「気楽に観られる上等な娯楽作」マスカレード・ナイト サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
気楽に観られる上等な娯楽作
日本のサスペンス映画、とりわけ刑事ドラマはいい。演出脚本共にレベルが高く、容易に犯人をわからせないため観ていて飽きることがない。日本映画界はもっとサスペンスを作ってほしい。
そして、その演出に娯楽的なユーモアが入れば鬼に金棒。そんな映画だった。たとえば刑事とホテルマンの光と影の描写。敵対こそしないが、対立する考えを持った人間同士を端的に表す描写。私はこういうのが好きだ。真面目にサスペンスやっていないシーンではこういう「遊び」的な演出があるので、そこが良い。観ていて本当に楽しい。
あとはちょっと老けたキムタクの渋い魅力。昨今の若手俳優がほとんど中性的なイケメンである一方、昔のイケイケな感じに加齢が加わったキムタクは『危険な男』っぽく、刑事の役柄にぴったりだった。
ただ、前作ではキムタクと長澤まさみのデコボココンビが織りなす人間模様が魅力のひとつだった。今作でもそれは健在…と言いたいところだが、ちょっとパワーが落ちたような気も。前作ではキムタクの刑事の勘がホテルを救ったり、長澤まさみのホテルマンの姿勢が犯人の特定に至ったりと、まさに持ちつ持たれつの関係だった。
しかし今回はお互いに勝手がわかっているせいか、互いに積極的に相手の領域に侵入する。キムタクがホテルマンの立場を活かした捜査をぶち上げたり、長澤まさみが刑事よろしく怪しげな人間を追いかけたり。それ自体悪くはないのだが、前作のデコボココンビの方が好きだった。そこがちょっと残念。
あと、犯人の使ったトリックが前作とほぼ同じだったので、そこも不満か。しかし鑑賞中も鑑賞後も決して損な気持ちにはならないと思う。そんな良作。
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