再会の奈良のレビュー・感想・評価
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「中国残留孤児」とその家族の絆、人の温かさ
【「中国残留孤児」とその家族の絆】、エグゼクティブプロデューサー:河瀬直美に惹かれて鑑賞。テーマは【家族の絆と再生】。行方不明になった残留孤児の養女・麗華を探しに訪日した陳おばあちゃん【陳慧明:ウー・イェンシュー】、日本語が全く分からないのに❣ 頼りは孫娘代わりの【シャオザー/清水初美:イン・ズー】、彼女は仕事を首になりそうな羽目に陥りながら奔走する。捜索に、彼女のアルバイト先居酒屋で出逢った【吉澤一雄:國村隼】が加わる。日本名不明の麗華、手掛かりは麗華からの手紙、捜索は難航する。興福寺のシーンは美しかった。麗華から届いた水彩画の場所を突き止めたシーンに感涙❣ ラスト近くの大事なシーンを見逃したかも❓ 切なくも心温まる物語に感動、人との縁は不思議だ❣ ロケ地は奈良、【シャオザー/清水初美:イン・ズー】が住むのは御所市。
奈良を舞台にしたロードゴーイング・ムービー? 国境を越える家族
少し前に予告編を観ていて、なんとなくこれは観たいなあと思っていた。こういうカンは、映画の場合得てして当たるのである。主な理由は、中国残留孤児や移民といったテーマに興味があったからである。
奈良に住んでいる日中ハーフのシャオザーのところに、おばあちゃん代わりとも言える陳おばあちゃんがやってくる。シャオザーのお父さんの友だちのお母さん、という関係。そのお友だちのお母さんの代わりにお乳をもらったという。陳おばあちゃんは、1945年の満州引き揚げの際親に置いて行かれてしまった日本人の子どもを育てたが、のちに自分の息子も生まれた。が、その息子が死んでしまったため、事実上日本人の娘(麗華)だけが子どもになってしまっていた。
麗華は中国で育ったものの1972年の日中国交正常化を機に日本に帰って暮らしていた。おばあちゃんに手紙を送っていたがあるところから音信不通となり、心配したおばあちゃんが奈良まで探しに来たというわけだ。
しかし麗華の日本名も分からず、手がかりは奈良に住んでいたこと、手紙、写真だけ。雲を掴むような捜索活動が始まる。が、幸運なことにシャオザーが働いていたお店の常連さん(吉澤)が警察OBということが分かり、探すのを手伝ってもらえることになる。
わずかな手がかりを追って、あっちに行ったりこっちに行ったり。奈良県内の残留孤児や中国人に会うことになるが、移動していくのでロードゴーイング・ムービー的な印象を持った。3人(シャオザー、陳おばあちゃん、吉澤)で歩いているシーンがすごく多い。たまに車に乗っていることもあったが。
面白いなと思ったのは肉屋に入った陳おばあちゃんが、言葉が分からないため肉屋の店員と動物の鳴き真似で意思疎通を図るシーン。また、お寺で、並んでベンチに座った陳おばあちゃんと吉澤が、無言で(あたかもパントマイムのように)コミュニケーションを交わすシーン。パントマイムと書いたがミニマルなダンスのようでもあった。
異文化接触モノとして思い出すのが『ロスト・イン・トランスレーション』なのだが、アジア人同士のせいかもっと沈黙度が高いようだった。
全編を通じ面白いと思ったのは、音楽。BGMの当て方というか選曲というかが、なにか面白いセンスをしているのは日本側でなく中国側がやったからなのだろうか? 見慣れた日本の風景とかぶさって、面白い効果を出していたと思う。
お寺やお祭りなど、日本的なものは中国の人には面白いのかもしれない。
私はこの映画には大いに感動した。まず、捨てられてしまった赤ちゃんを育てるという中国人の母の愛。そして、消息を絶ったら探しに来てしまうというのも母である。そのおばあちゃんを慕っている「孫同然」のシャオザー。吉澤はじめとする、温かい人たち。お寺の耳の聞こえない管理人さんや、麗華が働いていたお店の女主人などの人物。日本人なのに、故国へ帰ってきても中国人扱いされ、生活に苦労をする残留孤児たち。
私の父方の家族は満州に住んでいた時期があり、引き揚げは戦争勃発以前だったが、一番年下の叔母はやはりあやうく置いてこられるところだったという。赤ん坊の叔母がいっしょに帰ってこられたのは僥倖だったのだろう。今と違い、いったん国を離れてしまえばそうやすやすと再訪することも叶わない。自分の育った土地や、事実上の家族への愛着も測り知れないものがあっただろう。私自身、海外に住んだことがあるため、よく分かる。最近、いがみ合いがちな日本と中国だが、国境や政治体制を越えた家族やつながりがあるということを思い起こさせてくれた映画だった。
【中国残留孤児の哀しみに想いを馳せる作品。日中戦争の犠牲になったのは、両国の兵士だけではないのである。】
- 今年は日中国交正常化五十周年だそうである。日中国交正常化に伴い、中国残留孤児の日本への帰国が始まった。最初は歓迎ムードだったが、孤児達の環境は、厳しかったそうである。-言葉の壁や、実の親と会う事が出来ず再び中国に戻る人も多数居たそうである・・。-
◆感想
・今作品は、映画作品としては、正直クォリティは高くない。すいません・・。
・だが、元刑事を演じた國村隼さんや、永瀬正俊さんの流石の演技が、作品を支えている。
- この様な作品に出演される選択をしたお二人には、敬意の念を感じる。-
・来日して工場で働く女性シャオザーの元に陳お婆さんが、養女を探しにやって来て、偶々知り合った元刑事の男と三人で、養女を探す過程で明らかになる、養女が、経験した辛い数々の事実。
<シビアな結末であるが、私は今作品から学ぶ事は多いと感じた作品である。
罪なき民に辛い思いをさせる戦争や、国家感でのいがみ合いは、悲しみしか産まないのである。>
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