「本作が製作された意義について深く考えさせられる軽快ながら奥の深い裁判劇」シカゴ7裁判 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
本作が製作された意義について深く考えさせられる軽快ながら奥の深い裁判劇
ベトナム戦争に反対する機運が高まっていた1968年のシカゴ。8月28日に開かれた民主党全国大会の会場近くに、多くの市民や活動家が全国から集結した。抗議デモは次第に激化し警察隊と衝突した。デモの首謀者とされたのはトム・ヘイデン、アビー・ホフマンら7人。彼らは暴動を扇動した共謀罪で起訴されるが、彼らがシカゴに集まったのには様々な動機があり暴動を目的としたものではなかった。クンスラー弁護士を立てて裁判に臨んだ彼らはシカゴ7と呼ばれ全米の注目を集めるが、政府の威信がかかった裁判にはさまざまな策略が施されていた。
淡々と進行する裁判と暴動に至るまでの7人の行動を並行して描くオーソドックスな構成を鮮やかに彩るのは実力派演技陣の競演。とりわけ複雑なキャラクターであるアビー・ホフマンを演じるサシャ・バロン・コーエンが強烈な異彩を放っていて、政府側に立つ検事でありながら不当な告訴であることに疑問を持ち続けるシュルツを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットが滲ませる葛藤との対比が印象的。聖書からの引用や名言と下品な下ネタトークが飛び交う中で次第に浮かび上がってくるのは昨年末に向けて本作が製作された意義。深い余韻を残す結末に半世紀前から同じことを繰り返す愚かさに立ち向かうために欠かせないものが何かを深く考えさせられます。
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