「「効率化」を追い求める社会との決別」スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
「効率化」を追い求める社会との決別
この作品は、作品の内容とタイトルやポスターのイメージと間にかなりギャップがある。あきらかにターゲットを誤りかねないマーケティングの失敗だ。
ポスターのようなポップな感じもないし、実話もの特有のあっと驚くような奇跡も、「世界が涙した」のような感動作品でもない。
この作品はのdiversityのさらなる発展性を問うたり、社会正義を振りかざしているわけではない。「人権と博愛の国」といわれるフランスにおける発達障害者支援の今を知ってほしいという切実なメッセージだ。
人はいつかは老いていき、自分だけでは生きていけなくなる意味で決して他人事の話ではない。現代においては行政に解決を求めるのは賢明な解決方法ではない。社会のセーフティーネットを地域のコミュニティで相互扶助のシステムを作ることも一案。私たち一人ひとりが考えていく。
現代社会においてハンディキャップを持つ人に立ちはだかる壁は社会の「効率化」だ。
自分は「業務効率化」や「生産性向上」といったキーワードのコンサルビジネスに身をおく人間だが、「効率化」という言葉が大嫌いだ。「効率化」しても社会は決して豊かにはならないし、行き着く先はいつも閉塞感と疲弊だけだ。
日本は慢性的な労働力不足と低成長経済下で国際的にも労働生産性が低いと指摘されるなか、企業や政府そして一般社会までも一層の「効率化」を求めている。
ハンディを持った人びとが「社会不適合者」として「日常」生活から「隔離」され、やまゆり園のような事件を私たちの「社会」が引き起こしている。
車内で具合の悪くなった人が出て電車が一時休止(ほんの数分のできごとだ)したときに周囲の人の舌打ちや悪態をつくなど、これが私たちが求めた豊かな社会の姿なのかと憤りを感じてしまう。
観る人それぞれの良心と見識に訴えかけ、自身の「傍観者」としての今までの行動を振り返って自分に「不快感」を覚えるかもしれない。
本作の受け止めかたに今までの生きかたや考え方が投影されて、観賞後の感想や意見も人それぞれ変わってくるような作品。個人的には老若男女多くの人に観てほしい。
h.h.atsuさん、コメントありがとうございます。
そうなんですよね。社会的弱者を守るために政治があると思っていたのに、まずは自分で何とかしなさい・・・ですもんね。
今の政治家は金持ちばかりで、弱いところに目が届かないようです。