「世の中がおかしければおかしいほど、切れ味を増す風刺」続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0世の中がおかしければおかしいほど、切れ味を増す風刺

2021年4月30日
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鑑賞方法:VOD

よくやるなあ、というのが第一印象だ。今のアメリカがこの映画を高く評価したくなるのはよくわかる。それだけトランプ政権の4年間で大きな不満が溜まっていたんだろうし、政治がおかしければおかしいほど、こうした風刺のキレも増す。サシャ・バロン・コーエンの仕掛けるネタはとんでもだが、現実はそれに輪をかけてとんでもだったということをまざまざと見せつける。ジュリアーニをハニートラップにハメたのはやりすぎだが、引っかかる方も引っかかる方だという感じで、「なんだこの乱痴気騒ぎは」と呆れてしまうのだが、この世界はそういう人が実権を持ち、バカみたいな理由で大事なことが決まってしまったりするわけで、現実の世界は喜劇に満ちあふれているわけだ。
しかし、このシリーズでやはり気になるのは、カザフスタンの扱いだ。なぜ、カザフスタンなのか、あれがイギリス人やアメリカ人とかでは駄目なのか。カザフスタンは小国だ、アメリカやイギリスに対して殴り返せるような立場ではない。その立場の不均衡さを気に留めておく。

杉本穂高