「脚本家ソーキンにとってはうってつけの素材」シカゴ7裁判 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
脚本家ソーキンにとってはうってつけの素材
クリックして本文を読む
アーロン・ソーキンはとにかくダイアログの応酬を得意とする脚本家としてのキャリアを盤石なものにし、近年は映画監督業にも進出した。本作は、実話ベースに法廷劇を描くという、まさにソーキンの作風にピッタリの素材だと思う。キャスティングも秀逸で、理想家肌だが軽率で腹が座ってないエディ・レッドメインや、ヒッピー文化の徒花みたいなアビー・ホフマンを演じたサシャ・バロン・コーエンなど、演技の上でも見どころが多い。
ただ、作品としての弱点だと感じたのは、実話をベースにしつつ、現代にも響く社会派のテーマを立てるためにわかりやすい感動ものとしてアレンジしてしまったこと。まださほど昔ではない事件だけに、実話を改変したクライマックスなどは目的を優先して現実を単純化しすぎてしまったのではないか。
難しいことを簡易に描けることは脚本家の実力の証明であり、ソーキンにとっても本領発揮だったろう。もしかすると、その脚本を客観視できる別の監督が撮っていれば、また違う感想を持ったのかもしれない。欲張りな注文だとは思うが、監督としてのソーキンはいまだ発展途上なのかも知れないと感じた。
コメントする