劇場公開日 2021年1月8日

「緊迫からポジティブへの展開が見事!」おとなの事情 スマホをのぞいたら 三輪さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0緊迫からポジティブへの展開が見事!

2021年1月18日
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この映画の初めにコンビーフを開けるシーンがあります。この小道具がどんな意味を持つのか、興味津々で映画がはじまります。中間とラストに深いセリフが流れます。一つは「夫婦はお互い同士が勝ち負けでは幸せにはなれない」。もう一つは「夫婦には様々なことが起きるが、それは生きている証拠」です。ベースがイタリアのコメディらしく、笑えるところが随所にあり、大声で笑ってしまいました。特に東山がゲイというところは、ツボでした。やがて、夫婦間の隠し事が、携帯に届いた連絡によって明らかになるにつれ、緊迫した展開は高まって行きます。しかし、登場人物たちの発言によって修復に向かうと、徐々にハッピーエンドへ。劇中にあるように、月が月蝕によって消えても、また元通りになるように、夫婦たちは見事に乗り越えます。この映画のメインは喫茶店で行われますが、さながらその場が、人生体験の坩堝のような状態でした。発端は結婚に喜びが持てない女性が、夫婦間には隠し事があるのかないかを、スマホにかかってくる電話やメールを公開することによって、清廉潔白に生きているかどうかを試すものですが、隠し事のない夫婦はありえないはずです。それが、ラストには傷だらけになりながらも、見事にひっくり返して、それでも生きることが大切だという結論に持っていく流れは秀逸です。それは三日間、生死を分ける台風の状況下に、一緒に過ごしたという過去が、強く作用しているからこそだと思いました。最後は私の大好きなポジティブでゴールです。

三輪