「ドラえもんが主役のドラえもん。」アイの歌声を聴かせて コバさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラえもんが主役のドラえもん。
期待を超える出来で、大満足です。
「イヴの時間」もそうですが、監督はAIの進化に対して肯定的な感情を持っているんだな、と。その一貫性にも好感が持てました。
この作品は、シオンという一AIを軸に、周囲の人間の関係性が変化したり、成長するという物語です。
と、思ったけど違いますね。それだけじゃないというか。
この作品の主人公は誰だろう、と考えた時に真っ先にに思い浮かぶのはサトミです。ドラえもんとのび太で言うとこののび太のポジション。でも、それだとどうもしっくり来ないので、シオンを中心にストーリーを捉えてみました。
シオンはサトミが小学生の頃に、トウマから「サトミを幸せにして」という命令を受けます。
シオンはその命令を達成するために、あらゆることを学習して自律進化を遂げます。サトミと再会したシオンはとにかくサトミを幸せにするために奔走します。シオンが学校のカメラにハッキングを掛けて、自らの行動を隠したのも、「サトミを幸せにする」というミッションを達成するため。ミュージカル乗りはむず痒くて苦手なんですが、それも、ムーンプリンセスというミュージカルアニメが好きなサトミを幸せにするための演出だったのかと思うと、すごく微笑ましく感じました。
シオンの活躍により、サトミには友達が出来て、トウマとも想いを通わせることが出来ました。サトミが主役なら、話はここで終わりです。
しかし、その後でシオンの秘密が明かされ、この映画がシオンの長い長い旅の一部であったことがわかります。
ラスト、サトミから「シオンは幸せ?」と問われ、シオンは「幸せ」と答えます。
「サトミを幸せにする」という命令は、シオンにとって幸せの定義となり、AIであるシオンが固有のアイデンティティーを獲得するというのが、この映画のテーマだと思います。
「アイの歌声を聴かせて」というタイトルが「愛」と「AI」のダブルミーニングであることは明白です。つまり「AI(シオン)の歌声(心)を聴かせて」ということです。
ドラえもんはのび太を幸せにするために未来からやって来たわけですが、のび太が幸せになることで、ドラえもん自身も幸せになる。そんなお話です。
細かい伏線をさり気なく散りばめてキレイに回収していたり、乱取りと社交ダンスを各合わせたミュージカルシーンなど、魅力満載ですごく楽しめました!
どんどん色んな人に宣伝したいです!
もう一回見よ!