劇場公開日 2021年3月26日

「現代の西部劇であり「イージーライダー」の続編でもあり」ノマドランド 青空ぷらすさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現代の西部劇であり「イージーライダー」の続編でもあり

2021年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

今年の冬に公開予定のマーベル映画「エターナルズ」の監督作品ということ、またアカデミー監督賞作品でもあるということで興味を持ちAmazonレンタルで視聴。「ザ・ライダー」は未見。

今年3月公開ということで、ある程度の内容や事情は把握して見たんだけど、最初に思ったのは「映画館で観るべきだった」という後悔。
物語というよりはセミドキュメント的。
登場人物も主人公のファーンを演じるフランシス・マクドーマンドとファーンに、思いを寄せるデイブを演じるデヴィッド・ストラザーン以外は本当のノマドの人たちが登場する本作は、言葉や物語よりも映像で語るタイプの作品であり、彼ら、彼女らの後ろに映る雄大な自然もまた重要なファクターで、ぶっちゃけ36インチテレビの画面では本作の魅力がかなり目減りするのは間違いない。

本作に登場するノマドの人たちは総じて高齢者であり、日本で言えば団塊の世代。
つまり、美しい理想の世界と自由を求めたヒッピー(フラワーチルドレン)世代なんじゃないかと思う。
しかしながら、夢破れて社会の一部に収まった彼ら彼女らが、老年を迎えた今、再び社会から放り出され幌馬車のようなRV車で仕事をしながら国中を放浪するとは、何とも皮肉な話だと思わずにいられないし、僕くらいの年齢になるとそれは近い未来の自分の姿かもしれないと思ってしまう。他人事だとは割り切れない。
なので劇中、自由を謳歌するノマドたちの裏に横たわる「自己責任」という名の不安に、どうしても目が行ってしまうんだよね。
原作は未読だけど、内容的にはこうしたノマドを安く使って搾取するアメリカの大企業に対して問題提起をしているノンフィクションだと聞いているけど、本作はそんな原作とは趣が違って、ファーンの目を通して見たノマドの人たちの誇り高き暮らしぶりを、壮大な自然と共に(その厳しさも含め)抒情的に描いているように見えた。

青空ぷらす