ウォーデン 消えた死刑囚のレビュー・感想・評価
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まっくろくろすけ出ておいで〜
※一部ネタバレあり。ネタバレ御免。
「ダニエル」と一緒に借りてきた本作。何が良いって、上映時間が短い(なんか、デジャヴ?)。
内容としては、イスラム革命前のイラン南部刑務所の立ち退きの真っ只中、死刑囚が消えた。どうやらまだ刑務所内にいるらしい。よし、探そう。という感じです。
良い所としては、主人公が刑務所長って所ですかね。こういう革命前とか革命時とかの映画だと、どっちかというと主人公は革命軍側で体制側は敵って構図の方が多いと思うんですよね。そういう所でいうと、主人公が刑務所長になると、仕事を懸命にこなそうとする仕事人な感じがしてくるんですよね。また体制側視点だけだから、革命側の真意・嘘がはっきり分からないってのも、体制側が正しさ、革命側が勝手さを担ってるような立場逆転の面白さがありましたね。
ただ、そこが面白いのは良いんですけど、それって社会派映画って側面だと、どうなんだ?ってのは思いますかね。
あと、単に弱い所もありますね。特に笑ったのは、結局死刑囚を見つけられないから、立ち退いたフリして刑務所から出てくるのを取り押さえようという、ミステリー的にはズッこい事をする所ですね。「なんて汚いやつ」とか言われてましたね。
で、実際出てきて、気づかれて隠れるんですけど、これラストのオチを考えると出てくる理由ないんですよね。これは「困ったなぁーw」ってなっちゃいましたね。
でも、結構楽しい映画だったと思います。上映時間も短いですし、サクッと観てみるのもアリだと思いますよ〜。
心の中の舞台劇‼️❓
ミステリーでは無いと思います。
刑務所長の良心と欲や様々な思いが交錯して、ある意味、ほのぼのした展開と結末です。
シンプルですが、所長や福祉士の女性など演技が素晴らしい。
とても印象に残る映画でした。
演劇のような映画が好きなら、是非。
極めて地味ですが、私は好きです。
宗教革命前の1966年。刑務所移転の際に死刑囚が失踪したことによる、署長の苦悩を描く物語。
イラン映画の鑑賞は3作目です。前2作は想像以上の良作だったので期待をしての鑑賞だったのですが・・・想像を大きく超える良作でした。
死刑囚の捜索がメインストーリーですが、署長の苦悩を描く人間ドラマです。
出世に狂喜乱舞し、失踪に焦り、そして死刑囚の人となりを知り苦悩を深めていきます。少女を問い詰めるシーン等は署長の焦りを現したシーンで、緊迫感のある印象的なシーンでした。
また、細かい演技が素晴らしかった。ちょっとした仕草、顔の表情、水溜まりを飛び越えるシーン等々、いかにもありそうでとても感心しました。
極めて地味な映画ですから賛否が出やすい作品だと思いますが、私は高く評価出来る作品だと感じました。
映画自体の話ではありませんが、イラン映画と宗教に感じた事。
この映画は、イスラム革命が行われる前のパフラヴィー朝時代の話で、今のイランからすれば世俗的な社会。だから登場した社会福祉士の女性は、ヒジャブすら巻いていません。(逆に、死刑囚の家族は巻いていた)
当時はの社会情勢からすればあり得ることなのでしょうが、それを戒律が厳しい現代の映画で表現出来るのは素晴らしいことだと思います。「イラン映画侮れず」です。
マヌケでほのぼのとした話
1967年のイラン、新空港建設のため刑務所を移設することになった。所長のヤヘド少佐は囚人たちを新しい刑務所へ移送する事になり、移送完了と思った時、1人の死刑囚が行方不明との報告が上がってきた。当時の状況から刑務所外への逃走はないと考え、刑務所内の捜索を始める、という話。
なんともマヌケな話だが、社会福祉士の女性カミリ(パリナズ・イザディアール)や死刑囚の妻や子供まで刑務所に入ったりしてほのぼの感も有った。
行方不明の死刑囚が実は無実だと分かった所長は粋な計らいをするが、あれで出世は大丈夫だったのかな?
カミリ役のパリナズ・イザディアールが美しかった。
面白いし、良かったし、好き。
この脚本、日本や英米じゃ、絶対に映画にならんだろうねぇ、なんて考え出すと、その時点で「見れて良かったよ」ってなります。
舞台演劇的な前半部分。寝落ちしそうになるくらい退屈です。ラスト。「ぇ。なんで、そこで唐突に心変わり?」で、頭の中は?の嵐が吹き荒れます。
でもでもでも。
何か良いんですよねー。画かねぇ。靴墨男が姿を見せない演出のクサさが良いんかねぇ。小ネタの心理劇にしちゃ手抜きの無い演出だからかねぇ。今時の、どの国とも違うタッチが珍しいから?未舗装道路の殺風景が逆に郷愁を煽る?
イランと言えば、アミール・ナデリ監督しか思い浮かばない素人ですが、「黒沢の子孫」の匂いだけは、確実にする。
良かった。
映画として好き。
【"自由を求めての、生死を掛けた隠れんぼ。"そして、刑務所長の懊悩と、彼が血の通った人間として、決断した事。】
■感想<Caution! 内容に触れています>
ー ヤヘド刑務所長(ナヴィッド・モハマドザデー)が治める刑務所は、新しい空港建設のため立ち退くことになる。そして、収容されていた囚人たちは、別の刑務所に護送されることになった。だが、別の収容所に移された囚人の数が1名足りない。何度数えても足りない・・。ー
・ヤヘド刑務所長は、最初は何の躊躇いもなく、逃亡した"死刑囚アフマドを追っていたのは、明白である。勿論、自らの出世の妨げとなるからである。
ー アフマドが何故死刑囚になったかは、劇中断片的に語られる。真相は分からない・・。ー
・だが、アフマドの無実を訴える女性社会福祉士(パリナーズ・イザヤドヤール)の言葉や、アフマドの妻と幼き娘の姿を見て、ヤヘド刑務所長は、徐々にアフマドの罪に疑念を抱いていく・・。
- アフマドの姿を一度だけ、遠方から映しただけで、劇中に描かない手法が秀逸である。
又、彼がカエルを秘かに飼っていた事からも、人間性が伺われる気がする・・。
そして、自らの立身出世が目の前にぶら下がっていながら、沸き上がる疑念を振り払う事が出来ないアフマドのイラつく姿。-
・そして、唯一のアフマドの犯罪の目撃者とされていた老人が”夢の中で業火に焼かれる・・。眠れない・・”と言って語った真実。
・それでも、自分の出世のためにヤヘドは、或る策をアフマドに仕掛けるが・・。
<移送される絞首台に隠れていたアフマドを追い詰めたヤヘド刑務所長、女性社会福祉士、アフマドの妻と娘の表情を次々に切り取ったアングル及び、最後まで表情が見えないアフマドの切羽詰まった呼吸音・・。
そして、隠れているのがアフマドであると確認したヤヘド刑務所長が取った”正しき人間としての”行動。
それまでの表情とは一変するアフマドの妻と娘、女性社会福祉士の表情の変化が、実に印象的である作品。
<2021年4月11日 刈谷日劇にて鑑賞>
去れないアナタ
ある種の“閉じ込め状況”を描いたサスペンスと言えるだろう。
といっても、いつでも自由に「外には出る」ことはできる。
しかし、「去ることができない」。出世がかかっているからだ。
そこが面白い。
逃亡犯が“黒い靴墨”を塗っていた理由が、ラストでようやく理解できる展開も良い。
こんな単純なストーリーで、1本の映画にしてしまうのは楽しい。
結末はイマイチだが、映画「ジャスト6.5」よりも、自分はこちらがお勧めである。
ラストの〝唐突な〟人情劇にポカーン
取り壊しになる刑務所から囚人を移送中に、ある死刑囚が行方不明に…
よくあるアクション作品であれば、この死刑囚を主人公に、非道な刑務所長や看守と戦いながら逃げのびるというストーリーになるわけだけど、この作品の面白いところは、最後までこの死刑囚の顔も姿さえも拝むことが出来ない…
今までにない斬新な内容で、非常に楽しめたのだけど、最後の人情劇はね…
刑務所長の心の葛藤という点がクローズアップされていないせいか、かなり〝唐突な〟方向転換という印象かな…
良くできた作品だと思う。
肝心の死刑囚は全く顔を見せず、それを追いかける所長目線で話は進む。
自分の出世をとるか?
自分の良心をとるか?
これは万国共通究極の選択です。
しかも人命がかかっていれば事は決して軽くなく・・
あの社会福祉士の女性は少しやり過ぎかなと思うけど、サスペンス度は高く、落ちもまあまあだと個人的には思います。
イランの社会背景を知るともっと楽しめたかな・・・
邦画には無い何か
イラン映画初鑑賞。
タイトルに似合わず静かな映画でした。単純な鬼ごっこでしたが、それなりにスリルもあり良かったです。ラストに大きい裏切りがあったらよかったなと思います。
全体的にコミカルな部分が多くかわいらしかったです。
鑑賞日 2/8
鑑賞時間 13:50〜15:27
座席 自由
よくできたお話、けどラストは評価分かれるかなー?
イラン映画の「静」の素晴らしさを味わいました。
まず、お話がとっても面白いです。
刑務所の移転に伴う移動・移送時に死刑囚が行方不明。
それを幹にしたヒューマンドラマでした。
サスペンス色はそんなに多くはないですし、脱出物を主体とした物語でもありません。
時にコミカルに、とても人間臭い所長が話を回していきます。
この所長のキャラクターがとっても良いです。演者さんも良いですね。
実直な組織人、出世で小躍りする小物感、女性に好かれたいおじさん感・・・どれも見事、絶妙です。
この所長のキャラクターあっての本作ですね。
どこにでもいそうなおじさんが、仕事の責任、出世、人間の尊厳、不安定な司法の結果の狭間で葛藤しながら必死に目の前の出来事に対峙していく様は、それがイランの方々ひいては、人間のある物に対する葛藤を表しているのではないかなぁ?と思いました。
世界各国で議論が絶えない死刑制度やイランの不安定な司法制度へのアンチテーゼではないでしょうか?
しかし作風はどこかのどかな感じがあり、淡々と進んでいくのですね。それが、サスペンス色を弱め、見やすい社会派ドラマに仕上げられているのかな?
オープニングのショット、そして種明かしのラスト。そこには本作のキーとなるものが登場します。
その演出こそが本作の中でのこの「キー」を際立ててますし、賛否分かれる気がしますが、最後の判断にこそ制作サイドの願いのようなものを感じました。
イランという国の内情を僕は知りません。映画で描かれることしか知りません。ですから全くもって勘違いしているのかもしれませんが、本作と併せて「ジャスト6.5」を鑑賞し受けた印象は、イランの司法側の乱暴な部分の多さです。これが事実なら、目も当てられないと思いますし、本作の制作サイドの願いもわかるような気がします。
どの国も人間という生き物がいる限り歪な世界ができるのですね。秀作です。
大きな裏切りはなかったかな
刑務所の移転により囚人を護送する際に1人の囚人を見失う。主人公の刑務所長はこの後昇進を控えており、それ以前に逃したとなれば大きな責任問題になる為必死になって探す。この作品の面白いところは外に逃亡したわけではなく廃墟となる刑務所内に逃げた囚人が隠れており刑務所内を徹底的に探すため、序盤は非常に緊張感を楽しめる。
中盤あたりからこの逃げた囚人は冤罪で刑務所に入れられ、そして死刑を控える囚人という事が説明される。
この辺りから頻繁に刑務所を出入りする彼の弁護士のような女性(作品内では福祉士と説明)が手助けしているなと読めてしまう。
刑務所内のどこかに隠れておりそれを刑務官たちが探すいわばかくれんぼになるわけだが、序盤はその見つけ出す行為に緊張感を楽しむ事はできるのだが、探していくに連れて決してなにか巧妙な導きみたいな展開があるわけではなく、ここにいるのか??→いませんでした。みたいな展開が続く為途中で飽きを感じてしまう。
また隠れている囚人は冤罪だという説明はあるもののその詳細は描かれていない。
主人公の所長もプリズンブレイクのベリックの様に人間的に欠落している部分があるわけでもなく職務を全うしているだけ。
その為冤罪だとはいえ女弁護士が必死に囚人を逃がそうとする展開に魅力を感じない。
そんな魅力ない描写が後半は続き最後は所長が見つけ出すことはできたが逃す決断をして作品は終わる。
逃がそうとする展開に魅力を感られなかった以上最後のオチはどうしても不満は残ってしまった。
見慣れないイラン映画であり当初は少し身構えて見ていたが思ったよりは見やすく、また序盤の緊張感は楽しかった為最低限は楽しめる作品ではあったといったところか。最後に進むにつれて大きな裏切りがなかったのは残念ではあった。
気づいたか!? 良心!!
刑務所引っ越しによる囚人移送をしたところ、1人足りないことに気づき、舞い込んできた出世話がパァになると焦った所長が死に物狂いでその死刑囚を探す物語。
ミステリー映画って意外と少ないので、とても楽しみにしていた作品。
鳥肌の立つような伏線回収や思いもよらないどんでん返しといったミステリーの醍醐味が…まぁあったと言えばあったけどイマイチパンチに欠けるというか、鑑賞直後はそんな感想。
しかし、よくよく思い起こせばなかなか深い作品だったかも。
処刑台を作ることを拒む老囚人。なんてことないシーンに見えて、よく考えれば…そういうことね。
ポスタービジュアル然り、未明の青白い雰囲気はこれから起こる不穏な出来事の前触れといった感じでグッド。ずっとこの感じで良いのに(笑)
眉つばや喜びダンスは分かり易いけど…自力で転がり出てきたシーンは笑うとこ??(実は本作最大の謎シーンだと思ってます)
その他、真実を知っている(信じている?)人達と所長のやりとり。からの、猪突猛進に見えて、実は心はグラングランに揺れていたのか!?ラストは、そう来ましたか…。
ライバル作品(⁉)のジャスト6.5には敵わないけど、2度目を見るならこちらの方が面白いかも。
ミステリー好きでありながら、一発でちゃんと理解できることは殆ど無いので…(笑)
オチを知った状態でもう一度観たい作品だった。
…という締めをよくするのだが、もう一度同じ作品を観る時間があったら、新しく別の作品を見てしまう為、いつも実現できないワタクシだ。
脚本が見事です。
刑務所が舞台でよくある脱獄物と思いきやミステリー仕立ての思い切った娯楽作です。
とにかく脚本が見事です。空港建設のために刑務所を引っ越す最終日、昇進目前の所長が突然行方不明になった一人の死刑囚を必死になって探しまくるという意外なストーリーです。設定が面白すぎます。
観客は本当に脱獄したのか身を隠しているだけなのかが気になって最後まで囚人の行方を追います。
刑務所長の次々と起きるシリアスなトラブルに必死に対応。悲壮感と人間味も感じる演技が見事でした。
イラン映画もこれからチェックが必要と思いました。
メジャーな俳優も出演していないし都内単館ロードショーで地味な公開ですが見る価値のある作品です。ぜひご覧ください。
刑務所長の災難
1966年のイランで、刑務所移設に伴い囚人を832人を移送させたところ1人足りず巻き起こる話。
バスに乗せた人数と降りた人数が一致していることから、移送前の所内にいる筈となり、赤顔と呼ばれるアフマド捜しが始まって行く。
とは言っても、アフマドを捜すことそのものがどうのということでは無く、アフマドの罪と、本当のところを知ることになる少佐の葛藤や機微をみせて行く物語。
当時のイランの内政事情を知らないけれど、刑務所長にそんなプレッシャーかけたって…そんな無責任な、言ったもん勝ちじゃんねぇ。
キレイにまとめた感じになっているけれど、主人公である所長視点で言ったら何も終わって無くて、ちょっと強引に感じた。
サラリーマン署長
イラン映画と言うこと、刑務所引越しの際に死刑囚が居なくなるという題材が珍しい。しかも脱獄ではなく、取り壊される予定の刑務所に隠れている。やっぱり処刑台の下にいた。初めは冷酷な署長だと見ていましたが、昇進の報告に踊ってしまったり、美女が来る前に唾で眉毛をなぞり、整えたり、人間らしい面が垣間見え、見つからず、イライラしたり、疲れたりする姿に段々応援したくなりました。見つからなかったら昇進どころか、降格もあり得るサラリーマン署長の奮闘記。この女性誰だろうと思っていたら、社会福祉士ってかなり、後になって紹介が。彼女が動き出すあたりから、もっと面白くなるかと思っていたら、意外と分かりやすい靴墨の後を残す失態により、すぐ彼女が脱獄犯を応援する立場とわかってしまう。泣いたってだめだって。ラストは脱獄犯を見なかったふりで助けるって、やっぱり良いところある署長!男だね。この先、昇進どうなっちゃうのだろう。
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