劇場公開日 2021年11月5日

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「サブカルと渋谷の街の懐かしさの後に、ぐっさり刺さる映画」ボクたちはみんな大人になれなかった Yumaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0サブカルと渋谷の街の懐かしさの後に、ぐっさり刺さる映画

2021年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

オザケン、尾崎、元祖仲屋むげん堂、WAVEの袋、ラフォーレ前の待ち合わせ、タワレコ前、シネマライズのスワロウテイル、缶バッジ、ソニックユースのTシャツ、主人公と同年代の私には、懐かしさを感じるものばかりで、こそばゆい気持ちになりました。でもサブカル懐かしい!渋谷懐かしい!だけでは終わらないのがこの映画の素晴らしさです。

主人公とかおり、その後の恋人、周りの友達。自意識の高さだったり、いい加減さだったり、虚無感だったり、自分の20代から40代の軌跡のどこかに重なるところがあり刺さりました。刺さりすぎて、映画を観てからここ数日ポンコツになっています。

一番刺さったのは、否定的なニュアンスで「普通だね」って言うのが口癖だったかおりが、一番普通に結婚して普通にお母さんになっていたこと。でも普通なことこそ難しくて、愛しくて、特別なのかもしれないですね。少なくとも彼女は母になったことで大人になれているはずだと思いました。

25歳から46歳を違和感なく演じた森山未來さんにはただただ脱帽。ラストの駆けるシーンは鳥肌が立ち、そこだけ戻して見返しました。東出さんもいい感じの汚らしい役どころで最高でした。好青年役よりずっと似合っています。

原作も読みたいと思ってますが、原作は2017年に発行されたとのことで、当然コロナ禍の現代のシーンは映画オリジナルですよね。この映画はコロナ禍の閑散とした東京があるからこそ、90年代から2000年にかけてのお祭りのような時代とのコントラストが効いているので、コロナがあってこそ完成形になったという気がします。ここ2年間、自分たちはとんでもない特別な時代を経験したんだなって改めて思いました。

ちなみに私はアメリカ在住で、米Netflixの配信で、日本での劇場公開&配信スタートと同じタイミングで観られました。主人公がかおりと文通を始めた時代からアメリカに住んでいるため、本当に良い時代になったと痛感しました。

ゆま