映画 太陽の子

劇場公開日:

映画 太陽の子

解説

柳楽優弥、有村架純、三浦春馬の共演で、日本の原爆開発を背景に時代に翻弄された若者たちの姿を描き、2020年8月にNHKで放送されたドラマ「太陽の子」を、ドラマ版とは異なる視点で描いていく劇場版。戦況が最終局面を迎えた1945年の夏。科学者・石村修と研究員たちは、国の未来のために原子核爆弾の研究開発を進めていた。建物疎開で家を失った朝倉世津は、幼なじみの修の家に住むことになり、戦地から修の弟・裕之が一時帰宅し、3人は久しぶりに再会する。戦地で深い心の傷を負った裕之、物理学研究の裏側にある恐ろしさに葛藤を抱えていた修、そんな2人を力強く包み込む世津は、戦争が終わった後の世界を考え始めていた。そして、運命の8月6日が訪れてしまう。修役を柳楽、世津役を有村、裕之役を三浦がそれぞれ演じるほか、田中裕子、國村隼、イッセー尾形、山本晋也らが脇を固める。監督は連続テレビ小説「ひよっこ」、大河ドラマ「青天を衝け」の黒崎博。

2021年製作/111分/G/日本・アメリカ合作
配給:イオンエンターテイメント
劇場公開日:2021年8月6日

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(C)ELEVEN ARTS Studios/2021「太陽の子」フィルムパートナーズ

映画レビュー

3.5日本の原爆開発計画と戦火の翻弄される3人の若者の悲劇を追いかける作...

2021年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本の原爆開発計画と戦火の翻弄される3人の若者の悲劇を追いかける作品を8Kで撮影している。8Kと時代ものの相性はどう考えたらいいだろう。はっきり映りすぎていて、時代を感じないというか。「スパイの妻」の黒沢清監督も苦労されたようだが、あまりにはっきり映りすぎるのも考えものだなと思ってしまう。8Kは超クリアに映ってしまうので、セットも衣装もごまかしはきかない。日本ではNHKくらいの予算がないと手を出せないんじゃないかなあと思った。 映画そのものは、良い作品だ。原爆被害国の日本でも実は原爆の開発を進めていたという実態と科学者たちの葛藤と業の深さを浮き彫りにしていた。三浦春馬の役どころが、現実とダブって切なくなる。最も未来を見据えているのが、女性の有村架純というのは現代を意識した部分か。原爆の恐ろしさを知りつつ物理学者として魅了されてもいる主人公を演じる柳楽優弥が的確に演じていた。目が純粋すぎて怖いのだ。

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杉本穂高

4.0あまり知られていない戦時中の日本の現実と、「これから」を考える上で示唆に富んだバランスの良い映画。

2021年8月6日
PCから投稿

まず正直に言うと、三浦春馬さんの遺作でなければ見なかった気がします。ただ、結果的に「見て良かった」と思いました。 舞台は、第二次世界大戦の末期を迎えた日本。あまり知られていない「日本で作ろうとしていた原子爆弾の実話」をベースに、フィクションも交え当時を描き出しています。 当時、劣勢に立っていた日本では形勢逆転を狙い、海軍からの依頼で京都帝国大学(現・京都大学)の物理学研究室で「核分裂のエネルギー」を利用した「原子爆弾」の開発が行なわれていたのです。 理系だけでなく文系でも理解できるように、ウランから核分裂反応をするウラン235の取り出し方、濃縮ウランの作り方などがCGを使って分かりやすくなっています。 様々な葛藤を抱えながらの現場で、教授が諭す以下の言葉はかなり示唆に富む本質的な論だと思います。 「この戦争は何で始まったんやろ? エネルギーや。土地も鉱物も人間はエネルギー資源を求めて戦争をする。先の戦争もそうやった。 我々が核分裂をコントロールして、そのエネルギーを自由に使うことができるようになったら、人間のエネルギー問題は永久に解決するはずや。そしたら、戦争は無くなる。 戦争をやっているのは事実だ。それなら世界を変えたい。世界を変えるために科学をする、原子物理学をやる」 ただ、この論に欠点があるとしたら、バランス論の面でしょうか。 ウラン235の取り出し、ウランの濃縮度を100%近くすると「原子爆弾」となり、広島や長崎のような惨劇が生まれてしまいます。 一方で、ウランの濃縮度を3~5%にするだけで「原子力発電」ができ、エネルギー問題は理論上は永久に解決します。 とは言え、濃縮ウランのパワーは、僅か濃縮度3~5%でさえ強烈で、3.11のような惨劇を生み出したりもするわけです。 三浦春馬さんが演じる戦地から一時帰宅している裕之が「いっぱい未来の話をしよう」と前向きに話しますが、それは必ずしも戦時中の話ではなく、現在にもつながる重要なシーンでしょう。 気丈にふるまっていた裕之が不意にみせた涙なども今となってはリアリティーを、より感じます。 主人公の柳楽優弥が演じる科学を学ぶ修の言動から、改めて「戦争」の多面的な面を感じられます。多面性を見事に演じ切ったのは流石の演技力でした。 有村架純の演じる世津からは、「戦争なんて早う終わればいい。勝っても負けても変わらん!」「いま日本は物もお金も使い果たしている。そん時に大事なんは人や、教育や」といった極めて真っ当なセリフなど、有村架純の演技だからこそ沁みる言葉が多くあります。 このように、様々な面で示唆に富む名作だと思います。 ちなみに、NHKで2020年8月15日に「太陽の子」が放送されたのは「80分のダイジェスト版」で、ようやく本作で1時間53分という全編が見られ、「かなり印象の違う作品」に仕上がっています。

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細野真宏

4.5着地点

2024年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

善も悪もない。 この作品から感じる「概念」 太陽から連想する核分裂 それを探す研究者たち 一方英語から感じる神からの贈り物である火 問題は、その使い方なのかもしれない。 さて、 比叡山から原爆を見学したいという純粋なシュウの思いは、科学という名の狂気を表現している。 シュウは何も気づかないうちに、それがあるべき姿だと信じて疑わない。 そしてあの長い尺を使ったおにぎりを食べるシーン 弟が部隊に戻る時と同じ弁当 しかし見送りなどはない。 母がおにぎりを握るシーンがあるが、そこに込められた母の思いが母の手を伝いおにぎりに注がれているのがわかる。 そのおにぎりを食べながら見えてきた母の思いが、次第にシュウの心に届いて行く。 京都が、人が、すべてが消え失せる光景 やっと気づいた科学の狂気 転がるように下山するシュウ 聞こえてくるセツの声 何故セツはシュウを呼びに来たのだろう? 最後にシュウは誰かに英語で語りかける。 その英語は物語の途中にも挿入されている。 科学の言葉 あれは、アインシュタインだったのではないのか? 彼の理論を追いかけていたシュウは、科学そのものに憑りつかれてしまう。 シュウはアインシュタインに広島の現状について「こんな結果を予測しましたか?」と問いかける。 つまりこれが科学のしていることだと。 シュウの問いかけにアインシュタイン、または科学者の代表は「これは結果ではなく科学進歩の過程だ」という。 「破壊は美しい」 恐ろしい言葉 これはシュウがセツに話したきれいな緑色の光と呼応する。 ピカドンの光 そして「これはだれにも止められない。今までもこれからも続く」 「科学は人間を超えてゆく」 アレンジされたアインシュタインと科学の言葉だと思うが、その言葉には母の手から出る温かいエネルギーは一切感じない。 でも、それも人間たる所以で、一側面なのだろう。 最後に三人で一緒に海にいるシーンがあるが、あれは、もし戦争がなかったらの世界を表現したのだろう。 無邪気な子供 その子供たちが「早く結婚して子供をたくさん産んでお国に捧げたい」などという狂気の言葉に対する真逆の描写。 「そもそもこの戦争は何故始まったのか?」教授の言葉 エネルギー問題 だが、 実際エネルギー問題の解決で戦争がなくなることはない。 覇権が利権に変わり、今では企業が戦争に介入している。 この物語では科学と狂気をモチーフにしているが、資本主義も共産主義も狂気に違いない。 シュウにはアインシュタインの言葉に対する大いなる疑問がが浮かんでいる。 この疑問こそがこの作品の着地点だったのだろう。 善も悪もない。 それは確かにそうだ。 しかし科学はすぐに盲信する。 それは行き過ぎた資本主義や共産主義と同じ。 科学だけに特化して言えば、「母の手から出るエネルギーの謎を解き明かしなさい」と私は言いたい。 なかなか面白い着地点だった。

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R41

2.5可も無く不可も無く

2024年9月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

原爆を作る研究者の話し。先にアメリカに原爆を落とされ、自分達はこんな危険な物を作っているのか!という葛藤と、ウランの進化がどんな物か知りたい!という科学者の本能が描かれてます 柳楽さんと田中裕子さん、國村さんは凄く良かった!だけど山場が無くサラッと2時間過ぎた感じ

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椿