劇場公開日 2021年3月26日

「「答えは、なかった」」ノマドランド R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「答えは、なかった」

2024年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

アメリカの純文学作品
起承転結はないに等しい。
取捨選択
何を選ぶのかは自由
選んだのは、そうしたかったからではなく、消去法だったのだろう。
そもそも何が正解なのかはわからない。
でも、「そうじゃないと思う」からそうしただけ。
ノマド 家のない人のこと
石膏採掘場の倒産によってその地を離れざるを得なかった。
主人公ファンの夫はガンで死んだ。
たったひとりのままバンを家代わりにして町を出た。
短期雇用のアマゾン
似たような仲間たちが大勢いた。
彼らが心のよりどころにしている考え方は、昔のヒッピーのようにカウンターカルチャー的発想を広げている人物。
その対象が「お金」の奴隷になっている現代人
RTRという思想 その創始者
大勢で集会などをしているときは楽しいが、会が解散してしまった後の寂しさ。
バイトを転々としながらの生活
友人リンダメイの告白 余命7か月 彼女の想い出話
行く当てもない生活は、人生そのものを表現しているのだろうか。
今ではもうやるべきことさえもないし、誰からも与えらえない。
同時に、「誰にも必要とされない」ことに気づいていく。
そんなファンにも助け船がやってくる。
同じノマドのデイブ
息子が一緒に暮らそうと呼び戻しにきた。
デイブはファンに「一緒に来ないか」と誘う。
その直前、デイブが割った大切な皿。
形あるものはいつか崩れる。
現状を見つめ直すきっかけとなる出来事は、ある。
その背後にある彼女自身の大きな抵抗感
車の修理にお金が必要になり、姉に借りる。
おそらくファンは、ものの見方と考え方を変更しなさいと言われているのだろう。
しかし彼女は頑なにそれを拒否し続けた。
集まった親戚の些細な言葉に反応するファン。
「私をそんな目で見ていたのね!」
姉はファンをなだめる。
「あなたは誰よりも勇敢で正直」
ファンは思い切ったようにデイブを訪ねた。
それは、姉たちの姿を見て、屋根のある生活に戻る選択をしたデイブのことを知りたいと思ったからだろう。
温かい家と生活 息子の赤ちゃん 親子で弾くピアノ 彼の生活
ファンは「いつまでもここにいてほしい」というデイブの申し出を受けることはできなかった。
この作品の中の最も大きなシーンだろう。
ファンは用意された大きなベッドでは寝ずに、自分の車の中で寝る。
早朝見つめる彼の家。
そこにファンの姿を重ねることはできなかったのだろう。
彼女は去った。
雨 海岸 荒れる海 横殴りの風
彼女の選択が表現されている。
彼女の選択は間違いだったのだろうか?
やがて再びアマゾンの短期雇用が開始された。
しかしそこにリンダメイはいない。
そこを去り。再びRTRへ
リンダメイを偲ぶ。
最後にRTRの創始者はファン言う。
「5年前に息子が自殺した。どうして息子のいない世界で生きているのか? 答えはなかった」
彼は息子の死に苦悩している。
同時にすべての高齢のノマドもまた、人生に打ちひしがれ立ち直れずにいる。
「それでいいんだ」
この生き方で一番好きなのは、お別れがないことだ。一度もさようならを言ったことがない。
「またいつか」
そして本当にまた会える。
「私はいつかこの道の先で息子に再開できると信じている」
「君もいつか夫に会える。そして共に生きた時間を思い出すことができる」
ファンは石膏工場跡地を訪ねる。
当時の事務所と社宅
彼女の頭にあるのは夫と過ごした日々の想い出だろう。
彼女は持ち物を処分し、今度は車で北上する。
また新しい場所へと向かった。
冬に北上。
限界の場所で限界の生活をすることで彼女は生きていることを感じるのだろうか。
そこまで行けば夫に会えると思ったのだろうか?
おそらく答えなどないのだ。
この答えなどないことを探し続けているのが人生なのかもしれない。
この作品はそんな「無意味」なことと「人生」を表現しているのかもしれない。

R41
みかずきさんのコメント
2024年8月28日

沢山の共感ありがとうございます。
おかげさまで100共感以上のレビュー件数が10件に到達しました。
R41さん始め皆さんから多くの共感を頂いた結果だと感謝致します。
今後とも宜しくお願いします。

本作、大自然のなかで毎日を懸命に生きるノマド達の生き方は、
過酷ですが、生きることの原点であると感じました。惹かれるものを感じました。

ー以上ー

みかずき
琥珀糖さんのコメント
2024年8月28日

ごめんなさい。うまく伝わらなかったみたいです。

原作者はアメリカ人の女性ジャーナリストの、
ジェシカブルーダーです。ノンフィクションです。
原作者のインタビューが映画.comに特集として載っていました。
私もここに加入以前のレビューなので今知りました。
ノマドランドの下に青いバーがあり、
特集、インタビュー、評論、フォトギャラリーと横並びしてます。
是非是非読んでください。
映画が違うものに思えますから、
(資料とか映画によっては、社会派作品なら、した方が良いですよ)

琥珀糖
琥珀糖さんのコメント
2024年8月28日

コメント・共感ありがとうございます。

☆日本映画の影響を感じる点ですね。
監督のクロエ・ジャオは中国人で、46歳の女性です。
日本文化が好きで「slam dunk」を愛読書に上げてるそうです。
☆時代背景がリーマンショックの頃。
家を失う人が多かったし、夫の働いていた工場は潰れて亡くなった。
その町は郵便番号もない廃れた町になった。
と言うことは、スーパーも病院も公共施設も
役所も無くなったんじゃないかな?
☆アメリカは北欧の国と違って福祉国家ではないですから、
ドイツや日本のように介護保険制度も多分ないでしょう。
☆アメリカ人の独立心と広大な国土そして助け合いの互助精神。
「ノマド」は一つの、流行と言うと可笑しいけれど、
家族に頼らず1箇所に定住せずに気ままに生きる。
ファンに子供がいないのも、大きいかもしれませんね。
妹の家に行き、「ここに住まない?」的な、
提案をされてもファンには耐えられない。
やはり独立心と行動力が狩猟民族には、あるのかもしれないですね。
「夜明けまでバス停で」の主人公と比較したら、失礼かもしれないですけれど、やはり似てると言うか、「他人に頼らない」けれど
「ノマド」の人には頼る。
日本人の病院や介護施設で、長らえる生き方とは違うのでしょうね。
☆答えはない。
そうだと思います。
ファンの選択した人生ですね。

琥珀糖
talismanさんのコメント
2024年8月28日

レビューを拝読して、映画の流れや細部や会話を思い出しました。いい映画だなと思ったのに時間がたつと結構忘れている部分が多くがっかりします。何度も見なくては脳裏に刻み込まれない、哀しい私の頭・・・と思いました

talisman