「2回目は是非イヤホンで!!」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ Chapmanさんの映画レビュー(感想・評価)
2回目は是非イヤホンで!!
日本語のサブタイトルは「聞こえるということ」となっていますが、どちらかというと主人公のルーベンが「聞こえないということ」を受け入れその生き方を選んでいく過程を描いた作品だと感じました。
サウンド・オブ・メタルというタイトルには、「ヘヴィメタルの音」と「補聴器を通した金属音」という2つの意味があるんですね。
【ラストについて】
暗くなりがちなテーマなので「ルーと再開したら新しい恋人がいた」というバッドエンドだけはやめてくれ!と恐れながら観ていましたが、そんなチープな発想は軽く払拭してくれる、余韻の残る良い終わり方でした。
考えさせられるラストですがルーベンは2つの選択をしました。
1つ目の選択は、別の生き方を見つけたルーに対して、自分と一緒ではまた腕を搔きむしるような破滅的な生活に戻ってしまうことを予感し「別れを告げたこと」です。ルーはルーベンのことを想って「また放浪生活をしてもいい」という態度を取りかけていました。それだけにルーベンにとっては勇気のいることでした。
2つ目の選択は、インプラントを外して「音のない生き方を選んだこと」です。そこで映画は終わるので、そのあとルーベンがどういった生き方をするのかはわかりません。おそらくはインプラントに頼らない自然な生き方をすることになるのでしょう。もしかしたらコミュニティに戻ったのかもしれません。そうなってあの学校の先生と付き合ったりしたら最高ですね。
この2つの選択には、「自分よりも他人の利益を考える」、「つらい現実を受け入れて前向きに生きていく」という大事なメッセージがあると思いました。メタルバンドのドラマーで薬物依存症というルーベンが、コミュニティでの生活を通じてこの選択をできるようになる。この成長が良かったです。
【イヤホンでの視聴をおすすめします】
今回、TVに繋いだスピーカーの調子が悪かったので、偶然イヤホンで本作を視聴することになりました。途中まではどちらでもよかったのですが、インプラント経由の音を聴いた瞬間まるでルーベンが聴いている音を自分でも聴いているように感じるほど臨場感が段違いに変わりました。入ってくる音の全てが金属的で「今後この音でしか聞こえないのか・・・」というルーベンの絶望感が痛いほど伝わってきました。ルー宅のパーティのシーンでは周りの音を上手く聞き分けられないルーベンが感じた疎外感がよくわかり、つらい気持ちになりました。
ということで本作へより没入したい方にはイヤホンでの再視聴をおすすめします。