劇場公開日 2021年3月26日

ノマドランドのレビュー・感想・評価

全500件中、1~20件目を表示

4.0不可視な存在のさらに不可視な存在

2024年4月19日
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鑑賞方法:映画館

アカデミー賞に多数ノミネートということで鑑賞。

女性のハウスレス(ホームレス)で高齢労働者といった周辺化される人々の中でもさらに周辺化される人を主人公にすることと資本主義経済の限界を描いたのが受けたのだろう。
ただ実際のノマドをキャスティングしてたなんてクレジットタイトルみないと分からなかったし(それだけ実際のノマドが物語に溶け込んでた。すごい)、風景もすごい美しかった。音楽の付け方もおしゃれだったな。
さらに最近注目されるギフトエコノミー(フリーマーケット)の描写もよかったな。これに資本主義経済を突破する契機があると思う。

またノマドをただ没落した人々と描くのではなく、生き生き描いているのもいいと思ったけど、それだけでいいんかな。
Amazonや工業化する農業、非正規雇用化する専門職(教師が非正規化していいのかな)、エッセンシャルワーク(清掃業)の非正規化つまり軽視で構成される社会とその社会で快適な生活を送る私たちに批判を向けなくていいのかな。まあそれは私が考えるべき問題だと思うが。

あと気になったのが主人公ファーンがノマドになる理由。故郷の喪失、夫との死別に伴う感情は簡単に理解もできないし共感もできないと思う。
ただ実家はあるし、姉は健在で仲は悪くない。好意をもってくれる人もいる。
そうするとウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』のチャンを思い出す。
チャンは香港出身であるが、旅に出てブエノスアイレスに行き着く。彼が旅できるのはいたって簡単だ。彼には香港にいつでも帰れる場所があるのだ。
ファーンもそうだと思ってる。本当に困ったらいつでも姉のところにいける。実際お金を借りているし。
そうなると本作のノマドは、資本主義経済に疲れたから自由に生きる人々、ただしもし困り事があればいつでも帰れる場所がある人々になってしまってる。
それはなんかノマドを分断している気がする。私たちが目を向けないといけないのは映画によって不可視化されるノマドな気がする。
ここらへんは、原作も読まないといけない気がする。

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まぬままおま

4.0ファーンの横顔

2024年4月18日
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鑑賞方法:VOD

ファーンの心残りが記憶に変わるまでの旅だと思った。居場所が消されてなお、夜空の下、岩と岩の間、せせらぎの中、人間の領域、地上の全てを住処とする彼女のしなやかさ。人を求め、人との会話を自身の居場所にしてしまう人懐っこさと柔らかさ。ファーンは水のような人だとも思った。いろいろな感想が次から次に出てきた。それらすべてをかみしめながら、でも、ファーンの横顔をずっと見ていたかった、と一番強く思った。
肉は無く皮膚はたるみ、深い皺がはしる半月のような横顔。実際、横顔が多かっとは思わない。けれど、夜明け前や夜になりかけの紫色の世界をうつむき加減に歩き、おんぼろ車だけど「ここに住んでいる」と真剣に訴え、フィルムを覗き帰れない時間をじっと見る。岩と岩の間を楽し気にさまよい、かつての家のキッチンに立ち、運転席でハンドルを握る。印象に残っているのは、いろんな表情を乗せる、灰色の半月のようなファーンの横顔ばかり。
それはきっと、横顔は隣に立たないと見れない顔だからかと思う。友人や親しい人にしか許されない「すぐ隣」というポジション。そこに立てた気になるから、ファーンの横顔が特別なものとして印象に残っているんだと思う。
彼女のこの旅はある意味で、住んでいた街が消されて、家族との思い出も友人たちも街への愛着も心に重く残したまま旅に出ざるを得なかったファーンが、そのわだかまりと喪失感を、消えやしないけど思い出としてしまい込むまでの、記憶として消化するまでの時間だと思う。彼女がスクリーンに横顔を見せるたび、観客である私たちは「いち友人」として隣に立って旅をしている気分になる。だから、彼女の横顔をずっと見ていたい。つまり、一緒に旅を続けたかった、と思うのだ。

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消々

4.0ホームレスじゃないわ。ハウスレスなの

2024年4月9日
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鑑賞方法:映画館

これぞロードムービー。
家を失い、夫を失いキャンピングカーで季節労働をしながら生きるファーン。美しくて過酷なアメリカの大自然をめぐる旅路(都会はキャンプしにくいからね)とその道すがら出会う「ノマド」の人たちが辿った人生の旅路。
どこから来たのかよりもどこへ行くのか。
身軽でいいわね、という一言にファーンの表情が硬くなる。身軽なのは物だけ。
車に積めなかったものは心に重く詰めこまれているに違いない。
フランシスマクドーマンドの自然な演技がノマドの人たちと溶け込んでいて、ドキュメンタリーのような仕上がり。
大きなスクリーンでご覧になることをおすすめいたします。

やはり死に方を考えるということは生き方を考えるということなんやな。
リンダメイはどこまで行けたのかな。

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イズボペ

2.5「独りよがり」に見えるノマド生活。

2023年11月23日
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すっかん

3.5厳しくとも、矜持を持って凛と生きる

2021年5月30日
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鑑賞方法:映画館

アメリカも日本も高齢者が子供を頼らず、1人で生きていくのは厳しい。年金だけではやっていけないから。 離婚や死別でさらに大変な経済状況の人も多い。高齢でも働かないといけない。
そんな人たちの中で、少しでも経済コストを下げるために家を捨て「ノマド(≒車上生活)」という生き方を選択する人たちがいる。その人達をとりあげた映画。

しかし高齢者にはトイレ掃除や工場勤務や採掘場しかないのか。。ないんだよな。
でもこの映画の老人たちは悲壮感なく、明るく働いていたのが印象的だった。時にはトイレ掃除中に我慢できない男性が入ってきたりしてムッとすることはあるけれど、総じて仲間と声を掛け合って明るく前向きに汗を流していた。「そんな仕事」と思った自分が恥ずかしかった。 気にしてない。まったく気にしてない。強い。

ソーシャルワーカーが「年金を申請すれば?」と奨めても「働きたいの。」と毅然と言い放つ。
そう、重要なのは経済上の理由からだけで選択しているのではないということ。主役のファーンは姉のところなど身を寄せれるところもある。なのになぜこの厳しい生活を選択するのか?

ファーンの姉が言う。
「あなたは変わり者と周りは言うがそうではない。単に心の声に正直で勇敢なのだ。羨ましかった。」
金や安定のために自分の本音を犠牲にしたくない。心の声に正直に生きていきたい。暖かい家と温かい餌のために我慢して檻の中で汲々として生きるのではなく、厳しいけれども矜持をもって狼のように自由に生きていきたいという信念がある。
この矜持はファーンだけでなく、ノマドの高齢者に共通してみられた。素直にカッコいい。

台詞でみせる映画じゃないが、所々に刺さる台詞があった。うろ覚えだが備忘録代わりに掲載する。
・ホームレスじゃない。ハウスレスよ。(ファーン)
・若いころは馬車馬のように働いて、齢をとったら捨てられる。(ノマドライフの指南者ボブ)
・年金が550ドルしかない。どうやって年金だけでやっていけるの?(ノマドの女性)
・夫は定年を楽しみに働いていたのに直前にガンになり亡くなった。尽くしてきた会社も冷酷な対応だった。だから今を生きると決めた。(ノマドの女性)
・どんな美しいものも、いつかは衰える。
・たくさんの美しいものを見てきた。この瞬間に死ねたら、幸せ。(スワンキー)
・この生き方が好きなのは、最後のさよならがないからだ。いつも“また路上で会おう”だ。(ボブ)

ファーン役のマクドーマンドはなんというか女性なんだけれど「かっこよい。」
スタイルがよく、また着こなしもいい。おしゃれだ。佇まいで魅せれる女優だ。
(ちょっとウィルアム・デフォーに似ている。。)


途中眠気を感じた。台詞の少ないロードムービーで、且つ事件らしい事件も起きないし、全編に心地よい音楽と素晴らしい風景が流れているからうたた寝するには申し分ない。ただ映画としてはあまり褒めれることではないので0.5 を差し引いた。

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momokichi

4.0年老いたノマド達の矜持ある孤独

2021年3月31日
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鑑賞方法:映画館

 アメリカの広大な自然の中、季節労働をしてはバンで移動しながら暮らす高齢のノマド達を、静謐なタッチで描く作品。
 主要キャストは、F・マクドーマンドとD・ストラザーン以外は俳優ではなく、本当のノマド達だ。彼らが雑音としての素人っぽさを全く感じさせず、マクドーマンドに引けを取らない存在感でしっかり物語の骨組みになっていることに驚いた。
 一方で、物語全体にドキュメンタリーと見まごう雰囲気が漂っていて、不思議な感覚になった。役の人物が過去に背負ったものを滲ませながらリアルノマドに溶け込む、マクドーマンドの魔法だ。

 原作の著者、ジェシカ・ブルーダーのインタビューを読んだ。映画への反響は、悲観的なものと、希望を感じるものと両方あるという。
 鑑賞中は、大自然の美しい眺めに癒され、主人公のファーンと道ゆくノマド達との程よい距離感のある交流に心地よさを感じ、人生の暗喩のようなノマドの道行きに意義を見出せる気がした。
 しかし観終えた後、私はささいで優しいエピソードの狭間に覗くあまりの孤独感に心がつらくなってしまった。同時に、終始淡白な描写でありながらこういう重い感情を惹起するこの映画の効きの強さを感じた。

 ファーンは不況の煽りで勤め先や家を失い、夫も病気で亡くしている。彼女は経済的にノマドにならざるを得なかった側面があるとともに、積み上げてきた生活を時勢の流れで失い、大きな空洞を抱えた心もまた彷徨っている。
 自由な人生を送るための縛られないライフスタイルというより、落ち着く場所を失った心のバランスが、絶えず彷徨うことによりぎりぎり保たれているような哀しさを感じた。
 定住の選択肢が見えてもファーンがそれを選ばないのは、そんなかろうじて保たれているバランスが崩れることへの恐れや、安定した環境で何かを積み上げても、またかつてのようにあっけなくそれらが失われるともう耐えられないと思うからかもしれない。

 本来は定住生活においても、永遠に失われないものなどない。ただ、安定した生活は何かを失う覚悟を鈍感にする。
 流浪の生活では、別れが常に身近にある。でも、流転し続けるからこそ再会の希望も持てる。喪失の覚悟が常に出来るし、絶望は和らげられる。
 ノマドの生活に本当のさよならがないというのは、無常を正視し続けることと引き換えの救いだ。そのような覚悟なしにぬるく生きている私の心に、そんな生活を選んだ老年期のファーンの修復し難い孤独がひりつくように沁みた。
 美しい風景の中のラストに希望を感じるか、静かな絶望がその先も続くように見えるかは、見る側の心のありよう次第なのだろう。

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ニコ

4.0ブラック&ホワイト・モーターハウス・ダイアリー

2021年3月29日
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悲しい

難しい

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マユキ

4.0誇りとやせがまん

2021年5月31日
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鑑賞方法:映画館

「武士は食わねど高楊枝」という言葉が日本にはある。これは、前向きに解釈すれば、金はなくても心までまずしくなることはない、となるが、後ろ向きに解釈すれば「やせがまん」だ。大抵の人間はどちらかに割り切れるものではなく、その両方の中で心が揺れ動いてものだろう。この映画にはそういう揺れ動く気持ちが描かれている。
生活していた町が失われ、車上生活をする主人公。職を求めて転々と流浪の暮らしをつづける彼女は、ホームレスではなくハウスレスだという。同じような生活をする人々が、そのような自由を求めて生きる「ノマド」と呼んで誇らしく装って見せる。ある人はノマド生活から家族の家に戻り快適な暮らしを手に入れる。ノマド時代より、明らかに健康そうで幸せそうだ。
そして、社会を捨てて生きる彼ら・彼女らは、本当に自由になれているのか。主人公は自分で行き先を決めているようで、実際には短期の職があるところを目指して移動している。アマゾンのような巨大企業は、彼女のような社会からドロップアウトした人間すら、システムの一部として組み込んでいる。
大晦日を一人で祝う彼女は、自分を卑下しない。格差の下に追いやられても誇りは失わないのは、人間として立派だ。しかし、やせ我慢も明らかに混じっている。混沌とした感情が叙情的な映像で綴られる。礼賛も格差批判もこの映画にはピタリとはまりにくい。この映画は、主人公とともにやせ我慢と誇りの両極を一緒に揺れるように観るのがいいんだろうと思う。

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杉本穂高

4.0クロエ・ジャオという才能を思う

2021年3月31日
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村山章

4.0Worthy Transcendental Cinema

2021年3月30日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

Nomadland might not have meant to be the critical hit it was, but in a worldwide crisis, the character central to this story doesn't feel so far off. There isn't much story to extract here--rather it's a day in the life on the road comparable to journey in Into the Wild. Zhao's editing is the best part, providing snippets of everyday life--making you believe your own world could be a hit movie.

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Dan Knighton

5.0静かなる圧倒。時代の変わり目に立つ一作

2021年3月28日
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静かな圧倒が押し寄せ続けた。観る者の人生や価値観を揺さぶる、忘れがたい2時間だ。本作には都市部やビル群がほぼ姿を見せない。登場するのは延々と続く道。天然の石、大自然の公園、恐竜のオブジェ。その渦中で、人は誰かの生き方に合わせる義務もなければ、貨幣経済に縛られる必要もない。眼前に広がる果てしない風景は時に寂寥感に覆われることもあれば、希望を感じるほど光に満ちることもある。大切な皿はいつか割れて大地の一部と化す。その全てを抱きしめながら、自らの手で選択を重ねて、アメリカ国土を移動していく主人公。我々もまた旅路に沿って、彼女の心の内側を、まるで地層ふかく降りていくかのように自ずと受け止めることとなる。そこで芽生える、表現しようのない共振。そういえば『ミナリ』もどこか「開拓時代」を思わせる物語だった。何かが確実に変わり始めている。時代と映画との鏡面性を、これほど強く意識させられたことはかつてない。

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牛津厚信

4.5切実な事情とある種の悟りが、現代の遊牧民を生む

2021年3月26日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

フランシス・マクドーマンドが演じるファーンは創作されたキャラクターだが、彼女が流浪の先々で出会う車上生活者たちは本人が自分の名前で出演している。“出演”という言葉も適切ではなく、彼らはただ、カメラの前でありのままの自分で存在し、ファーンとの対話の中で自らの人生や暮らしぶりについて語る。クロエ・ジャオ監督はノンフィクション本をベースに、ドラマとドキュメンタリーを組み合わせたハイブリッドな映像作品を生み出した。

ファーンは夫に先立たれ、リーマンショックの余波で住み慣れた家も町も失い、キャンピングカー暮らしをスタートさせる。Amazonの商品倉庫での仕分けや、オートキャンプ場での雑用など、短期労働で当面の生活費を稼いではまた移動する生活。実在する現代のノマドたちも出発点はたいてい切実な事情だが、家や土地、地縁に縛られない生活は、近代の管理社会で私たちが自明のように受け入れてきたさまざまな束縛からの解放を実践している面もあり、ある種の悟りの境地に達しているようでもある。ファーンに誘われてアメリカ西部の荒野、森、海といった広大な大自然を目にすることで、この地球上にたった一人で立つ感覚を少しだけ取り戻せるはずだ。

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高森 郁哉

4.5「ホームレス」と「ハウスレス」は違うということを「ノマド」から学べるロードムービーの傑作。

2021年3月26日
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私は本作を2020年9月のベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)受賞の際に知りました。その際、メイン画像を見たら条件反射的に「あ、これはアカデミー賞にノミネートされる作品だ」と察しました。というのも、名作「スリー・ビルボード」でアカデミー賞の主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドが雰囲気良くドーンと出ていたからです。
その後、本年度アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞と主要6部門でノミネートされました。
ただ、実際に作品を見てみたら驚きました。「スリー・ビルボード」とは全く作風が異なっていたからです。
どちらもシリアス系ではありますが、「スリー・ビルボード」はセリフの応酬などが本当に魅力的な作品でした。その一方で本作「ノマドランド」はロードムービーの良作でした。
次に驚いたのは、本作のベースは「ノマド 漂流する高齢労働者たち」というノンフィクションが原作となっていたことです。
日本だとピンと来ませんでしたが、アメリカの場合は地方の大企業が破綻すると、郵便番号さえも無くなるなど、文字通り町が消えてしまうようです。
そしてフランシス・マクドーマンド演じる主人公は、長年住み慣れた住居を失い、キャンピングカーを住居として生きていきます。
ここで大切なのは、いわゆる「ホームレス」ではなく、あくまで「ハウスレス」だということ。
この2つは、一緒にされがちですが、実は異なっていて「ハウスレス」は「経済的困窮」を意味していて、 「ホームレス」は家族、友人の絆が切れた人々のことを意味しています。
つまり、「経済的困窮」のため季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送っているわけです。
この「ノマド(遊牧民)」の多くは高齢者で、悲しみや喪失感を抱えています。
ただ、ノマドの良さは、別れ際に「またどこかの旅先で」と、人々との絆が切れない点にあります。
このように本作は、ノマドという世界で大自然の映像美と共に人々の交流や生き様を描いた名作となっているのです。

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細野真宏

5.0大都会の片隅で生きる人々にお勧めしたい"ハウスレス"という価値観

2021年3月22日
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鑑賞方法:試写会

泣ける

幸せ

昨秋、ヴェネチアとトロントの各映画祭で最高賞に輝いて以来約半年、その間、配信系の有力作が次々と参戦して来たが、依然として賞レースを先頭で引っ張るパワフルな1作。筆者もこれを観てから3ヶ月以上経つのに、頬を撫でるような映画の空気感はいまだ皮膚にこびりついたままだ。ヒロインのファーム、及び登場するノマドたちの、家に定住せず、かと言ってホームレスではない"ハウスレス"な生き方にも大いに触発される。我が家に住まい、定職に就き、家族と共に生きる人生はそれなりに価値はあるだろう。でも、たとえ家を持たなくても、仕事は行き当たりばったりでも、孤独でも、いつも心の中に家族の記憶を留めたまま、荒野を流離うことの潔さに、不意を突かれた気がするのだ。もしかして、定住することの方が、返って変容を余儀なくされているのではないか?という疑問に駆られるのだ。だから、これは我々に家族との関係性について再考を促す、偶然とは言え、コロナ禍に現れた観る必要がある映画。大都会の片隅で、1人淋しく故郷を思いながら過ごしている、日本のどこかにいるに違いない人々に、心からお勧めしたい。

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清藤秀人

4.0テレンス・マリックの後継者たる女流監督による名作

2020年11月10日
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鑑賞方法:試写会

アメリカには、定住しないノマド生活を好む人がけっこういるんですね。凄く興味深かった。エンドロール眺めて気づいたのは、キャストの役名がリアルな実名だったこと。ほとんどの出演者は、俳優じゃなくて一般人なんですね。主演のフランシス・マクドーマンドは、プロデューサーも兼ねています。彼女がどうしても作りたかった映画だとお見受けしました。オスカーの最優秀主演女優賞は最有力でしょう。

クロエ・ジャオ監督の映画は初めて見ましたが、映像でポエムを詠む感じが素晴らしい。彼女のインタビューを読むと、テレンス・マリックからの影響について語っていますね。なるほど、納得です。撮影監督のジョシュア・ジェームズ・リチャーズの名前も覚えておこう。

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駒井尚文|映画.com編集長

3.0正直、まだ私には早かったのかな?かなり退屈だった

2025年2月20日
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鑑賞方法:VOD

フランシス・マクドーマンドさんが演じる主人公は夫を亡くし孤独に生きていたが、友人の勧めでノマド生活の人々と出会い・・・という話だが、出会ったノマドがえせだったり、友人が孤独に死んでいったり、と出逢いや周囲の知人はいるものの、最後まで孤独がベースの生涯に加え救いのある話じゃなかったから観ていてかなりしんどかった

主人公のホームタウンである寒々としたエンパイア地域や荒涼としたネバダの景色など映像は素晴らしく綺麗、それを映すカメラワークも素晴らしい

本当にノマド生活を送っている人達が出てきて、一種のドキュメンタリー番組を観ている気分になった

“「さよなら」とは言わない、「またね」と言う、そうすればいつかまた会いたい人に会える気がする“
いい言葉だな、と思った

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Jett

5.0日々旅にして 旅を住処とす

2025年2月17日
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鑑賞方法:VOD

太い腕に彫られていたタトゥーの言葉は
《 HOMEとは心の中にあるもの 》

言い訳のようであり。
強がりのようでもあり。

HOUSE less がHOME lessにならないために、主人公ファーンはアメリカの大平原をゆく。あてどもない旅に出る。

・ ・

30年もつづけた僕のトラック人生。
長距離トラックにはベッドが付いているので、年間150日ほどはそのトラックで寝る。
もちろん炊飯機も完備だ。

で、残りの200日は何処で寝るかと言えば190日は会社の仮眠室を使い、
最後の10日ほどを自宅で眠る。
自分で住まない家のために銀行ローンを払い、
一緒に暮らしていない家族のために稼ぎ続けた長旅が近々、定年で一区切りだ。
そんな感じだった。

愛知県の「尾張一宮パーキング」は、皆さんご存じだろうか、高速道路の深夜のパーキングは、平日は夜の9時から明け方の5時まではトラックで満車だ。
もう絶望的な混雑で、その時間に高速道路のパーキングにトラックで行っても絶対に駐められないから諦めてください。
「平日」の「月曜日〜木曜日」。その夜の時間にはトラック運転手には車を駐める場所さえ無い。
トイレにもいけない。
寝る場所もない。
しかし厳しい法的規制で、運転は4時間につき30分は絶対に車輌を停止させないといけない。
そして翌日の運行開始まで10時間1分以上を必ず時間を開けないといけない。法律違反で会社が検挙されるから。
警報装置は鳴り続ける。
車内はリモートカメラでリアルタイムに録音録画されている。
秒単位で全てがドライブレコーダーに記録される。
始末書を書かされる。
でも駐められない。12メートル長の車体。12本のタイヤ。4メートルの車高。
だからみんな悲しく右往左往だ。

なぜ旅の人生を選んでしまったのかは、きっかけは人それぞれ。
たくさんの言い訳と、たくさんの過去と、たくさんのそれまでの職歴を、みんな一人残らず、運転席とベッドに山盛りに積んでいる。

「たまには家で眠りたい」と大書していたあのトラックは何処へ行ったのだろう。
銀色の軽乗用車で暮らしていたおじいさんの姿も見なくなった。家財道具とゴミで満載だった軽自動車だ。
どんな理由で、あのおじいさんもノマドをやっていたのだろう。

・ ・

劇中デイブは言っていた
「“父親”のやり方を忘れてしまったから息子と同居はできない。慣れていないんだ」。
劇中ボブも言っていた
「死んだ息子を探している」。

定住しなかった僕も、間もなく定年を迎えてしまうから、漂泊の旅が終わってしまう事への、言いようのない不安もあるのだ。

・ ・

興味があり「遺伝子解析」を頼んでみた。
僕は数万年前にアフリカで発生したあとに、大陸からこの日本列島に渡って来た形跡があるとの解析結果が出た。移動経路が右往左往しながら矢印で示されていた。
我々モンゴロイドは、太古の時代に、島伝いにアリューシャン諸島を経て海を渡り、北米大陸から中米〜南米へと小舟と徒歩で移動をし、
ついには南極大陸を対岸に見る行き止まりの土地=チリの突端フェゴ島まで行き着いたノマドの民だ。だから遥か遠く、地球の裏で暮らす南米のインディオは、実は蒙古斑のあるアジア人なわけで。
だから ややあって、日本列島には農耕民族として定住した者も有り。
旅を住処とした流浪の民も有り。

血が、DNAが、声なき声で我々に語り掛けるのかも知れない。

主人公ファーンは、
石ころと、砂と、水と、火と、風を、
その原子の四大要素を自分の身体で確かめながら、彼女は目的地の無い旅を目的にしたのだ。

夫は死に、街も変わり、父からもらった皿は割れる。
車は古くなって壊れるし、友人たちも、そして年賀状も減っていくではないか。

誰しもが
家族・友人の墓所を後方に残し人生を振り返り、
自分の墓をば前方に見晴らして進んでゆく。
・・これが僕たちすべての、「人が負う旅の人生」ではなかろうか。

・ ・

108分。
監督も移民らしい。
ファーンに長期密着取材のドキュメンタリー作品だったのか、あるいはこれは非常によく出来たドラマだったのか。
理由も、終わりも、わからずに、
僕はスクリーンに映る「人と大地の春夏秋冬」をじっと観ていた。

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きりん

4.5彼女が見つめる先にあるものは

2024年12月15日
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知的

難しい

劇場で公開された直後に観た作品。一度しか観ていないので、細部まで覚えているわけではないが、数年経っても記憶に残る作品。

作中に登場する現代のノマド達のほとんどが実際のノマドであり、綿密な取材に基づいて作られているため、ドキュメンタリーを観ているような感覚に襲われる。

舞台となるアメリカ西部の大自然。そこで車上生活をおくるノマド達。多くは高齢者である。家はなくとも車には金がかかる。狩猟や農耕生活をしているわけではないので、生きるためには金がいる。町場へ出て、日雇い労働で稼ぐしかない。
アマゾンの巨大物流センター、キャンプ場、ファストフード店・・・。現代の消費生活を象徴するような場でエッセンシャルワークをする人々。
カナダでもない、中国でもない、ロシアでもない、アフリカ大陸でも南米でもない。アメリカという資本主義大国の道路網の整備された荒涼とした大地でなければ成り立たない生活。

社会へのメッセージなのか。いや、これは、数々のノマドたちを描きながら、主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)の心情の深くを描こうとしている作品だと感じた。

印象的な台詞がある。元教え子から聞かれてファーンが行った言葉「ホームレスじゃない。ハウスレス」。物理的な家はもうないが、帰る場所はあるという意味か?
彼女が放浪の生活を続けていく中で、「ハウスレス」の意味が少しずつ変化していったように思われる。
彼女は夫を失い、職と住処を失ったが、心の中に古里や夫と過ごした街の思い出が残っている。だからホームはあると言った。しかし、一緒に暮らそうという誘いを断り、放浪を続ける中で様々なノマドと言葉を交わし、大自然に身を任せる場面を観ていくうちに、この大自然そのものが彼女のホームになっていったように私は感じた。

彼女の横顔。彼女が何かを見つめる目。強い意志を宿した目。それが今でも印象に残っている。
彼女がじっと見つめる先にあるものは、希望か、それとも暗い未来か。いずれであっても、彼女はきっと強い意志で生きていくだろう。

一人の女性の強さが印象に残る作品であった。

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TS

3.0とてもじゃないが、ノマド暮らしはできそうにない

2024年11月21日
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Jax

3.03.3車中泊

2024年11月9日
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asa89