スパイの妻 劇場版のレビュー・感想・評価
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「ダゲレオタイプの女」との類似点が若干認められたが
黒沢清監督作品はVシネマも含め大半を好ましく鑑賞してきたが、この4年ほどの映画には以前ほど乗り切れずにいる。「スパイの妻」は現代や近未来の日本でない舞台設定や、古風さや格調高さが趣になっている点で、「ダゲレオタイプの女」(16)に近い印象を受けた。今作のある種舞台劇のような台詞も、現代口語からの異化という点で外国語に近い効果があった。蒼井優と高橋一生は台詞回しを含め難しい役に健闘したと思う。
振り返るに、黒沢映画の恐怖や暴力の表現を通じて人間の本質を鋭くえぐり提示するような衝撃と刺激に虜になっていたのだが、近作ではそんな要素が希薄になった気がし、物足りなく感じるのかもしれない。監督の成熟と進化であり、作品としてソフィスティケートされてきたのは確かだが、それに追いつけないもどかしさが乗り切れない理由かも。「岸辺の旅」(15)あたりまではキャッチアップできている気がしていたのになあ…。
高橋一生、蒼井優、東出昌大の演技が冴えベネチア国際映画祭の銀獅子賞も納得。会心の黒沢清監督作。
本作は今年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞しました。
1940年の「太平洋戦争前夜の神戸」が舞台の中心となっていますが、この舞台や美術、装飾などが意外に凝っています。これは、製作にNHKがかかわっているため、割と豪華で緻密な撮影を敢行することができたようです。通常の作品では雑音が入ったりして「アフレコ」で後から声を入れます。ところが本作では、メインキャストは撮影時のままの声をそのまま使っていて、それがリアリティの源泉にもなっていました。
貿易会社の社長に扮するのは高橋一生で、映画のタイトルにもあるように、ちょっと謎な感じの人物を飄々と演じています。
そして、その妻に扮する蒼井優は、夫の「謎」に翻弄されながらも、高橋一生と「騙しあい」を繰り広げ、その怪演が見どころです。
さらには、蒼井優が扮する聡子を心配すると同時に、国家への忠誠を守らなければならない憲兵に扮する東出昌大も緊迫感のあるシーンを見事に演じ切っていました。
独自性もあり、歴史の闇に迫った意欲的なサスペンス映画だと思います。
超高解像度の撮影で登場人物の心情を表現
元々は今年6月にNHK BS8Kで放送された同名ドラマを、劇場版としてスクリーンサイズや色調を新たにし、1本に再編集したものです。物語の舞台は太平洋戦争前夜、1940年の日本。相反するものに揺さぶられながら、抗えない時勢にのまれていく夫婦の愛と正義を賭けた様を描いています。
ロケ地、衣裳、美術、台詞まわし、すべてにこだわったというだけに一級のミステリーエンターテインメントに仕上がっていて、これまで黒沢清監督が手掛けてきたものとは一線を画すようなテーマ、物語とも言えますが、8K・スーパーハイビジョン(超高解像度のテレビ規格)撮影によるその映像表現には舌を巻きました。
脚本には「寝ても覚めても」の濱口竜介、「ハッピーアワー」の野原位と海外で評価された才能が参加し、音楽は「ペトロールズ」「東京事変」で活躍するミュージシャンの長岡亮介が手掛け、黒沢監督よりも若い世代との化学反応を起こしています。そして、美術の安宅紀史、衣裳の纐纈春樹が再現した昭和初期の世界観も見どころのひとつです。
主演は、テレビドラマ「贖罪」、映画「岸辺の旅」で黒沢組に参加している蒼井優。「ロマンスドール」に続いて高橋一生が蒼井と夫婦役を演じ、ふたりの心情の変化を繊細に表現。憲兵の分隊長を演じた東出昌大とともに確かな存在感で監督の演出に応えています。
黒沢監督は最初から劇場公開も視野に入れて、映画として作り上げていることがうかがえます。スパイものというジャンルの枠組みのなか、超高解像度の撮影でどこまで登場人物の心情を表現できるのか、光と影(闇)を意識し、これまで以上にあえてクラシカルで様式的なリズムに則った演出は必見です。
黒沢作品はいつも油断ならない
黒沢清監督の映画はいつも油断ならない。我々は得てしてカメラのフレームが切り取る四角い空間だけが物語の全てと思いがちだが、黒沢作品はその外側に「世界」があることを囁き続ける。窓から注ぎこむ怪しく優しい光。ゆらゆらそよぐカーテン。気にしなければ気にならないが、気になりだすと目が離せなくなる。この「内と外」をおぼろげな描写でつなぐやり方は、とりわけ本作の物語構造の中で効果的に活用されているように思えてならない。スパイ映画といえば諜報部やボンドを真っ先に思い浮かべがちだが、これは軍靴の音が高鳴る時代、一組の夫婦が真実を世に告発しようとする物語。今どこかで巻き起こっていることは、決して別世界の他人事では済まされないのだ。表と裏、真実と虚構、フィルム、映写機。主役なのに度々カメラの外へ消え去る高橋一生と、カメラの内部に取り残される蒼井優との関係性や互いに寄せる想いが、絶妙な感度で奏でられた逸品である。
新しいタイプのホラー。
笑顔で車に乗る妻を見て途中で「拷問されればいいのに!」とまで思ったけど、拷問よりひどい仕打ちを受ける結末が面白かった。
もっと単純に「いい映画」を想像していた自分が甘かった…と思わせてくれる映画。素晴らしいです。
過酷な時代に翻弄される正義と夫婦愛
ベネチア映画祭銀獅子賞=監督賞受賞作ということで、公開初日に鑑賞した。
ベネチア映画祭の受賞作品は、良く言えば芸術性が高い、端的に言えば少々難解な作品が多い。本作も、らしい作品だった。
本作の舞台は、太平洋戦争前夜の神戸。貿易商を営む福原優作(高橋一生)は、満州にわたり、偶然、国家機密を目撃し衝撃を受ける。彼は、社会正義のため、その事実を公にしようとするが、憲兵隊に察知され、執拗に行動を監視される。妻の聡子(蒼井優)は、当所、夫の行動に疑問を持ち非協力的だったが、次第に夫を愛するが故に、夫と行動を共にするようになる。そして、憲兵隊の追求が厳しさを増すなかで二人はある決断をする・・・。
全編、通常作品に比べ、薄暗い画面を多用して、太平洋戦争前夜の先行き不透明な雰囲気を表現している。また、愛国心の塊のような憲兵隊長役の東出昌大の迷いのない、何かが憑依したような眼差しに狂気が宿っている。有無を言わせぬ恐怖感がある。この時代を象徴している。このような過酷な時代の中で、社会正義を貫くことが極めて困難であることを暗示している。
夫婦を演じる、高橋一生と蒼井優が本当の夫婦のように息がピッタリである。したがって、夫の行動を全く理解できなかった聡子が、夫と一緒に居たい、離れたくないという一念で、徐々に夫と行動をともにしていくプロセスに無理がない。蒼井優が安定した演技力で夫を愛し寄り添っていく一途な聡子役を好演している。
高橋一生も、蒼井優に負けず劣らず、社会正義を貫こうとする優作役を熱演している。従来の柔和な眼差ではなく、権力に挑んでいく毅然とした佇まい、眼差しが凛々しい。ちょっとした仕草、台詞に聡子に対する愛情を感じる。
終盤は切ない。社会正義を貫こうとしながらも、優作と聡子は懸命に生きることを選択する。互いを思い遣って生きようとする。
観終わって明るい気持にはなれないが、夫婦愛という言葉が強く心に刻まれる作品である。
正直なところ《困惑》しました。
2020年。黒沢清監督作品。
ベネツィア国際映画祭銀銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞おめでとうと、素直に喜べない。
告発(福原のスパイ容疑の原因となった、満州で日本軍が関わった事件)
その事件は過去の日本人がひた隠しにする事件で、事実なんだけど、
わざわざ今、日本の恥を世界にさらしてほしくなかった・・・
それが私の本音(日和っててごめん!)
映画は良かったと思います。
蒼井優・高橋一生・東出昌大の好演で1940年代の雰囲気もよく出ていたと思います。
やはり蒼井優ですよね。殺爆とした戦争中に美しさと艶っぽさで福原聡子を熱演。
積極的に夫の告発に協力する進歩的な妻を現実的に演じました。
主演にふさわしい働きでした。
憲兵服ってあんな綺麗な青色だったんだろうか?
東出昌大は長身なので一人だけ日本兵らしくない・・けど、リンチで剥がした爪を
福原優作(高橋一生)に見せ付けるシーンはゾゾっとした。
(そのシーンを映さないのに十分に震えた)
黒沢清監督らしい美しい洋館や蒼井優の衣装や髪型・センスの良さが光ります。
色使いも黒沢清らしく綺麗で様式的なのはいつもの通り。
聡子の行動で映画は急速に動き出して、優作の告発を後押しする。
裏切ったかに見えて実は・・・的演出も良かった。
優作が妻を主役に撮っていた映画が、ラストであっと驚く働きをします。
ここだけ、クスッと笑えた。
内容の割には暗すぎずに分かりやすい映画です。
なにはともあれ、黒沢清・ベネツィア国際映画祭・銀獅子賞受賞、おめでとうございます!!
監督御本人が喜んでらしたのが、なにより嬉しいです。
元々ドラマで作成されたとのこと。 微妙なところが多くて、あんまり入...
元々ドラマで作成されたとのこと。
微妙なところが多くて、あんまり入り込めなかった。外国で評価されたことは謎でした。
早口
蒼井優が昭和の邦画の女優みたいに早口で話すのが可笑しかった…きっと演出なんだな
戦争映画にしてはシュールでコケティッシュ
うがって見たから?
高橋一生好きじゃないんですよね。あと大作風の日本映画も苦手。そのせいかいろんなことが鼻についちゃって。蒼井優だけ気を吐いて昭和初期の銀幕女優みたいな話し方してたけど、他の人が普通なので哀れにも浮いてた。街中のセットピカピカすぎるでしょ、黒沢清ってディテール気にしない監督なんだ、とか。こんな感じでハスに見ていたせいかもしれないけど夫による妻への裏切りの真意がよく分からんかった。ホントにスパイだったんだよね?となると妻はただのコマで愛情はなかった?なんか二人の関係の描き方ではこの辺全然ピンとこなかったし、東出くんなんの役割してたの?これでまたメジャー日本映画から距離を置く理由ができてしまいました。
日本版あゝ無情?!
なんか不思議な世界観~と思いつつ結局どーなったんだーと後々まで引きずったので、しっかりハマっていたということでしょう笑
見終えた後の爽快感や満足感はないけど、蒼井優の一風変わった演技と、高橋一生の本心見えない感じが普段は好きでないがこの作品に関してはそれが話にハマっていたようで、見入ってしまいました。異次元空間を体験したのか!?笑
主演二人の演技は好き
甥が泊まってる旅館の橋に怪しいやつ多すぎやんとか、妻が隠れる貨物船の箱 明らかひとつだけ目立ってるよねとかツッコミどころはありました。
しかし、妻が夫と二人歩むことを望むあまり 夫の甥を売るという狂気的なところ、そんな妻を夫が裏切り国に捨て行くところなどは結構好きでした。
ただ、空襲のとこまで描く必要性はなかった気がします。ラストがあまり好みじゃないです。もう少し余韻が欲しいような……。
自主制作映画が流れだし夫の裏切りがわかった時点でFin.にして、あの明るい曲調のままエンドロールに入ってくれたなら、まだもう少し好きになれた気がします。
言いたいことが溢れてきてしばらく放置しての感想
まずはモチーフになっている731部隊について。
いつだっただろうか。
731部隊に属していたという男性が顔を隠して報道番組に告発の形で出演していたのを見たのが知るきっかけではあった。1980年前後だったかも知れない。
戦後間も無くであれば彼は捕らえられて極東軍事裁判で間違いなく死刑。
ひっそりひっそりと息をするのも控え目に戦後の日々を暮らして来たに違いない。
その後その内容が明らかになるにつれ731部隊のおぞましさに驚愕したものだった。
医者だけでなく科学者は好奇心に打ち勝つには倫理観の有無もしくはその量でしかあり得ない訳です。
もし、こうだったなら?
人間の体とは?
そういう実験内容を克明に記録し続けたのが通称石井部隊である731部隊。
終戦時、その資料の完全引き渡しによって部隊の上層部は戦犯から逃れた。
そしてそれはミドリ十字という製薬会社に引き継がれその製薬会社の引き起こす薬害エイズにとさらに繋がっていく。
厚生省(当時)と製薬会社の癒着、そして帝京大学の安部教授を巻き込む血液製剤が絡む血友病患者のエイズ罹患。
悪夢は全然終わってなんかなかったのだ。
そういう事を、生きて来た中で実感として感じてた。
この作品においては、これでもかなり辛辣に描いたつもりなのだろうか。
こんなに簡単な?単純な?話じゃないと、まあ思ってしまうが、この話の主題はそこじゃない。
主題。
それは、妻の心である。
妻は自分の知らない所で夫が何事かを成そうとする事が嫌だった。
例えそれが如何に大それた事でも自分も夫とともにありたかった。
自分だけしか頼るものはない、夫をそういう状況に追い込む事、それが妻の望みだったのだ。
そして夫とともに成する者が自分である事、その高揚感が喜びとなった。
夫はそんな妻が足手まといになると確信していた。
だから妻を振り切った。
彼女が、きっと安泰であるだろうとの安易な推測で。
夫もまた こんな事で世界をなんとか出来ると考える若輩者である。
アメリカを世界大戦に引き摺り込む?
そんな事は連合軍はとっくに望んでいた事でありそのきっかけを作った結果のハルノートであるわけだが彼はそんな事は知る由もない。
そして真珠湾を経て日本は敗戦へと繋がる。
だから、そんな世界情勢は彼らにとってはネズミ一匹の動きにさえならない。それに右往左往する愚かな若社長なのだ。
女心 ただそれに言い尽くされるそれを
自分は世界というものを見たいという好奇心で捨てた男。
その夫婦の物語。
だから 言わば 遊びスパイと遊びスパイの妻。
という意味でこの題名はひどく風刺が効いているのである。
中国のプロパガンダまんま
731部隊による人体実験が真実であるという前提で全てが構成された悪虐日本帝国の自爆ストーリー。なんですか?この真っ赤っかな作品は(笑)
なんですかこれゎ?
これは、受賞してなきゃ絶対観なかった作品。だって、もともと原作も超薄かったし。
で、映画はもっと薄まってたという。。。ビックリだゎ。大学生の学芸会レベルの内容やん!ないゎー
蒼井優ちゃん泣かしときゃ良いだろうは、あまりにも可哀想だよーー。監督は何がしたかったのか。
反省だけなら猿でもできますけど。
ドラマ…
全体的には再現VTRのような映像で、衣装、台詞、舞台すべてがチープに感じてしまった。ドラマの劇場版だから仕方ないのか、映画とは呼べないと思った。ラスト、夫の死は偽装で妻はアメリカに行ったような匂わせで終わるが、結果論で、コスモポリタンだか知らんが、妻一人、負けるとわかってる日本に置いていかないと、全く共感できなかった。
楽しめました、いい映画。
妻を思う夫と、夫を信じる妻、二人の固いきずなを感じる、いい映画でした。
物足りなかった
後半もっと伸びてほしかったし、残虐なシーンがCUREと比べて、痛く描かれていないように感じた。コンプラに厳しい時代のせい?東出の演技は良かった。もっと軍人口調ならなお良かった。
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