「映画館なんかなくたって、生きていけるんだけどね。」浜の朝日の嘘つきどもと 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
映画館なんかなくたって、生きていけるんだけどね。
「フィルムって、半分暗闇見ているのよ。」って言われてドキリとした。世の中も、真実の半分しか見れていないんじゃないかと。いや、それ以下か。その半分を埋めるために、映画(を含め創作物であるエンタメ全般)を観たいと欲するのか。感情にできた隙間を埋めたくて、映画を観たいと思うのか。それを知ってるからこそ、映画館を守ろうとするのか。
その気持ちは、
先生「東京で何してたの?」
あさひ「映画館ばっかり行ってました」
先生「入ってよし」
のやり取りでわかる。
支配人の「みんな、映画館がいつでもあるって思ってるから大事にしないんだよ。人と同じだよ。」ってつぶやきでわかる。
高畑充希の演技はややオーバーアクトに感じることが多くて、今回もそのきらいがあった。役柄的にその熱量が必要だったせいもあるだろうけど。それに、私可愛いでしょ?感がいつも強い。ただ、高校生役も実年齢役も違和感なくこなすスキルはすごい。
喬太郎師匠は、ふだん高座の上での"独り舞台"が主戦場なのに、人と交わった掛け合いが自然すぎて心地よすぎた。たまに演劇の舞台にも出ているとはいえ、さすが。ドタバタしがちな物語の中で、適度なユルさと、緩急の間の上手さったらなかった。
しかし、結局おいしいところを最後にかっさらっていったのは、大久保佳代子だったな。なによ、好感度上がるじゃん?
ラストは、たしかに大団円ではあるけれど、決して万事好転のハッピーエンドで終わらせていないことは、森田支配人とあさひのやりとり、
あさひ「ほんとにこれで良かったのかな?」
支配人「これで良かったにしていくしかねえな」
でわかる。その冷静さのおかげで、すっきりできた。
そんな現実を見据えている支配人が、「映画館なんかなくたって、生きていけるんだけどね。」と自虐的に言う。だけど、映画好きが言うそのセリフは、駄々洩れの愛にあふれているようにしか聞こえなかった。