スパイの妻 劇場版のレビュー・感想・評価
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最期の時政に刮目せよ
語りたいことは山ほどある映画だが、敢えてひとつだけ記しておく。
優作が企み望んだのは「関東軍の非人道的残虐行為」を世界に知らしめることによって「アメリカの参戦→日本の敗戦」である。その通り日本は8/15に終戦の詔勅となる。映画ではどうか?精神病院の妻のシーンは、東京大空襲(3月)と神戸大空襲(6月)だ。帝国日本が負けを受け入れざるを得なかった「アメリカ」軍の決定的最終兵器の使用は...8月。映画作中では全く描かれない。それは「非人道的虐殺行為」ではなかったと言えようか。その時、優作が生きていれば何を思ったろう?そんな深い洞察を各所各節に与えてくれた作品であった。
脚本も演技もカメラも今一
蒼井優がヤンデレじみてる(^_^;)
ヴェネツィア国際映画祭で監督賞(銀獅子賞)を授賞した黒沢清の作品。
もともとこの作品はNHKのBS4Kのチャンネルにて放送されたテレビドラマだそうで、それを音響と映像の質感を劇場用にアレンジされた「劇場版」だそうで。
イ・チャンドンのバーニングといい、今年の37セカンズといい、NHK製作の作品は質が高い!
映像は美しいです。
黒沢清の作品は「CURE」しか観てませんが、「CURE」同様に長回しを多用する美しいカメラワークが観れます。
特に、街の様子を高橋一生の視点で長回しで映す場面は当時の様子と雰囲気が感じ取れます。
また、美術セットの作り込みが素晴らしいです。
高橋一生の会社にある倉庫にある小道具や、軍の施設にある尋問部屋等は物凄くリアルで、黒沢清独特の少し不気味な雰囲気とNHK作品のリッチさが丁度よく合った気がします。
この作品、照明をかなり明るくしているので、そこはドラマっぽい映像だと思ったのですが、最後まで観ると当時のモノクロのフィルム映画を彷彿とさせたかったのかもしれません。
照明の明るさを逆に人物の心情の陰りを見せる意図でやっていたのだとしたら「お見事!」
この作品では劇中で小型の映画フィルムが出て来て、それがかなり重要なものになってきます。
そのフィルムに映し出されてる映像の白い部分が逆に不気味な
雰囲気を醸し出していました。
スリラー要素も好きです。
今回は「CURE」を彷彿とさせる所だけでなく、濱口竜介が脚本として参加してるだけに「寝ても覚めても」の二人の関係性を思わせる、平穏だけどどこか不穏さを感じる要素がありました。
キャスト陣も悪くないです。
特に東出昌大演じる軍人は、彼の"棒演技"が逆に人物に異質な不気味さを醸し出していました。
内容は満州の「731部隊」という当時の太平洋戦争における日本軍最大のタブーとも言える話題を扱ってるだけに、攻めた内容に驚きましたし悪くないと思います。
けど個人的には聡子が怖い…というかヤンデレに近い行動に「う~ん…」となりました
個人的にストーリーの展開は「スパイ」の嫌疑がかけられた高橋一生の妻の行動を描いていて、最初は高橋一生が謎めいた人物のように思えますが、途中からその蒼井優演じる聡子の行動の方が怖くなります。
彼女は公衆の面前でも夫にハグをしてしまうくらい夫に愛がある…というか愛が重いです。
そして、彼女が起こす行動も彼女なりの夫への愛ゆえということを理解出来ても、正直ドン引きしてしました。
なので、この聡子の存在が自分はこの映画から少し気持ちを離してしまいました。
そして、個人的にラストのストーリー展開も読めてしまった上に強い印象が残らなくてそこまで強く心に残らなかったです。
「731部隊」という扱いづらくて危うい題材を扱っておきながら、ストーリーとしてはそんなに衝撃を感じない所に少しガッカリしています。
映像面では非常にシャープな作りになっていて綺麗なので、観ている分には美しいと思えて退屈はしません。
なので、黒沢清がこの作品で賞を獲れたのはそういう所かなと思うのですが、いかんせん色々な所でそんなにずば抜けて無い上に好きじゃない所も目立ってしまって、言うほど好きになれませんでした。
全く荒唐無稽だと確信して作成されたあざとい映画です?!
とても好みな日本の映画
馬鹿で可愛い妻
ただの貿易商が、偶然出会った程度で信用され、最高機密であるはずの軍部の生データを手に入れられるわけもなく、また、雲行き怪しい時代に白人の釈放のために大金を拠出するのも不自然過ぎており、更には妻が国民服を着るのも拒むくらい、もともと夫が欧米側の人間であることは明白。
しかし、主人公である妻は、機密情報を他国に持ち出そうとする夫の行為は義憤にかられたからだと信じる。その姿はあまりに愚かで、かつ、蒼井優の演技力のお蔭で可愛くも見える。
夫の部下を犠牲にしてでも夫を庇おうとした浅慮さも、証拠は2つ揃っていないと意味がないのに2人が1つずつ持って分かれて渡米しようという案を飲んでしまう愚鈍さも、全てが愛ゆえなのかと思わせるほど、妻がキュートだ。
とは言っても、所詮スパイごっこに興じているだけの妻は、見張り役がいることにも気づかないくらい愚かなので、夫に国外脱出の際にスケープゴートに使われてしまう。
「お見事です!」という台詞とともに失神した妻。夫が徹頭徹尾ウソしかつかない男だったのだと悟り、騙されて捨てられたと理解してのものだと思い、可哀想だなぁと思ったのも束の間、終戦後に夫に呼ばれるままにホイホイ渡米してしまうというラスト。
なんなんだ?
日本に取り残された場合、空襲で死ぬかもしれない状況になることは、夫には簡単に予想できたはず。つまりは夫にスパイ業より妻の命は軽いと判断されたわけなのに、よくそんな夫を許せるな~
夫も夫だ。なぜほとぼりが冷めたところで呼び寄せる?また利用するつもりなのか?
…ということで、色々考えさせられ、まぁまぁ面白かった。
蛇足だが、空襲の瓦礫のシーンが学生の舞台劇のセットレベルのちゃちさで、気分が落ちた。
なんとなくみたけど…。
蒼井優の「お見事!」演技なければクソ映画
2013年公開の「リアル 完全なる首長竜の日」というチョークソ映画を見たのを最後に、黒澤清作品は見ていないし、この映画もクソ映画だと思っていた。
しかし、海外で大きな賞も取り、自分の好きな戦中が題材になっているので、ムビチケを購入したうえで映画館へ。土曜日の午後、東京・城東地区の映画見巧者が集まる劇場は中高年を中心にそこそこの客入りだった。
戦中の軍人、とりわけ憲兵が出てくるというのに、アタマ(頭髪)は丸刈りでないし、顔つき、体つき、所作…どれを見ても、当時を再現していない。
高橋一生と蒼井優の浮世離れした夫婦の在り方もおかしい。
蒼井の子供っぽい声、顔、体つき…どれも、この芝居にマッチしないなー、と思いながら見ていた。
しかし、この映画のキモの部分でもある、主役が「反戦」のために取る行動、そのトリックを見て、妙な気持ちがストンと消え、ヒロインともども、「お見事!」と小声で、ささやきたくなる内容だった。
その意味では、戦中の日本の姿をリアルに描くこともなく、731部隊の所業と思しきあれこれなどの題材も、このファンタジー作品を作るための材料にしかなかったのである。
本来なら★2つのクソ映画だが、蒼井の演技に免じて、鑑賞をお勧めしたい、★4つにランクアップしておいてやる。
自虐ネタで賞を貰うのもどうかと思いますよ!❓
結局彼は何者だったのか?
満州から帰国した夫の態度が以前と急変し、真相を知ろうとする妻。
日本のとある行為を告発すべくアメリカに渡り、戦争を煽り日本を敗戦させ戦争を終わらせる?
そんな行為にでる夫。
昭和の品の良い妻を演じる蒼井優は、その昔見た映画(ゆりあんレトリーバーのよくやる古い昭和の映画にでてくる女優の真似のやつ)みたいな話し方をずっとする。
【以下、完全ネタバレ。注意】
アメリカに2人、別れて乗り込もうとするが、オイラは妻はアメリカに着くも夫はいつまでも来ない。となるかと思っていた。がそうではなく
妻側は密告者により事前に確保された。
裏切り者だったのか?愛妻家だったのか?
東出の爪剥がしの拷問が痛々しかった
どっしりとした骨太な邦画として嬉しい作品です。
なかなか骨太な感じの作品で、蒼井優、高橋一生が共演とすると聞き、同じく2人が共演した「ロマンスドール」が凄く面白かったので、結構期待して観賞しました。
ちなみにドラマ版は未観賞。
で、感想はと言うと、観応えアリの重厚で骨太な作品です。
開戦間近の日本が満州で秘密裏に行っていた細菌兵器の研究を偶然に知ってしまった若き貿易商とその妻の物語で、日本が行っていた所業の顛末を世に知らしめようとする為にアメリカに密航しようとストーリーは終始緊迫感が漂う、どっしりとした作品。
ロマンスドールでは何処か頼りなさ気でも妻を純粋に愛する主人公を演じた高橋一生さんが今作では成功した若き貿易商の優作を演じてますが、落ち着いた雰囲気に加え頼れる大人の男の雰囲気を醸し出しているのは様々な作品でいろんな役柄を演じてきた賜物。緩急の付いた演技は観ていても安心感があります。
でも、蒼井優さんの醸し出す雰囲気はそれよりも一枚も二枚も上手。
昭和初期の恵まれた令嬢婦人を演じられてますがもうピッタリ。蒼井優さんの話し方も何処か令嬢っぽいし、品の在る演技と存在感は個人的にはピカイチかなと思います。
…この人があの「南海キャンディーズ」の山ちゃんの嫁か…と思うと、未だになんか納得が出来ませんw
観応えある作品ですが、個人的な難点を言えば、スパイの容疑を掛けられた夫を救うため、坂東龍汰さん演じる甥の文雄に罪を全て被せ、夫の行動を「売国奴」の所業と言いきった筈の聡子が急に夫の行動を支持する様になった部分の描き方が薄いと言うか、解り難い。
聡子が夫の優作の考えを急に理解する所が丹念に描かれていない為、聡子はなにか企んでいるのでは?と終始勘繰ってしまった。
そんなドキドキにクライマックスはいろんな結末を考え、その中の選択肢で「こういうラストもあるかも…」となんとなく思っていても、それを目にするとやっぱりビックリ。
だけど、その結末で言うと些かタイトルと噛み合ってない感じがしなくもないんですよね。
タイトルの意味を深読みするといろんな事を思い巡らせたんですが、意外とあっさりな感じがしなくもないんですよね。
聡子の軍部で優作の真意を知った時の「お見事!」はちょっと演劇チック。
舞台で観ると栄える台詞なのかもなんですが、映画として観た時に聞くと少し違和感が無い訳でも無いんですよね。
その後、気の触れた患者として入院している聡子の没落を観ると「ふりをしているだけ」と分かっても何処かやりきれない虚しさを感じます。
同時に優作の聡子への愛は果たして本当だったのか?と考えます。
自身の信じる正義を貫く為、聡子を裏切り、同時に売ってしまう。軍に聡子に思いを寄せる泰治が居るとしても、聡子の安全は完全では無い。
ドラマ版を見ているとその辺りの説明も補完されているのかもなんですが、映画を観ている限りでは、聡子する裏切ってしまう優作の愛情は何処にあったのだろうか?と言うのが些か難しいと言うか解り難い。
最初から国にも聡子にも愛情が無かったと言う風に解釈すれば良いのかもなんですが、優作が終始、謎の人物に映ります。
でも、これぐらいのミステリアスの方が個人的には良いかな。
黒沢清監督はいろんな作品を撮ってて、結構好きな作品もありますが、個人的に「クリーピー 偽りの隣人」の前科があるのですがw、この作品は十分に楽しめました♪
日本の戦前に行った様々な所業の数々はいろんな形で明らかになっていますが、劇中で描かれた細菌兵器の研究は満州で実際あった「731部隊」の事を指しているかと思います。
日本が過去に行った行為を今更悔い改めよとは言いませんが、国の行いを憂うが為に裏切り行為を行った者。そしてその犠牲になった人。国を正義を信じた為に盲目に人を裁いた者。
それぞれが悲劇的であった事は間違いなく、その犠牲の上で成り立っている今日である事は間違いないかと思います。
そんな事を改めてではありますが、じっくりと魅せてくれる作品です。
久々に骨太の邦画作品がなんか嬉しい。
未観賞の方でご興味がありましたら是非是非♪
申し分ないのだが
申し分ないけど。アメリカに自由を求める様に描かれていて。そのアメリカが原爆を落とすというカタルシスを個人的は描いて欲しかった。
最後蒼井優が海辺で狂気をさらした事が本当に狂った。でそれが描かれたと思いたい。
しかし戦後すぐ渡米する。化学兵器を使った国に憤りは無かったのか?腑に落ちない。
脚本も演技も演出も良かった
まさに「お見事!!」
話は割と単純と言えば単純な映画。
戦前の満洲で、日本軍の石井(731)部隊の人体実験を目撃した人が、周囲の人に影響を与えていく。黒沢清監督にしては珍しい、史実を元にした映画だ。
俳優さんの演技は素晴らしかった。
特に蒼井優。
神戸のお嬢様をめちゃうまく演じていた。
話の中盤で価値観がガラッと変わった後も、いきなりキャラクターの雰囲気を変えている。あれが出来るのはまさに「女優」だからこそ。一般人であんなに人格が変わると逆に怖く感じる。
憲兵隊長であるお酒馴染みの「けんじ」のルサンチマンも良かった。
蒼井優演じる聡子に恋心を抱いている、という設定だが、たしかに相手はお嬢様で、彼は普通の(・・あるいは貧しい?)家の出身だろう。恋心だけでなく、階級に対する恨みもあったはず。その辺がふんわりと感じられた。
これは恋愛映画ではない。
最後、聡子の夫、優作の取った行動は、「愛」よりも上位の価値観(正義)が存在する、人はその価値観をより大事だと考えることを示している。宗教を考えればすぐ理解できる。聡子が心変わりしたのも「愛」が理由ではないし。個人的には当たり前のことだとは思うが、恋愛至上主義みたいな気持ち悪い風潮が日本には漂ってるので、良い反証になるのでは?と映画観ながら感じた。
最後のどんでん返し含めて、ほんとに「お見事」と言える映画でした。
全282件中、121~140件目を表示













