と育って変化していき、親の感傷をよそに、時間はどんどん前に進んでいく。
 聴覚を失い、轟音に彩られた生活を突然絶たれたドラマーの主人公、ルーベン。激しいいらだちをバンド仲間の恋人・ルーにぶつけてしまうが、彼女の必死の勧めに従い、しぶしぶ自助グループでの共同生活に転じる。徐々に穏やかな生活に馴染んでいったかに見えたものの、恋人との音楽の日々を諦めきれない、取り戻したい彼は、思い切った行動に出る。
 寄り添い、支え合う生活は理想のはずなのに、はまりきれないのはなぜなのか。心穏やかな生活には、目立った変化は降って湧いてこないない。目指すことややりがいは、自分で見出さなければならないのだ。子どもたちに音楽を教える姿が帰着かと思えたが、ルーベンの視線は、遥か遠く、輪の外に注がれ続けたままだった。
 ツアーバスを売り払い、コミュニティでの繋がりを捨ててインプラント手術を受け、ノイズに耐えながら恋人の家を訪ねるルーベン。まるで、声と引き換えに足を得た人魚姫のように痛々しい。そんな彼を迎え入れる、ルーの父を演じたマチュー・マリアックが、近すぎず遠すぎず、絶妙の立ち位置だった。ルーベンを演じたリズ・アーメッドと同じく、眼力が強い俳優さん。鬼気迫る・狂気が滲む役柄が多く、主人公とぶつかり合うのかと思いきや、今回は徹底して「色々あったけれど、何とかここに行き着いた」娘の父を演じていて、ますます好きになった。(余談だが、ルーベンに茹で卵を振る舞うところが、観ているときは少しピンとこなかった。後でざっと調べてみた限りでは、半熟茹で卵を、カリカリにトーストしたバゲットにつけて食べるのは、フランスではごく日常の食事(夕食)らしい。娘の恋人を、家族のように気負いなくもてなした、ということだろう。卵の殻をナイフで割り、パンをざくざく噛む音もごちそうのうち、というところも印象的だった。)また、父と娘の歌が、哀愁とも不協和音ともつかないメロディと歌詞だったのも良かった。ルーの家でのルーベンの音世界は、何と悲しく、騒がしいものだったのか。
 心待ちにしてきたはずの再会は、心の穴を埋めてくれない。ルーベンが、新たに踏み出した世界とは… 。時間を引き戻し、失ったものを取り戻すことを「手放した」重み。新たな世界の美しさと厳しさ。今も、余韻が耳に残る。

(付記というか、ちょっとした不満。
 本作は、聴覚を失うルーベンの音世界を追体験させるべく、音作りに細やかな工夫がなされている。けれども、カッコ書きの字幕で音の説明が付されるのは、むしろ余計で、目にうるさい気がした。これは日本版のみなのだろうか?「静かな騒音」なんて、完全に矛盾している。せめて、「くぐもった騒音」あたりではないか。字幕を無視するのは難しいので、出来れば、カッコ書き字幕抜きで観直してみたい。)

コメントする 1件)
共感した! 1件)
cma

5.0喪失と絶望の先に見えるもの

2021年4月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

 聴力を失ったメタルバンドのドラマーがたどる運命を描くこの作品は、様々な音に彩られている。
 冒頭のライブシーンの激しい音の洪水の後は、コーヒーのドリップされる音や開け放たれたドアがかすかにきしむ音、遠く響く鳥の鳴き声、人混みの柔らかなざわめき。遠景のような音がそこかしこに散りばめられる。
 そしてこれらの聞き慣れた音と対照的で印象深いのは、主人公のルーベンが聴力を失った後に聞く「音」だ。わずかに残った聴力が拾う、曇って細部の潰れた音。張り付いて離れない不協和音のような耳鳴り。人工内耳の金属をこするような音。
 本来昨年8月に全米公開の予定だったこの映画を、映画館で観られないことを当初残念に思ったが、ヘッドフォンをつないで鑑賞したことでその考えは変わった。これらの音達を耳元で聞くことで、ルーベンが襲われた変化をよりリアルに追体験し、彼の絶望を間近に見たような気持ちになった。
 過剰な言葉はない。音と、リズ・アーメッドの細やかな表情が、主人公の感情の流れを雄弁に語る。

 パートナーのルーは、当事者のみの参加が条件の自助施設にルーベンを行かせるため、荒れて追いすがる彼を振り切って彼の元を離れた。二人の出会いと同時期にルーベンがドラッグをやめたこと以外、彼らが共に過ごした過去の説明はない。だが別れる間際のやり取りに、繊細な二人が出会ってから4年間、どのように身を寄せ合って生きてきたかが滲む。
「あなたは自分を傷つけ、私も傷つけてる。私も自分を傷つける。施設に行くと言ってほしい。じゃないと全部ムダになる」
 これほど大きな困難を、無謀に受けて立つと二人とも壊れてしまう。そうならないために寂しさを堪えて突き放すルーと、目の前の孤独に怯え助けを求めるルーベンの姿がひたすら切ない。

 自助グループに参加したルーベンが施設に馴染むまでの描写は比較的淡々と進む。元いた社会と接触を絶たれる厳しさはあるものの、彼を受け入れる聾者の世界はどこか牧歌的だ。マーダー監督は、寛大な精神を保つ聾文化を表現するこの物語の構想に13年をかけたという。施設の指導者ジョーには、聾者の両親の元で育ったポール・レイシーをキャスティングしている。
 聾者であることは不幸なことではなく、身体特性に応じた文化に生きるということに過ぎない。そんな印象を受けた。
 ただ、自助グループは聾者として生きていくことを前提に、精神面でのサポートをするものだ。そこでの生活にひとまず馴染みつつも、ルーベンはあくまで手術での聴力回復に望みを繋いでいた。大切な音響機器やトレーラーを売り払って手術費用を工面する彼だが、物語の肝となるさらに厳しい試練が彼を待っていた。

 希望を失った時、生きてゆく力をどう紡ぐのか。
 ルーベンは、生活だけでなく自己表現に直結していた音を奪われた。そこには誰の悪意も過失も介在せず、恨みをぶつけるよすがさえない。
 失われたかけがえのないものが二度と戻らないという事実を、受け入れることは苦しい。諦めれば楽になるなどと、とても軽々しく言えない。
 それでも覚悟を決めて一歩を踏み出せば、その先は決して絶望のみではないと信じたい。

 そして、監督がインタビューで語ったこの映画のテーマ「目覚め」が、ラストシーンに凝縮されている。ルーベンの苦悩と彷徨の物語をたどってきた私たちも、最後に音のない世界を彼と共有し、どんな言葉より胸に迫る安らかな静寂によって目覚めを体感するのだ。

コメントする (0件)
共感した! 14件)
ニコ

4.0「ろう」という生き方

2021年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

メタルバンドの話で、ものすごく騒がしい作品なのかと思っていたら、むしろ聴覚を失ってゆくミュージシャンの物語だった。まあ、メタルバンドのドラマーが主人公なので、最初の印象が間違っているわけではないのだが。
タイトルの「サウンド・オブ・メタル」はダブルミーニングだった。メタルバンドの主人公が音を失っていくという点でメタルの音の物語でもあるが、もう一つは、聴力を取り戻すためのインプラント手術後の音を指している。インプラント手術は簡単に言うと金属を耳に埋め込むようなもので、疑似的に聴力を回復させるためのもの。この音が大変に不快な金属音なのだ。映画は主人公が手術を受けた後の音を観客にも体感させる。世界の音の何もかもが金属の反響音として聞こえてくる。本作は、そんな描写も含めて、「ろう」とは治すべき病気や障害ではなく一つの生き方の実践であると描いている。ろう者のコミュニティが牧歌的な心地よいコミュニティとして描かれているのもその表れだ。音が非常に重要な作品なので、本当は映画館で観たい作品である。

コメントする (0件)
共感した! 15件)
杉本穂高

4.0Deafness, Strangely, A Theme Seldom Explored in Cinema

2021年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

It's hard to approach deafness or blindness in the way paralysis was explored in The Diving Bell and Butterfly. How can a film sell if there is no sight or sound to it? Sound of Metal goes in an out of the lead character's head, and to a new realm when cyborg technology takes hold. The film is touching, seeing an authentically portrayed crust punk schooled on community. Also a sad film. Must see!

コメントする (0件)
共感した! 2件)
Dan Knighton

4.0苦悩の先に答えなんてなくていい。

2020年12月31日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 13件)
村山章

4.0すべてを肯定して静寂に身を置くことで得られる平穏

2020年12月31日
PCから投稿

怖い

幸せ

ある日突然、耳がほとんど聞こえなくなる。それも、恋人と一緒にトレーラーハウスに住まい、行く先々のライブハウスでドラマを叩き続けるドラマーがである。当然、彼の絶望感は半端ない。唯一の治療は脳に音を音として感知するチップを埋め込むことなのだが、如何せん治療代が高額だ。そんな八方塞がりのドラマーが、友達の紹介で入所するろう者の支援コミュニティで、仲間たちと手話を介して対話し始める。だが果たして、そこは主人公にとって終の住処たり得るのかどうか?ことはそう簡単ではないことを本人も観客も知っている。しかし、明確な手がかりがある。焦り、もがき苦しむドラマーに対して、コミュニティの創設者がこう語りかけるのだ。「耳が聞こえないことはハンデではない。治すものではないのだ」と。そして、「静寂こそ平穏が得られる場所なのだ」と。音のある世界からない世界へ、豊かさから貧しさへ、勝者から敗者へ。人生は様々な試練(騒音)と無縁ではいられないけれど、もしもそれを肯定できたなら、人は救済されるに違いない。激しいドラムプレーで始まる物語が、無音の世界へとシフトしていく意外性のある構成、主人公の聴力と第三者(観客も)の聴力を区別した録音演出、主演のリズ・アーメッドの痛々しいほどの肉体表現と追い詰められた演技。見所はふんだんにあるが、白眉はコミュニティの創設者を演じるポール・レイシーの、まるで神のような佇まいだ。レイシー自身も役柄と同じくベトナム帰還兵で、ろう者の両親を持つ身であることを考えると、さらにその演技は説得力を持つ。アーメッドとレイシーは共に来年のオスカー候補入りが確実視されている。

コメントする (0件)
共感した! 8件)
清藤秀人

5.0先月、補聴器を買いました。 慣らし中ですが、ずいぶん慣れました。

2026年5月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

·

これ、中途失聴者の、彼を取り巻く世情と再起の指南の物語でした。

難聴者・失聴者にとっては、あのコロナの時代は艱難の時代だったですね・・。

「耳が聴こえなくなる映画」
「耳が聴こえない家族の映画」
「自分だけ耳が聴こえる映画」
「初めて手話を知る子の映画」
「手話と口話の三人のけんか」

ここのところ同じテーマで続々と作品が公開されている。
洋画邦画問わずに、それらは目白押しだ。破竹の勢いだ。
このブームはなぜなんだろうか。

失聴者にとって、また手話をまだ使えない難聴者たちにとって、
(そして本作のルーベンのような中途失聴者にとっては)、
長かった昨年までのコロナの時代は、まったく非道い試練の時代だったと思う。

あの3年間のコロナ禍を振り返りつつ、「聴こえない」ことの苦しみを想いつつ、
あのこと、このこと、つらつらと、思いつくままにメモを書き残しておきたいと思う。

・・・・・・・・・・

【もくじ】

① マスクのおかげで人の声は聴こえないのだ
② ところが自分の声が相手に届いていない事にほとんどの人は気づいていない
③ 僕は耳が聴こえない
④ 聴こえるための工夫が要る

―――――――――

① 【マスクをしていると人の声は聴こえないのだ】

・マスクは声をこもらせる。
・聴きにくい声がさらに遠くに行ってしまう。
・マスクは口の動きを隠してしまう。
・会話の相当の部分を補う顔の表情は、半分はマスクに覆われてしまっている。
だから、頼みの綱の最後の“口話”=口の動きの観察が、あの腹立たしいマスクのせいで絶たれてしまうのだ。

会話禁止で、無音の世界に放置されてしまって、
聴こえにくい人たちにとっては本当に辛いマスクの時代だった。

・ウイルス隔離のための「パーテーション攻撃」と、
・「マスクによる防御」と、
・「ソーシャルディスタンス作戦」とやらで
お店の店員さんの声も、ちっとも聴こえやしない。
そこには《三重苦》が起こっているのだ。
難聴者にとっては、どんなにか孤立感の3年間だったろう。

僕は、モスバーガーの女子高生バイトにこう言って頼んだ
(僕自身の耳が悪くなる以前の事だ)―
「こんにちは、僕もマックでバイトしていたことあるんですよ。このお仕事慣れましたか?」
「で、きみね、マスクしてるでしょ?」
「きみとお客さんのあいだには、ほら、天井から下がったこんなに大きなビニールのパーテーションがあるよね?」
「空いている隙間は下の30cmだけ」
「そしてカウンターのそちら側とこちら側はこれだけの距離が離れている。ゆうに一尋はある」。
「先ほどから見ているけれど、接客販売のプロであるあなたが、お客さんにあんなふうに『えっ?』『はいっ?』って何度も聞き返させていたらいけないと思うんだけれど、どうかな?」
「そうならないためには、あなたは普段のボリュームの何倍の声で喋ると良いと思いますか?」
(と、ほかのお客がいないチャンスにそっと問うてみた)。

彼女はちょっと考えてから
「3倍ですね!」と目を輝かせて答えた。

席までコーヒーとバーガーとオニオンリングを運んで来てくれた彼女は、とびっきりの笑顔で「お待たせしました」と言ってくれた。

・・

②【自分の声が相手に届いていない事に、殆どの人は気づいていない】

つまり、
自分の声量(ボリウムが、相手との会話に相応しいものかどうかということについて、人は無自覚であったり無頓着であったりするものだ。そのような人間が、ちまたにはここまで多かったのかと驚愕したコロナの年月だった。
素人はもとより、NHKのラジオのプロたちでさえそうであった。
「喋ってやってりゃ聴こえるだろ?」って?
そうじゃないんだよ。

あそこでは元々、はなっから人と対話するための自覚のない人たちや、人間関係の不通についての想像力欠如の人間たちが、「これ、私のためのウイルス防御ですから」との大義名分をまとって、そこで自分の口を隠していた。

そこには強烈な《三猿》も起こっているのだ。

先年鑑賞したのはベートーヴェンの伝記映画「ベートーヴェン、不滅の愛」。
聴力の衰えをひた隠しに隠した《楽聖》は、人々の前では理由も明かせずに荒れ狂い、そして誰も見ていないところでは恥辱と失意の思いでピアノに突っ伏していた。突っ伏して彼は自分の横顔をピアノに押し当てて、頬の骨の骨伝導で自分の弾くピアノを聴いていたのだ。そんな彼、ベートーヴェン。
観ているこちらまで胸が張り裂ける思いだった。

・・

③ 【僕は耳が聴こえない】

・職場の検診で「お年のせいですね、左耳が高音域が聴こえづらいようですよ」と指摘された。
・エアコンのリモコンの「ピッ音」が聞こえない。ちゃんと起動してくれたかどうかは目で確認だ。
・運転中は、車が教えてくれる様々の警告音も注意喚起の「ピッ音」も、ささやかでお上品な音で、あれはほとんど聞こえない。炊飯器も、洗濯機も同じ。
開発者が定年前の若くて耳の良い人たちなのだから、ああなるのは仕方ないことだけど。

・仕事場での立ち話で、急にこちらに話題を振られても、彼らが何の話をしていたのかが分からないから、受け答えがトンチンカンになる。一同が怪訝な顔で僕を見る。
・彼らだけで笑っている。
ゆえにいきおいマスクをした同僚たちとのお喋りには距離を置くようになった。
僕は耳が遠いことがバレることが恥ずかしくて怖いのだ。

・・

④ 【聴こえるための工夫が要る】

◆コロナのさなか、難聴の叔父の耳に僕は口を引っ付けて、それでも心して声を抑えて喫茶店で話していたら「大声での会話はご遠慮下さい」と店員から注意を受けた。パーテーションにもそう書いて有った。店中のお客がこちらを睨んでいたのだ。

◆肉親の臨終にでさえガラス越し。ガラス越しが許可されるならまだ良いほうで病院への立ち入りも、葬式も、禁じられたあの頃。
「遮蔽」と「無言」が強いられていた残酷な日々だった。

ところが
◆うちの(耳の遠い)両親の老後を気にかけてくれているケアマネジャーさんがいて、その語りかけとケアの配慮が尋常でなく細やかなので
お尋ねしてみたところ御両親がろうあ者なのだと。
彼女の言葉は、なぜか老人たちにも聴こえたのだ。

◆「相手の言葉を聴き取ろうとする気持ち」と、「この言葉をなんとかして相手にしかと伝えたい工夫」と。
その心構えのスタンスは、健聴者たちが案外と持ち合わせていない未知のものだった。そこ、我々の想像力や配慮の欠落していた大切な部分であったかもしれない。

◆つまり、傾聴しない者も、語りかけに腐心しない者も、本当に相手の気持ちや言葉を受け取ることを、今までしてはこなかったのだ。

コロナは、「そのお粗末なコミュニケーションさえも」更に禁じていた。

◆知人の病院では、「コロナ禍におけるマスクの弊害を何とかして意識的に乗り越えようと」、病院を上げて知恵を絞っていた。
毎朝の職員朝礼で「顔面もしもし体操」ってものをドクターとスタッフ全員でやるそうだ。
マスクから上の、顔の上の半分で、目の動きと眉毛で精一杯の表情を爆発させて、上体は思いっきり前後左右に動かしつつ、そしてこれでもかという勢いで指揮者のごとく両腕をぶんぶん振り回して《伝えたい言葉と気持ちを「全身のマイム」で表現する》。そういう準備体操なのだそうだ。
そこまで心掛けて、ようやくこちら側とあちら側、つまり待合室の患者さんたちと医療者との会話は成り立つ ―、との事ことだった。
グッジョブだと思った。

なるほど、
僕は将来老人ホームとかに入るとしても、職員さんたちにはお願いして「マスクを外して」僕に対面してもらいたいと思っている。
耳が遠くなり、認知症が進んだお年寄りたちは、顔の半分をマスクで隠したどこの誰だかわからない、アンドロイドで無表情な人たちから突然手を出されて体を掴まれて介助をされる訳で。その”いきなりさ“ にどれだけ老人は吃驚することだろう。
目しか見えない氷のような顔で、知らない誰かが急に近付いて来て、
誰が喋っているのかわからない声が、どこからか聞こえるわけだ、
「おじいさんご飯ですよ」「オムツを替えましょう」とあさっての方向から声が聞こえる。
それは、オカルトだ。地獄だ。お断りだ。

コロナウイルスとか、インフルエンザの感染リスクとか、そんなものどうでもよい。
僕はあなたの顔が見たいのだ。
あなたの声がしっかりと聞きたいのだ。

・・・・・・・・・・・・

【あとがき】

「サウンド・オブ・メタル」。
中途失聴者の実相を撮った、秀作だと思った。
冒頭からの、「聴こえなくなっていく様子の描写」が、特にあのあたりが今の自分には共感出来て、見ごたえがあった。

この映画は前半の丸々1時間を用いて、そのうろたえぶりと、激しい焦燥感、そして孤独と絶望が描かれている。

後半のルーベンの人間回復や、自分探しのパートも心を揺さぶられたが、やはり前半での彼の苦しみに、その丁寧な描写に、僕の心は持っていかれた。

彼女のルーも、難しい役どころ。素晴らしい熱演ではなかったか。

思えば
「ポン・ヌフの恋人」は、あれは光を失って失明する彼女との別れの話だった。
「サウンド・オブ・メタル」、これは聴こえなくなっていく彼氏との別れのお話だった。
二人とも泣いていた。
それでも人生は続くのだ。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・

【ごあいさつ】

耳鼻科の先生もこの映画、ご覧になったそうです。
耳鼻科の補聴器外来にしばらく通ってみて
先月、ついに補聴器を買いました。
小型です。高性能です。本体のカラーリングがよりどりみどりです。
黄色✨や ピンク💕のビビッドな物にも心は惹かれたけれど
ピカピカの 『メタル・シルバー』を僕はチョイス!
慣らし中ですが、ずいぶん慣れましたよ。キンキンしたやかましい“初期雑音”にも順応しました。パソコンとスマホで微調整も自由自在。
調整もようやく済みました。

で、「聴こう!」「聞きたい!」と、あれほどまでに願っていた世の中の音はどうだったか?って?
皮肉なことに、憧れていた美しき世界の『麗音』(こういう言葉があるとするならば)にはほど遠くって、実はぜんぜん大したことのない、生活音だったり、時には聴くに堪えないつまらない噂話だったり、ただの悪口のお喋りだったりする。

だから補聴器のあの高額の代金が、惜しくもドブに捨てられた物のようにも感じられたこの習熟期間。

でもいいさ、と思っている。
それでも人の声が聴こえて、語りかける誰かの目を振り返って見る事が出来るのは、こんなにも幸せなことだ。

内耳の「有毛細胞」は減るばかりの使い捨てです。人体で唯一再生しない細胞なのだそうですね。あとはPS細胞医療しか回復の手立ては無い。
だから誰でも、わたしもあなたも聴こえなくなるのですよ。

・・

ルーベンの「大きな大きな目」が心に残りました。
だから僕も目を大きく開き、耳も大きく開こうと思う。

(字幕が無いので)すっかり苦手で疎遠になっていた邦画の上映を楽しみに、また劇場にも戻れるようになりましたね。

ありがたいことだ。
人生は続く。
皆さんよろしくお願いします。

·

コメントする 3件)
共感した! 7件)
きりん

4.0失ったのか得たのか

2026年5月1日
PCから投稿

3~4年前くらいに突発性難聴になりました。
左耳だけね。
すぐに治りましたけどね。
再発してないですけどね。
その時の聞こえ方が、ルーベンが聴力を失った時の
音の聞こえ方と非常に似ていました。
”映画は映画館で観るもの”と
日ごろから思ってはおりますが、
この映画は(偶然にも)イヤホンで鑑賞しました。
そのせいか、臨場感というかルーベンの聞こえ方というか
ダイレクトに伝わった気がしました。

ドラマーなのに聴力を失ったルーベン。
それは本人にとっては絶望でしょう。
では、メタルバンドのドラマーとして
その日暮らしの自堕落な生活をしていたルーベンに
明るい未来は待っていたのでしょうか。
いや、その日のライブで最高の瞬間を感じられれば
それは幸せな人生なのかもしれません。

失った人生に絶望を感じる者と、
受け入れて次への道へ歩みだせという者。

どちらが正しいのでしょうか。

なけなしの全財産をはたいてでも、
”偽物のメタルの聴力”を欲しがったルーベンを
私は哀れとは思えない。

圧巻のラスト。
メタルの耳を外した音のない世界。
映画的にはとても長く感じた。
(実際の時間はたったの5分。)
しかし、ルーベンが決意したそのとてつもなく永い時間は、
彩と喜怒哀楽に満ち溢れ陽光がまぶしい暖かい時間。
と、私は思いました。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
にゃろめ

5.0”聞こえる”と”聴こえる”

2026年4月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

映画館で観たのは、もう4年半前になる。

映画館という没入できる空気、音響だからこそ味わえる、聞こえ方の違いを体感し、
急激に変わっていく世界に、ついて行けず焦る気持ち、大きな不安、それに伴う喪失感が覆い被さってきた。

難聴者の聞こえ方、人工内耳の聞こえ方、それらの音像が突然切り替わる場面に、大きな衝撃を受けた。
程度や人によってそれも異なることは分かっている。
でも、 “聴く”という行為がどれだけ脆くて、”主観的か”、を暴いているようにも感じられた。

音が聞こえなくなること、
それを受け入れ、その個性で生きること。
昔に戻りたいという願望と自分の個性の乖離。
欲しいものを手に入れたと思ったら、
自分の描いていたいものと違ったこと。

再視聴して思ったのは、
初回と随分印象が違うということ。

ルーベンはとても感受性の鋭い、優しい心を持った人で、
多層的な苦しみや悲しみ、愛情、責任感、
環境の変化、彼自身の変化などがダイレクトに心の奥底まで届いてくる。

それはルーも同じで、愛とそれに付随する感情も多層的で、
過去に抱いていた家族への感情の変化による居場所の獲得、環境の変化に伴う、
彼女自身の変容もまた、痛いほど伝わってきた。

そんなに速いスピードで流れないで欲しい。
結論を急がないで欲しいと願ってしまった。

聴者が同じように聴こえているというのも、
幻想かもしれない。

”聞こえる”ものと”聴こえる”ものは違う。

ルーベンの自ら選び取った最後の静寂が、
彼がそれまで知っていた音、新しい世界の響きを知った上で獲得できた、
自身の個性の受容となればよいけれど。

note(YouKhy)では、もう少し詳しく書いています。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
YouKhy

3.0どんな人でも

2026年1月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

突然聞こえなくなる事があるんだ。
手術すれば元のようになると信じてたのに。
悲しすぎる。
それでも生きていかなければならない。
過酷だ。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
chiez0

3.5タイトルからの印象とは違った

2025年12月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

ドラマーに興味を持って観たけれど
そういう話ではなかった
聞こえなくなるということ
聞こえないということ
聞こえるようにするということ
色々知れたし考えるきっかけになった
ラストは良かった

いつ視聴したか忘れたけど 11月だとは思う

コメントする (0件)
共感した! 0件)
きなこ

3.0無くしたものの中で探す幸せ

2025年4月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

無くしたものを悔い、
無くしたものを必死で取り返そうとする。
完全にはもとに戻すことは出来ない。
無くしたものの中で、
新しい幸せを見つける事が、これからの人生で大切なのかもしれない。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
上みちる

4.0聞こえるいうこと

2025年4月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

幸せ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
ゆい

5.0終わりの心得①

2025年4月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

メタリカみたいなメタルバンドのドラマーにスポットを当てた音楽映画を想像し、なんとなく今まで見なかった作品。ようやく見たら、全然違ってました。私の『終活の心得』として記憶に残さねばいけない。

恋人の女性ギターボーカルと二人でメタルバンドをやっているドラマーの主人公が、突発性難聴で音が声が聞こえなくなってしまいます。長年バンドで生活してるんだから、さあどうすんな?というお話。

私は今年50歳になる。人生100年時代ともなれば、折り返しになります。いやそもそも、100年どころか明日、目が覚めない可能性もある。なんも保証ありません。誰しも歳を重ねることにより、目が耳が身体が悪くなる。必ず衰えますわ。おまけに私は色の見分けも弱い。学生の頃、美術の先生に『絵は上手く描けてるが、なぜここをこの色で塗ったん?』と言われ、やっぱみんなと違う見え方してんやなと自覚。なんか暗い感情が湧いたが、今は上手く描けてたんならええやんけと思う。

老眼という新たなる敵が加速装置を搭載してやってきたが、眼鏡があれば本も読めるし、車やバイクの運転もしていいライセンスがあるので、今は特に困ってはいませんが、いずれは受け入れなきゃならんでしょう。

ラストシーン

もはや生活レベルや環境の違いを感じ、恋人の家を黙って去った主人公は、街のベンチに座る。サウンド・オブ・メタルというタイトルは、こういう事かと。高い金を払い手術したものの、元の状態になんか戻るわけがなく、不快な金属音ばかりが延々と彼には鳴り響くわけです。医学的な細かい事はわからないが、どうもそういうもんらしい。

後半の流れから、ネガティブな私は彼が自ら命を絶ってしまうだろうと思って見ておりましたが、補聴器を外し、無音の世界で佇む彼の表情で終わるラストは、彼がこの病気を、聞こえない世界を受け入れたんだなと思いたい。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
よしお

3.5聞こえないということ

2025年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

 ルーベンはメタル系バンドのドラマーだったが、聴力が低下してしまう。ボーカルで恋人のルーは、彼を聾唖者の支援コミュニティーにつれていき、離れて暮らすことに。そこでの暮らしに慣れていくルーベンは。
 音響効果が際立っていました。ドラムの迫力、聞こえにくくなっていくところ、手話がわからないので会話に参加できないこと、人工内耳の聞こえ方、疑似体験をしている感じでした。ネックスピーカーで鑑賞したから、よりわかりやすい。普通のスピーカーより、イヤホンなどで鑑賞するのを勧めます。そして彼が得た、静寂平穏も理解しやすい。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
sironabe

3.0退屈

2025年3月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
ガレ

3.0誰の身にも

2025年3月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

自分の身に同じことが起こったら、やはり動揺してしまう。ただ取り乱れて暴れたりはしないかな。
すごく評価が高いけど、自分にはそれほどでもなかった。
評価:3.2

コメントする (0件)
共感した! 0件)
bigsuke

4.5評価基準にかなり苦しんだが・・・・・

2025年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
mark108hello

4.0音の質・・・聞こえれば、それで良いというものでは無いのが分かりました。

2024年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 1件)
共感した! 17件)
琥珀糖

4.0私の感想を書くとこの映画の良さが逆に下がってしまいそうでコメントし...

2024年9月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

私の感想を書くとこの映画の良さが逆に下がってしまいそうでコメントしにくい。だから余り語らず、これは良い映画と言いたいが、Prime Videoだと何度試しても英語版だとスムーズに再生出来ない。日本語吹き替え版なら何故かスムーズ。少し残念。
脇役の俳優達も、もしかして俳優じゃない人達?も良かった。
邦題のタイトルが「聞こえないということ」では無く『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』が意味有りげ。
映画館で観れば良かったと思った作品。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ナイン・わんわん