「いつまでも観てられる感じの父と娘2人のやりとりが心地良かった」オン・ザ・ロック つばささんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでも観てられる感じの父と娘2人のやりとりが心地良かった
90本目
ソフィアコッポラ監督の最新作。
ニューヨークで丁寧な暮らしを送っているローラは、新規事業で忙しい夫ディーンと美人アシスタントの関係に疑いを持ち始め、微妙な関係の父フィリックスとディーンの行動を追っていく。
ノリノリでスパイごっこを始める父に振り回されながらも疑いは確信に、変わることなく一線を超えてしまい…?
といったストーリー。
ローラの育児に追われる毎日やママ友との何気ない話し、目まぐるしく過ぎていく時間に翻弄され自分の時間が持てない様が緻密に描かれていて、そこに現れる自分の時間しか持っていないようなフリーダムな父との対比が良かった。
そんなビル・マーレイ扮する父フィリックスがとにかく良い。本当に良い。
プレイボーイで全ての女性に優しいがちょっとダメな金持ち道楽親父っていう割とありがちなキャラ設定でも、ビル・マーレイが演じるとめちゃくちゃ深みが出るんだなぁ。
あんな親父に将来なりたいとは思わないけど、なれたらきっと楽しい人生を送れそうだ。
ストーリー自体や結末なんかも別に目新しい物があるわけではないし、浮気もしてないんだろうことは早い段階でわかるんだけど、そんなことはどうでも良くて、いつまでも観てられる感じの父と娘2人のやりとりが心地良かったです。
「お前にはお前の冒険があるか」っていう最後のやりとり、めっちゃ良かったな。
あとはこの作品、本筋以外の何気ないシーンにも良いシーンが多い。
遅くなった誕生日のお祝いを夫と2人でする場面で、ケーキが出てきたと思ったら隣の席だったシーン。
良く見ると男性2人で誕生日を祝っているのが、多様性への配慮を自然に取り入れていて良かった。
美人アシスタントのフィオナも最終的に女性2人で過ごしていたのはそういうことだったのかな?考え過ぎかしら。
フィオナ役のジェシカヘンウィックは本当に美しいので、あんな人が夫の側に居たらそりゃあ心配になるよね。
あと個人的にかなり良かったのが、時間がないのに一方的に男の話を捲し立ててくるママ友。
このママ友、Giftedで先生役をやっていたジェニースレイトが演じているんだけどかなり良かった。
妻子持ちの男はさっさと諦めてクリスエヴァンスと幸せになってほしい。
(破局したけど)
あとは全ての画面がとにかくオシャレ!
これはやっぱりソフィアコッポラ監督のなせる技かな。
ウディアレンぽいと評しているコメントをいくつか見たけど、僕はそうは思わなかった。
どこか達観した風な登場人物達の会話劇をジャズで彩っているとウディアレンてわけでは無いと思う。
そんな感じでした。
理想的な家族でも心に余裕が無いと簡単に壊れかねないという教訓もありつつ、気楽に見られる良い映画でしたね。
部屋でお酒を飲みながら2回3回と観たい映画かな。