息子の面影のレビュー・感想・評価
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書類を読んで、同意するならサインを。
物語はけっこう淡々と進行していく。ただ、何もないわけではなく、失踪した息子に会いたい一心の母の愛は、無言の中にも熱くたぎっている。捜索を断念することの無念を語る別の母親に出会い決意を新たにしたり、また、こちらは母を探しているという、我が子と同年配の青年に出会って行動を共にしたり、けしてその道は平坦でもない。なにより、自分の命も危険に晒しながらの息子探しの旅なのだ。
そして、行く先のみえない停滞した空気を味わいだしたところでの、衝撃のラスト。ああ、あるよこの展開は。日本の時代劇でも見かけるよ、この末路。でも、今のメキシコではこれが現実にあり得る。この母は、なんと悔やんだらいいのだろう?どこに何を訴えればいいのだろう?このまま、「動かないで」いることが最良の選択なのか?
重いなあ、気分が。でも見応えはあった。
難をいえば、登場人物が把握し難かったこと。どうしても馴染みのないメキシコ人ゆえに顔認識が追い付かず、人物が混同する。急に出てきて、誰?とか、ああこの人はメインキャストじゃないのか、とか。一度、あらすじをおさらいしてからの鑑賞をお勧めします。
2022年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️⭐️✨
なんとも悲劇的で、ショッキングなラストでした。
中南米はカトリックの国が多く、皆んな信心深いという印象なんですが、何とも後味の悪い、縁起の悪さを感じさせる作品でした。
このラストの顛末は、正に"悪魔に魂を売り渡した"を地で行くようで…もうどんなホラー映画よりもそら恐ろしく、寒々しいとしか形容が出来ない、救いようのない最後でした。
『息子の面影』という邦題…何ともアンニュイです(笑)
そして、国境の治安の悪さや、ギャング(=麻薬マフィアか?)が蔓延るその恐ろしさがよく伝わって来るストーリーでした。冗談では笑えないぐらいの悲しい展開…ミゲル君が可哀想過ぎる…。
オカンポというのが、どういった地方の土地なのかは分かりませんが(現地の言葉も残る、かなり不便な場所でした)、もしかしたら麻薬地帯なのかも知れませんね…ギャングが通行を規制していたりするぐらいですから…(ニセパトカーも映ってました)。優しいミゲルも、土地の人間だと暗闇の中でギャングに命乞いしたところで、そりゃ、撃ち殺されてしまいます…怖い国です。
個人的な話ですが、昔、南米のとある国で生活していた時、私も夜中の長距離バスに乗っていて、途中で降ろされた経験があります…。警察の検問だったんですが、その国の警察は軍警察なので、迷彩服を着用して、まるでゴルゴ13のような長身のライフル銃を携帯してたりします。そして、ニセ警官も多く、金品を奪われたり、運が悪ければ殺されることも…。そして、本物の警官といっても、中には見た目が20歳にも満たない容姿の者もいるので、それが逆に怖いんですよね。ほんとあの時は、一瞬でしたが、覚悟を決めました。バッグパッカーなんかで旅行を計画している方は、その国の治安情報とかを外務省のHPで事前に調べておくことをオススメします。邦人はお金を持っていると思われているので、襲撃されやすいです。
横道に逸れましたが、アメリカとメキシコの国境を舞台にした映像作品は、米国側だとハードなアクションものが多いとの印象ですが、メキシコ側から描くと貧困だの治安だのと、より現実味が増してリアルな世界が描かれていました。
例えば…
息子を探す母親が、バス・ステーションで受付係の女性に、その消息情報を得ようとあれこれ聞く場面があります。そっけなくあしらわれた後、トイレの中で「誰が聞いているかわからないから、人がいるところでは、あんなことを聞かないで」とこっそり窘(たしな)められます。マフィアやギャング関係の人間にでももし聞かれたら、自分の身までが、もちろん危ういからです。
これって、危険な事が多い中南米あるあるやなと思いました(現地語しか話せない老人は、彼女の息子は見なかったと答えたが、本当にそうだったのか?「触らぬ神に祟りなし」です…)。
上映館が少ないのが残念ですが、気になる方は、とりあえず『トップガン マーヴェリック』は後回しにして、こちらの作品からどうぞ!笑
オススメです!笑
*田舎へと場面が移り変わる中、昼間の荒涼とした土地の場面と、一転夜中になると、寒々しく、物音ひとつしない、一点の明かりも無い場面の対比が、その凍りついたラストへの絶妙な演出になっていて良かったです。
火炎
アリゾナで働くと言い友人と共に国境へ向かい連絡が途絶えて2ヵ月の息子を捜す母親の話。
捜索願いを出そうと友人の母親と共に警察に出向くと、2ヶ月の間に殺された人たちの写真の中に友人の姿が有り、息子の生存を信じて旅に出るストーリー。
更なる写真を見せられるも息子の死の確証は無い中、似た境遇の母親と出会い、助言を貰い旅を続ける主人公は、必死で有り悲痛であり、そして出会ったアメリカから退去してきた青年とのやり取りは、子を思う母親そのもので、これっぽっちも似ていないのに後ろ姿が息子と似ているとか…。
何語か解らないけれど、田舎の村で話を聞かせてくれた男の悪魔の話には字幕もなく…そこからのラストは悲しくでも掬われた感じもあり、何とも言えない後味が残った。
悪魔は国境の向こう側にいるか?それとも……
あまりこの辺の知識はありませんが、多分リアルなメキシコの国情を入れ込んだ作品だと思います
ざっくりとした要素↓
①仕事を見つけるために北米に渡ろうとするメキシコ困窮世帯の若者
②メキシコから北米に行くのは大変、だが帰る(強制送還)のはあまりに簡単な回転扉形式の国境ゲート
③完全にメキシコ移民を見下してる感ある北米側の警備員
④メキシコ内部の移動だけでも、ところどころで銃を持った人間にエンカウントする
⑤メキシコ内部についてその他の事情:でっかい河も手漕ぎで渡るし、なんなら向こう岸にも銃持ったおっさんが立ってる
なお、消息不明の息子を探すために、身元不明のご遺体と対面する場面があります。
このご遺体が入っているのが、黒いゴミ袋みたいなやつなんですよね。それが学校の備品みたいに棚の上に置かれている。
実際もこんな感じなのかはわかりませんが、親子判定のための血液検査から遺体との対面場面まで、非常に事務的な感じで居た堪れなくなりました。
決め手はラストの場面ですね。
間違いなく、今年入って日本で公開された映画のうち、3本の指に入るレベルの胸糞悪さです。
脚本は秀逸ですが、全体的に起伏がなくたんたんと進行するので、中盤で気疲れしそうになります。
ただ、ラストまで観る価値はあります。
フィクションより、どちらかと言えばドキュメンタリーが好きな方に合いそうな作品かと。
静かなエンドロール
後ろ姿は誰でも似てるよ。
これはいつの時代の話なのかと思わず錯覚しそうになる。バスは必ず次の停車場に止まる。それが当然の日本では全く信じられないようなことが今、この瞬間も遠い国の国境沿いで起こっている。
メキシコ。貧しさから脱却するため多くの若者がアメリカを目指す。しかし国境沿いには悪魔がはびこっている。容赦なく命が奪われてゆく。盗むためだけに。ただそこにいるだけで。
帰らぬ息子を追って旅立つ母。手がかりを求め歩き続ける。そしてその先。母を待ち受ける悲しすぎる旅の終着点。本当に辛すぎる。でもこれこそがメキシコが抱える闇の正体。負のループからいつまでも抜け出すことができない。これは決してメキシコだけの問題ではない。世界は多くの困難や課題を抱えている。終始漂う悲壮感に反するかのように、メキシコの雄大な景色がただただ美しかった。夕日も雨も木々も炎さえも。
餓鬼
タイトルなし(ネタバレ)
メキシコ辺境の地から
自分の人生を見つけにアメリカへ向かった
未成年の息子が消息不明に
2ヶ月後母は息子を探し始めた
この作品の予告編を観て
何が起こったのか?どうなったのか?
結末が知りたかった
荒涼とした風景に
雨や湖
水が心に沁み入るような美しい映像
出会いや苦悩を描くロードムービーは
メキシコの現況を世に知らしめる
衝撃的な作品でした
この10年メキシコ国境付近では
10万人が行方不明になっているそうです
突然2…300の遺体が見つかることも
その場に簡易ラボが出来
家族を探す人々がそこに集まる
助けを求めた相手が当事者の場合もある
誰に助けを求め信用したらよいのか…
国境付近では組織から抜けられず
犠牲者から加害者になってしまう
この作品は
メキシコ国境付近での現実を
母親の視点から描かいた作品です
辛くとても怖かった
生と死が隣り合わせの世界
オンライン試写会にて鑑賞。
いやぁ、凄い映画を観てしまった!
「生と死が隣り合わせの世界」を描いたフェルナンダ・バラデス監督の傑作!
メキシコの貧困生活から抜け出そうとアメリカへ国境越えしようとした息子が消息を絶ったため、母親が息子を探し回る。どんな努力も惜しまずに。
そんな中、やはり母親を探す青年ミゲルと出会って、一緒に旅をするのだが…というドラマ。
「これは実際に現代のメキシコで起こっている事である」とバラデス監督の言葉を聞いて、ただただ驚くばかり。
国境越えをしようとする者、貧しい村の弱者を躊躇なく射殺する武装団の存在が怖すぎる。
そして、彼らの一人を見つめる「眼」には、武装団メンバーは「悪魔の姿」に見える。
このシーンは、イングマール・ベルイマン監督『第七の封印』の「死神」に匹敵するような名場面!
そして、壮絶な展開が続いた先の結末には本当に驚いたが、「結末口外禁止映画」だと思うので記載はしない。
今年(2022年)に日本公開される作品の中では、今のところベスト級の傑作!
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