劇場公開日 2021年10月1日

  • 予告編を見る

「タイトルのもう1つの意味」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ bionさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイトルのもう1つの意味

2021年10月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 ルーベンがドラムを叩く爆音の世界、耳鳴りとともに音がくぐもって聞こえる難聴の世界、そして全く無音となる失聴の世界。音響設備が整っている劇場だからこそ、その違いがはっきりわかる。

 そしてもう一つのメタル(金属)の音。メタルミュージックは僕にとって刺激的で心地よい音だが、本当の金属音となると話は別。高音でキンキンとするノイズが、ずっと耳に入ってくる世界があるとするならば、とても耐えることはできない。人口内耳という装置を初めて知ったが、まだまだ攻殻機動隊のようにはいかないらしい。

 支援団体のリーダーであるジョーが語っていた言葉が心に残った。「失聴はハンデではない。そして治すものでもない。」憐れみ目で見ること自体が差別である事を思い知らされる。団体が運営する学校では、耳の不自由な子供たちも教師も笑顔で日々を送っていて、ヘレンケラーの名言「不便だが不幸ではない」を思い起こさせる。

 ルーベンのその後の物語は想像するしかないが、コミュニティで得た経験をもとに聴覚障害者が体感できる音楽を作っていくのだと思う。

bion