続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画のレビュー・感想・評価
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命懸けの不謹慎ギャグでアメリカをこき下ろす
ゴールデングローブ作品賞受賞、アカデミー助演女優賞・脚色賞ノミネートという情報から辿り着いて、前作の内容を知らずに鑑賞。
何じゃこりゃ!いいのこれ?そんな背徳感がスパイスになって余計笑ってしまう。でも爆笑した後に、アメリカの二面性、自由平等を標榜する国の裏の顔についてちゃんと考えさせられる。
案の定ガチで突撃された人達からは訴えられたりしている。インタビューしたホロコースト生存者の遺族から詐欺で訴訟を起こされ、ジュリアーニ氏とトランプ氏から批判され、カザフスタンでは1作目から当然批判された。
しかし訴訟は後に却下され、ジュリアーニ氏は本人のカメラの前でのセクハラの方が批判され、トランプ氏の「(コーエンが)つまらない」との批判(笑)にはコーエン自身が、トランプ氏もつまらない、無料での宣伝ありがとうと応酬している。カザフスタン観光局は結局ボラットの知名度を観光宣伝に利用して、ボラットの登場する宣伝ビデオを作ったりしている。
つ、強い……。
アメリカの病理は根深いけれど、この作品が抹殺されないどころか大ヒットし、日本でも見られること、各賞受賞・ノミネートされていることに、アメリカの妙な懐の深さを感じる。
シニカルなギャグの癖があまりに強烈で、触れてはいけないところに触れまくっているわ下ネタにも躊躇がないわで、好き嫌いはかなり分かれるだろう。私は、生殖の踊りだけはちょっと生理的に駄目だった。
でも、サシャ・バロン・コーエンが命懸けでこの作品を世に問うたことは伝わってきた。実際、ロックダウン反対集会のシーンでは、その場に紛れていた人種差別主義者に襲われかけてトレーラーに逃げ込んだとインタビューで答えている。ジュリアーニ氏のシーンなんかは、告発映画の趣さえある。大統領選挙の直前に公開日をぶつけていることからも、単なるドッキリとは訳が違うことが分かる。
モキュメンタリーコメディの訴求力を、コーエンはそれだけ信じているのだろう。
世の中がおかしければおかしいほど、切れ味を増す風刺
よくやるなあ、というのが第一印象だ。今のアメリカがこの映画を高く評価したくなるのはよくわかる。それだけトランプ政権の4年間で大きな不満が溜まっていたんだろうし、政治がおかしければおかしいほど、こうした風刺のキレも増す。サシャ・バロン・コーエンの仕掛けるネタはとんでもだが、現実はそれに輪をかけてとんでもだったということをまざまざと見せつける。ジュリアーニをハニートラップにハメたのはやりすぎだが、引っかかる方も引っかかる方だという感じで、「なんだこの乱痴気騒ぎは」と呆れてしまうのだが、この世界はそういう人が実権を持ち、バカみたいな理由で大事なことが決まってしまったりするわけで、現実の世界は喜劇に満ちあふれているわけだ。
しかし、このシリーズでやはり気になるのは、カザフスタンの扱いだ。なぜ、カザフスタンなのか、あれがイギリス人やアメリカ人とかでは駄目なのか。カザフスタンは小国だ、アメリカやイギリスに対して殴り返せるような立場ではない。その立場の不均衡さを気に留めておく。
ボラットの娘が秀逸。ボラットパワーが2倍状態
14年ぶりの「ボラット」の続編です。この14年で、映画製作や映画の内容をめぐるコンプライアンスが大幅にアップデートされてしまい、パワハラはNGだ、セクハラはもってのほかだという風潮のいま鑑賞すると、かなり微妙な感じがします。しかし、ボラットの娘トゥーターがスーパークレイジーな演技を見せてくれるので、そこら辺は行ってこいですかね。ボラットが2人になって、パワーが2倍になってる感じ。
1作目に比べ、ガチなどっきりカメラは少なくなり、演出パートが多くなっている印象は受けました。そんな中、一番面白かったのは、赤ん坊のフィギュアが乗っかったケーキを食べた後、産婦人科に行くくだりですね。「一般市民をおちょくるのもいい加減にしろよ」と思いつつ、爆笑が止まらないというね。やっぱ、ボラットは最高ですね。
コロナより厄介かも・・
映画.com編集長の激推し作品、コロナ禍の折、憂さ晴らしに最高なのが本作と言う触れ込みでしたので早速VODで観てみました。
世に風刺コメディは数多ありますが、本作程ぶっ飛んだブラックコメディは観たことがありません。
下ネタ満載はB級コメディのいわば定番ですしトランプや支持者をいじるのはマイケル・ムーア監督でもお馴染みなのでよいのですが、女性蔑視どころか自分の娘を家畜のように扱う様や、ホロコースト賞賛にいたっては悪ふざけの域を超えていますので流石に観るのを中断、グーグルでカザフスタンの文化を調べてみたら当然のこと嘘八百。
エンドロールでホロコーストの生き証人だったジュディス・D・エヴァンスさんへの謝辞がありました、彼女が出演したのは本人が映画の内容を知らず騙されたのだとご遺族が訴訟を起こしたのですが真意が伝わり和解したとのこと、もっとも脚本・製作・主演のサシャ・バロン・コーエンは生粋のユダヤ人なのでアンチテーゼであることは明白です。
ただ他にも訴訟ネタの宝庫状態、実名の政治家やご婦人たち、カザフスタンの方から訴えられたらどう弁明するのでしょうね、ある意味莫大な資金を有するAmazonの後ろ盾があればこその確信犯なのでしょう、普通の映画会社ではつくれません。
コロナ騒ぎまでネタにする時流をとらえたコーエンさんの頭の良さには脱帽です、自身がコロナのスーパースプレッダーという落ちも自虐的、主人公の毒気の強さは疫病なみということでしょう、ほとほと疲れました。
毒気ではひけをとらない北野監督が観たらどういう感想を言うのか聞いてみたい、流石に日本では無理と悔しがるか、Amazonならいけると・・・。
マニュアルが欲しい。
こいつは凄いニュース性たっぷりなタイミングで登場。昨今はおとなしい性格俳優といった風情のサシャ・バロンが14年前のぶっとんだアドレナリンを復活。とてつもない続編となっている。マイケル・ムーア真っ青な壮絶なオチと一周回った陰謀論の展開は、もう天才。Amazonオリジナル。
This is America
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完全に今のアメリカをうつした映画。アマプラオリジナルで、大統領選にぶつけてきてるタイムリーな映画。なんとボラットがアメリカに来た後にアメリカがロックダウンされて、そこでトランプ支持派のQアノン信者と出会っちゃったり。これが作れるのはさすがアメリカだ。
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今回はボラットの娘が出てきて、徐々にフェミニズムに目覚めていくのが面白い。でもやっぱりこの映画なので思想は間違った方向へ行っちゃって、ロックダウン解除しろという集会を呼びかけたり、ホロコーストはなかったというネットのバカな情報を信じたり(笑).
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あと1番のハイライトは、女性が頭を使うと脳が溶けると信じ込んでるボラットにQアノン信者達が、そんなことありえない陰謀論だというシーン。うまいよねえ。めちゃくちゃ笑った。
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不謹慎すぎてダメな人にはダメだけど、ブラックコメディ大好きな身としてはめっちゃ面白かった。
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コロナ禍の米国をノーマスクで駆け回るバカ父娘が暴き出す人間の本質に泣きました
カザフスタンのジャーナリスト、ボラットはド下品な取材で祖国カザフスタンに大恥をかかせてしまった罪で強制収容所に収監されていた。トランプ政権にガン無視され続ける現状を打破しようと考えたカザフスタン大統領はボラットを開放し、密命を与える。それは自国の文化大臣でサルのジョニーをトランプに貢ぐこと。先に貨物船で米国に渡ったボラットは航空便で送られたジョニーを待つが届いた檻に入っていたのはボラットの娘トゥーターだった。
前作で全米に顔が知れ渡ってしまったボラットに代わって体を張るのがトゥーター。一体どっから見つけてきたんだ?レベルにキュートですがもうやることがエゲツナイ。特に印象的なのは社交界の場で披露する“生殖の踊り“。これはちょっと正視に耐えないくらいに下品なので何にも知らずにこれを直に見せられた人の胸中を思うと胸が痛みます。あとはマイケル・ペンス副大統領の集会で観客席からペ○スさ〜ん!と呼びかけて屈強なガードマンに摘み出されたり、Qアノンの集会で”武漢ウィルスの歌”を披露したり極上の下品なシャレがもうこれでもかと全方位に撒き散らされていて、特にトランプ政権下で蔓延する女性蔑視、黒人差別に対する猛烈な誉め殺しには開いた口が塞がりません。しかし本作が撒き散らすシャレよりも全米に蔓延しているのが新型コロナ。マスクを付けないトランピスト達の間をノーマスクで駆け回る父娘ってもうそこだけ切り取っても命懸けなのでハラハラさせられっぱなし。しかしそんなムチャクチャアナーキーな本作は、正気とは思えない陰謀論やありとあらゆる与太話をエビデンスもなしに信じる人達が実は余りにも善良であるということをシレッと暴き出し、クライマックスにドエライお土産を置いていきます。いやこんな下品なギャグだらけの映画に泣かされるとは思わなかったです。そしてエンドロール前のド下品なオチに被さるアノ曲のイントロでアラフィフ全員号泣でしょう。確かな知性に裏打ちされた下品が炙り出す人間の根源的な優しさに触れて本当に胸が痛いです。物凄い傑作です。
凄まじい破壊力の風刺
未だかつてこんなに強力な風刺はあったか?ジェンダー・イクオリティ、人工妊娠中絶、フェイクニュース、分断するアメリカ、そしてコロナ。我々が直面する問題をグロテスクなまでに白日の元に晒す。バイデンが勝利できた要因の一つにこの映画が間違いなくあると思う。
ホロコーストの生き残りのおばあちゃんとボラットが話し、真逆の理由で喜び合いハグするシーンは奇跡。言論の自由はここまで許されるのか。
日本の芸人が情けない
今の日本にコメディアンはいない。一昔前はビートたけしや島田紳助のような人物もかろうじて残っていたが、もはや誰も残っていない。いるのは第7世代とかいう日本社会を衰退させていくだけの腰抜け達。芸人の、社会での本当の役目は何だ?弱い人たちを背にして権力や既得権益に素っ裸で声をあげる本物のコメディアンはこの国に現れないのだろうか。
こういった本物のコメディアンの本物の一流社会風刺作品を観てしまうと悲しくなってくる
反知性
悲しいことだが、もはや争点はこの一点なのかも知れぬ。怪しき異国の書をフェイクとする脳みそがちっとでも残っているならば、動かし様もあるはず。科学や知性に反吐吐くか、それを守護するか?他国のことは言えぬ。幸いにも投票権はある。
情報過多社会とコロナ禍をシニカルな笑いで内包
お騒がせ俳優サシャ・バロン・コーエンが、人間が抱える心の奥底を引っぺがす、イジワルやり過ぎモキュメンタリーのまさかの続編。
ボラットとその娘トゥーターがやらかす一挙手一投足は、トランプ政権になって顕著となったアメリカの実態をそのまま再現したものばかり。前作同様、よくもまぁここまでやったなという突撃撮影が見どころだけど、一番笑ったのは共和党集会に乗り込もうとしたボラットの秘策。いつも体を張るコーエンのプロ意識(?)には本当に頭が下がる。
根はいい人なのに、情報の取捨選択次第で偏った思想に陥るという情報化社会がもたらす弊害はもちろん、コロナ禍というタイムリー過ぎる現状までシニカルな笑いで内包してしまう。
例によって観る人を選ぶ内容であるものの、コーエンが結局本作で一番伝えたかったメッセージは、ラストのラストにあると思う。大統領選直前で本作を発表したのが、何よりの証拠だ。
アマゾンプライム配信なので日本語吹き替え版も簡単に観られるので、ボラット役の山寺宏一による絶妙なセリフ回しも堪能してもらいたいところ。
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