ノマドランドのレビュー・感想・評価
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大アマゾンの半無宿人
フランシス・マクドーマンドは夫君ジョエル・コーエンの「ブラッド・シンプル」でデビューして以来36年の歳月を経て、まるで哲学者のような相貌を刻みつけた。
主人公が流浪の日々の中で身につけた孤独と克己心は手を差し伸べられた誘いを一旦は拒絶するものの、やはり人の温もりを求めてしまう…だがそこに安住することもできない。デイヴと息子の連弾を見つめるまなざしがせつない。
アメリカの果てしなく荒野が続く風景には目を見張る。このような土地をキャンピングカーで移動するのと、日本の街並みを通過するのでは相当事情が異なるだろう。(劇中でもあったが)パンクや故障は生命の危機に直結する。他方日本ではあの野趣は望むべくもなく、駐車するにもコンビニや道の駅などだいぶ情けないことになりそうだ。
物語の背景となった金融危機がサブプライムローンの破綻に端を発していることを考えると、アメリカの住宅事情の厳しさが窺い知れる。キャンピングカーとは少し違うけれど、(「ミリオンダラー・ベイビー」のマギーの家族のような)トレーラーハウスで暮らす人たちも全米でおよそ2000万人に及ぶという。
p.s.“nomad”は逆から読むと“damon”…。
とてもいい映画
緊急事態宣言で映画館が休業してしまったので観たくても観られなかったノマドランド観てきた。とてもいい映画だった。年齢、独り身かそうでないか、社会的立場によって捉え方がかわる映画かもしれない。不惑を過ぎた自分にとっては、とても心に刺さった。
人生は老いてからの方が長く、辛い。老いたとき、何を糧に生きていくのかも考えさせられた。
ファーンは真面目に、正直に生きてきたが、ふとしたきっかけで車上生活に陥る。安定した仕事はなく、ノマド生活を続けざるをえない。仲間との出会いもあるが、辛い現実の中、過去を何度も振り返るファーンが切ない。
物語は終盤で転換する。ファーンの選択は、自身の歩んできた人生の肯定だろう。その誇りに心打たれる。
アメリカの荒野の風景も魅力的だ。それは風光明媚なものではなく、人間が住むには適さない荒野だ。厳しいが、神々しく美しい。ファーンの人生の対比と感じた。
新しい価値観
孤独、すなわち自由。幸せだと感じられれば、それでいい。
自分ごとのような気持ちで観ました。でもアメリカ人と日本人では死生観が違うのか...いや老荘思想や仏教的な考えとの違いか?など、少し消化しきれず。
音楽が暗く悲しい... これってそんな不幸なことだろうか?なぜこうも不幸感たっぷりに描くのか、すごく不思議でした。日本は昔から年取ったら隠居or出家とか、世俗の欲を脱ぎ捨て世間から引っ込んで庵に住まう、のがむしろ人間性の仕上げみたいな。清廉になっていくのを良しとするところがあったのでは。
余計なものは段々いらなくなります。家も、持ったまま死ねないしね。人付き合いも減らして(コロナ禍で少し早まりました)。執着を手放し、身軽に、いつ死んでも後悔しないようにしておく。庵がキャンピングカーになっただけ。持ち物はそこに収まるくらいのもので、むしろ単純作業のような仕事があるのは、幸福。その日その日に完結する仕事は、心身ともに健康的で、シンプルに社会のお役に立ち、お金まで頂ける。ちょうどいい。動かずご馳走食べて、食べた分燃やすためジム通いするより、真っ当と思います。マネーゲームの世界とは真逆だけれど。重い責任や名誉や駆け引き、人脈、人間関係、承認欲求。そういうのは若い人に譲っていいのでは。
先日TVでドラマ「北の国から」をシリーズ通して観ましたが、なぜか通じるものを感じてしまった。でもこちらの主人公:黒板五郎は周りからどんな目で見られても、幸せそう。(脳内でノマドランドのバックに「北の国から」の曲をかけてみたら、主人公ファーンもいい表情になった)「北の国から」の最終章テーマは遺言。
人生は旅と同じ。出会いと別れ。諸行無常。でも必ず終わりがある。去る時は一人。皆、同じ。だから悔いのないよう最終章を生きるのです。
たしかに、ファーンは五郎さんと違い移動生活者で女性。スタンガンは要る。自衛は必要。どうせ死ぬといっても、殺されたくはないですよね。エンディングを楽しむには、経済的自立の上に精神的自立も必要でしょう。最愛の伴侶を亡くして孤立感がまだ癒えない主人公は、精神的には不安でまだ揺れながらノマドをしている。
けれど見方を変えれば、主人公は配偶者に恵まれ、これまで愛のある人生だった。幸せな子供時代。お姉さんからも、愛されている、タイプこそ違うけれど。旅する先々でも友情に恵まれる。
愛はお金では買えない。
お金教の信者みたくなってしまった人たちに、なんかモノ申したいけれど、それ言ったら負け犬の遠吠えに聞こえてしまうよねって、もしや主人公が一番自己卑下してる?って気配が漂っており...まだ精神的自立のq途中なのかもしれない。
でもそれでいいのだと思います。誰かの評価より、自分の気持ちに正直に。ゆっくりそうなっていけば。
車ひとつで自由気ままに放浪する生活
ハウスレスとは
印象的だったのはファーンが女の子に「ホームレスになったの?」という質問に対しての返答。
「ホームレスじゃなくて、ハウスレスよ」
この"ハウスレス”、初めて聞いた言葉だ。
上手いこと言っているようだけれど、強がりなんかではなく、車の中では料理だってできるし、トイレやベッドもある。
塗装して、インパクトでネジを打ち込んでカスタマイズ。
あれらが家ではないなんて言わせない。
それに帰る場所があるという事だけではなく、前を見て生きている。
夢や目的が彼女らにはある。それが決定的な違いだと思う。
ノマドは英語で「遊牧民」という意味。
自らなった人もいれば、そうではない人、ボブが言っていたように野に放たれた、まさに「放牧民」もいる。
どんな経緯にせよ彼女らは助け合いが不可欠で、そのコミュニティーというのが本来人が1番大切にしないといけないモノなのではないかとしみじみ…
絆を育んだ彼女らの関係って何て言えばいいんですかね?
家族も友人も超越した関係ですよね。
1時間40分、ノマドを社会問題として扱うでもなく、逆に美化することもなく、1つの生き方として描くことに一貫していて、これら全てがリアルなんだと感じた。
ノマドは砂漠に咲くサボテンのように逞ましい。
凄い、凄いけど攻めすぎ…
映像の美しさがこの映画の非常に重要な要素だと感じます。特に印象的なのは日の出、日の入りの荒野の映像でした。とことんドライなストーリーをとんでもなく美しい映像で観客に許容させる…様な感じでしょうか。
ドライなストーリーとは、状況を小出しで説明して心情に関わる部分は絶対に言葉にされない状況を指します。ほぼ起承転結はなく、最終的に観客が彼女を理解して終わるのみだと感じます。映像の美しさは前述の通りではありますが、演技の部分も当然素晴らしかったです。
アメリカの状況への憂いという社会的な側面と、あくまでフィクションとして描かれる主人公の突き詰めた孤独と心情、映像のクオリティから溢れる監督のアメリカへの深い愛。これらの強く要素を感じました。良い映画だったと思います。
けども、無条件に面白い映画だとは言えないレベルの高すぎる映画でした。
空とノマドの表情の美しさ!
ただただ考えさせられました
孤独を抱えて生きる
さよならって言わないのはなんかイイよね
遊牧という仕事
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