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前作の劇場公開から1年半ほど、ご時世的に色々ありつつも、まずは続編の公開にこぎ着けて一安心していました。
アバンからいきなり原作では見覚えのないアイテムと背景がお目見え……まずこの段階で、ゲーム版を知っている人でも「これから何が起こるんだろう?」とワクワクすることと思います。
全編にわたってキャラクターの表情の工夫と原作に沿った解釈がきっちりされているという印象がありますが、アバンのトーカは特に象徴的です。渡辺明夫先生の原作イラストのテイストをそのままに、1話の自己紹介で見せた典型的な「ツンデレ」の枠に収まらない、どこか底知れない「冷たさ」が、声優さんの演技とも合わさって新たな1章の始まりを感じさせます。
本話のもう1人の主人公である「九真城恵」(通称:グミ)は、アニメの最大の利点であるところの「動き」によって一気に魅力がアップしています。片目にかかった長い前髪と特徴的な形の横髪から伝わる可愛らしさが反動となるように、スクリーンの向こう側から彼女の頑固なまでの意思の強さが滲み出てきて、思わず震え上がるほどでした。
戦闘シーンの迫力は前作が相当なものだったので、個人的にハードルが上がっていたポイントなのですが、想像の遥か上を越されてしまいました。聖エールの修道服がまさかあのような「突入」演出に繋がってくるとは……こればっかりはというか、「この1シーン」だけでも劇場で観る価値があります。
戦闘前後のお話のテンポ感や全体の構成が1・2話の時よりもかなり大幅に変更されているので、原作既プレイだとかえって面食らうこともあるかもしれませんが、2回、3回と鑑賞を重ねるにつれて、原作では明かされなかった設定と、アニメでは描ききれなかった部分との繋がりが徐々に立体的に見えてくる……という感覚が味わえると思います。今回追加された設定にはどれも違和感がなく、原作からの世界観に更に深みが生まれています。
唯一残念?心残り?なポイントを挙げるとすれば、先述の突入シーン直前の、仙石アヤメさんの「啖呵」の部分が原作からカットされていたことでしょうか……難物ながらもどこか憎めない彼の性格と、作品全体の雰囲気にも通じる部分がある「大人の責任の取り方」論を象徴するシーンとして重要と思っていただけに、全部でないにしても残してほしかったな、と……。
色々と名シーンは浮かびますが、特にラストシーンの構成が素晴らしく、コンテを考えた方には最敬礼をしたいです……。エンディングテーマ『涙流るるまま』も鑑賞前に曲単体で聴いていましたが、大音響だと迫力が段違いでした。
なかなか気軽に劇場へ、とはならない世界情勢がもどかしくもありますが、むしろそういう時代だからこそ見知る価値のある、大切なことがたくさん詰まった作品だと思います。既にBlu-rayも発売されているようですので、例えお近くの劇場で公開が終わった後からでも、グリザイアシリーズを一つも知らない方でも、是非一度見てほしいです。