「個vs個vs組織」孤狼の血 LEVEL2 カージョウ大佐さんの映画レビュー(感想・評価)
個vs個vs組織
上林という悪役にはいわゆるサイコパスの要素が確実に備わっていた。
こうした行動の異常性は「ヤクザモノ」では薄れてしまいかねないところだが、彼は紛れもなく異常であり、あの回想シーンが観客の同情を誘うことも恐らくはない。上林の行動には常に情け容赦がない。確か彼が仲間を心から思いやるような場面は一度もなかったと記憶している。
また、上林がムショを出て更生を誓うシーンから窺えるのは、彼は平気で上っ面を装うことができるということ。どうやら見境のないただの狂犬とはワケが違うそうだ。そんな彼の得体の知れなさには「極道だから怖い」の理由はどうも弱い。何か他にあるはず。後に明かされる過去も蛇足に思えるほどだ。今は理由がそんなにも必要なのだろうか。
ともかく、安易にタイトルを出すのも気が引けるが、「ダークナイト」における自らの正義を全うしようとするバットマンと無秩序の悪・ジョーカーと。或いは「007 スカイフォール」か。今作では日岡と上林。両者の対立をメインプロットとして描くことで本来ならこの手のジャンルの主となりうるはずの組織の渦は二の次となり、新風を巻き起こした。
それは単に男二人のタイマンが新しいなどと言っているのではなく、あくまでも日岡と上林の境遇を踏まえた上で、狼であったはずの二人が組織の組み立てた檻の中で犬同然に暴れ回り、いつしか飼い主の檻を破壊しては場外乱闘を繰り広げてしまう。そして遂に噛み付く……。
というこの構成が面白いと思った。