スパイの妻 劇場版のレビュー・感想・評価
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最後スッキリとはいかないが、良く出来たオリジナル脚本と感心
黒沢清 監督による2020年製作(115分)の日本映画。配給:ビターズ・エンド。
良く出来た脚本(濱口竜介及び野原位+黒沢監督)だと思った。高橋一生夫婦が余興で作った映像が、最後に大きく生きる展開は、多少あざとさも感じたが、やはり鮮やかで見事。控えめで受け身の妻に思えた葵井優が、途中から寧ろ夫の上を行き積極的に反政府的に行動していく展開も、実に面白く、それが最後の意外性をより強く印象つけていた。
一緒に米国へ行こうとしたが、夫の高橋一生に言わば騙されて安全を確保されて、「お見事です!」と曰う蒼井優の演技も、とても印象的であった。流石の演技で、お見事。
満州731部隊による人体実験の告発が、主人公たちの行動目的になっていて、日本映画等では多分タブー視されている様な状況なので、かなり驚かされた。ただ、こういう普遍的な価値を重視する様な人間が本当に当時存在していたら日本人として嬉しいな、という思いは掻き立てられた。
きっと、夫高橋一生は米国で元気でおり、戦後渡米したとされた妻蒼井優と会うことができたのだろう。結局は夫婦愛の映画であったとは思うのだが、妻の安全を重視した夫と、何処までも一緒に行動したかった妻という、各々の違いが浮き彫りにされた映画でもあり、必ずしもスッキリとはせず、苦味の様なものも感じられた。
監督黒沢清、脚本濱口竜介 、野原位 、黒沢清、エグゼクティブプロデューサー篠原圭、 土橋圭介 、澤田隆司 、岡本英之、 高田聡 、久保田修、プロデューサー山本晃久、アソシエイトプロデューサー京田光広 、山口永、ラインプロデューサー山本礼二、技術加藤貴成、撮影
佐々木達之介、照明木村中哉、録音吉野桂太、美術安宅紀史、スタイリスト纐纈春樹、ヘアメイク百瀬広美、編集李英美、音楽長岡亮介、VFXプロデューサー浅野秀二、助監督藤江儀全、制作担当道上巧矢。
出演
蒼井優福原聡子、高橋一生福原優作、坂東龍汰竹下文雄、恒松祐里駒子、みのすけ金村、玄理草壁弘子、東出昌大津森泰治、笹野高史野崎医師。
演出がおもしろい
太平洋戦争時代の事件を題材に、夫婦の愛情と駆け引きを
描いた舞台のような演出のドラマ
脚本の原作ではどうか知らないが、事件の事は単なる
エッセンス的な役割としてみた方が、楽しめる。
しかしながらちょっと思想的な事が入るのと、それを
NHKが制作しているところが少し引っかかる。
NHKは影響力が強いのに偏向しているから始末が悪い。
隔された陰謀が少しでもあれば国全体を滅ぼして良いのなら、
滅びない国は古今東西無いだろう。
実際、この事件の対象の情報をアメリカのみならずどの国も
欲しがったし、研究を引き継いで兵器にした国は全て同じ
十字架を背負う。半面、今の医学に少なからず寄与してる
のも事実。
ただし、このドラマの筋書きではこの一連の事件があった
からアメリカが参戦したようにも取れるが、事実と異なる
事は言うまでもない。それをNHKが制作?という点
気に入らない。
が、この舞台仕立ての手法は好きです。
新しいタイプのホラー。
笑顔で車に乗る妻を見て途中で「拷問されればいいのに!」とまで思ったけど、拷問よりひどい仕打ちを受ける結末が面白かった。
もっと単純に「いい映画」を想像していた自分が甘かった…と思わせてくれる映画。素晴らしいです。
過酷な時代に翻弄される正義と夫婦愛
ベネチア映画祭銀獅子賞=監督賞受賞作ということで、公開初日に鑑賞した。
ベネチア映画祭の受賞作品は、良く言えば芸術性が高い、端的に言えば少々難解な作品が多い。本作も、らしい作品だった。
本作の舞台は、太平洋戦争前夜の神戸。貿易商を営む福原優作(高橋一生)は、満州にわたり、偶然、国家機密を目撃し衝撃を受ける。彼は、社会正義のため、その事実を公にしようとするが、憲兵隊に察知され、執拗に行動を監視される。妻の聡子(蒼井優)は、当所、夫の行動に疑問を持ち非協力的だったが、次第に夫を愛するが故に、夫と行動を共にするようになる。そして、憲兵隊の追求が厳しさを増すなかで二人はある決断をする・・・。
全編、通常作品に比べ、薄暗い画面を多用して、太平洋戦争前夜の先行き不透明な雰囲気を表現している。また、愛国心の塊のような憲兵隊長役の東出昌大の迷いのない、何かが憑依したような眼差しに狂気が宿っている。有無を言わせぬ恐怖感がある。この時代を象徴している。このような過酷な時代の中で、社会正義を貫くことが極めて困難であることを暗示している。
夫婦を演じる、高橋一生と蒼井優が本当の夫婦のように息がピッタリである。したがって、夫の行動を全く理解できなかった聡子が、夫と一緒に居たい、離れたくないという一念で、徐々に夫と行動をともにしていくプロセスに無理がない。蒼井優が安定した演技力で夫を愛し寄り添っていく一途な聡子役を好演している。
高橋一生も、蒼井優に負けず劣らず、社会正義を貫こうとする優作役を熱演している。従来の柔和な眼差ではなく、権力に挑んでいく毅然とした佇まい、眼差しが凛々しい。ちょっとした仕草、台詞に聡子に対する愛情を感じる。
終盤は切ない。社会正義を貫こうとしながらも、優作と聡子は懸命に生きることを選択する。互いを思い遣って生きようとする。
観終わって明るい気持にはなれないが、夫婦愛という言葉が強く心に刻まれる作品である。
正直なところ《困惑》しました。
2020年。黒沢清監督作品。
ベネツィア国際映画祭銀銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞おめでとうと、素直に喜べない。
告発(福原のスパイ容疑の原因となった、満州で日本軍が関わった事件)
その事件は過去の日本人がひた隠しにする事件で、事実なんだけど、
わざわざ今、日本の恥を世界にさらしてほしくなかった・・・
それが私の本音(日和っててごめん!)
映画は良かったと思います。
蒼井優・高橋一生・東出昌大の好演で1940年代の雰囲気もよく出ていたと思います。
やはり蒼井優ですよね。殺爆とした戦争中に美しさと艶っぽさで福原聡子を熱演。
積極的に夫の告発に協力する進歩的な妻を現実的に演じました。
主演にふさわしい働きでした。
憲兵服ってあんな綺麗な青色だったんだろうか?
東出昌大は長身なので一人だけ日本兵らしくない・・けど、リンチで剥がした爪を
福原優作(高橋一生)に見せ付けるシーンはゾゾっとした。
(そのシーンを映さないのに十分に震えた)
黒沢清監督らしい美しい洋館や蒼井優の衣装や髪型・センスの良さが光ります。
色使いも黒沢清らしく綺麗で様式的なのはいつもの通り。
聡子の行動で映画は急速に動き出して、優作の告発を後押しする。
裏切ったかに見えて実は・・・的演出も良かった。
優作が妻を主役に撮っていた映画が、ラストであっと驚く働きをします。
ここだけ、クスッと笑えた。
内容の割には暗すぎずに分かりやすい映画です。
なにはともあれ、黒沢清・ベネツィア国際映画祭・銀獅子賞受賞、おめでとうございます!!
監督御本人が喜んでらしたのが、なにより嬉しいです。
うがって見たから?
高橋一生好きじゃないんですよね。あと大作風の日本映画も苦手。そのせいかいろんなことが鼻についちゃって。蒼井優だけ気を吐いて昭和初期の銀幕女優みたいな話し方してたけど、他の人が普通なので哀れにも浮いてた。街中のセットピカピカすぎるでしょ、黒沢清ってディテール気にしない監督なんだ、とか。こんな感じでハスに見ていたせいかもしれないけど夫による妻への裏切りの真意がよく分からんかった。ホントにスパイだったんだよね?となると妻はただのコマで愛情はなかった?なんか二人の関係の描き方ではこの辺全然ピンとこなかったし、東出くんなんの役割してたの?これでまたメジャー日本映画から距離を置く理由ができてしまいました。
日本版あゝ無情?!
主演二人の演技は好き
甥が泊まってる旅館の橋に怪しいやつ多すぎやんとか、妻が隠れる貨物船の箱 明らかひとつだけ目立ってるよねとかツッコミどころはありました。
しかし、妻が夫と二人歩むことを望むあまり 夫の甥を売るという狂気的なところ、そんな妻を夫が裏切り国に捨て行くところなどは結構好きでした。
ただ、空襲のとこまで描く必要性はなかった気がします。ラストがあまり好みじゃないです。もう少し余韻が欲しいような……。
自主制作映画が流れだし夫の裏切りがわかった時点でFin.にして、あの明るい曲調のままエンドロールに入ってくれたなら、まだもう少し好きになれた気がします。
言いたいことが溢れてきてしばらく放置しての感想
まずはモチーフになっている731部隊について。
いつだっただろうか。
731部隊に属していたという男性が顔を隠して報道番組に告発の形で出演していたのを見たのが知るきっかけではあった。1980年前後だったかも知れない。
戦後間も無くであれば彼は捕らえられて極東軍事裁判で間違いなく死刑。
ひっそりひっそりと息をするのも控え目に戦後の日々を暮らして来たに違いない。
その後その内容が明らかになるにつれ731部隊のおぞましさに驚愕したものだった。
医者だけでなく科学者は好奇心に打ち勝つには倫理観の有無もしくはその量でしかあり得ない訳です。
もし、こうだったなら?
人間の体とは?
そういう実験内容を克明に記録し続けたのが通称石井部隊である731部隊。
終戦時、その資料の完全引き渡しによって部隊の上層部は戦犯から逃れた。
そしてそれはミドリ十字という製薬会社に引き継がれその製薬会社の引き起こす薬害エイズにとさらに繋がっていく。
厚生省(当時)と製薬会社の癒着、そして帝京大学の安部教授を巻き込む血液製剤が絡む血友病患者のエイズ罹患。
悪夢は全然終わってなんかなかったのだ。
そういう事を、生きて来た中で実感として感じてた。
この作品においては、これでもかなり辛辣に描いたつもりなのだろうか。
こんなに簡単な?単純な?話じゃないと、まあ思ってしまうが、この話の主題はそこじゃない。
主題。
それは、妻の心である。
妻は自分の知らない所で夫が何事かを成そうとする事が嫌だった。
例えそれが如何に大それた事でも自分も夫とともにありたかった。
自分だけしか頼るものはない、夫をそういう状況に追い込む事、それが妻の望みだったのだ。
そして夫とともに成する者が自分である事、その高揚感が喜びとなった。
夫はそんな妻が足手まといになると確信していた。
だから妻を振り切った。
彼女が、きっと安泰であるだろうとの安易な推測で。
夫もまた こんな事で世界をなんとか出来ると考える若輩者である。
アメリカを世界大戦に引き摺り込む?
そんな事は連合軍はとっくに望んでいた事でありそのきっかけを作った結果のハルノートであるわけだが彼はそんな事は知る由もない。
そして真珠湾を経て日本は敗戦へと繋がる。
だから、そんな世界情勢は彼らにとってはネズミ一匹の動きにさえならない。それに右往左往する愚かな若社長なのだ。
女心 ただそれに言い尽くされるそれを
自分は世界というものを見たいという好奇心で捨てた男。
その夫婦の物語。
だから 言わば 遊びスパイと遊びスパイの妻。
という意味でこの題名はひどく風刺が効いているのである。
なんですかこれゎ?
ドラマ…
全体的には再現VTRのような映像で、衣装、台詞、舞台すべてがチープに感じてしまった。ドラマの劇場版だから仕方ないのか、映画とは呼べないと思った。ラスト、夫の死は偽装で妻はアメリカに行ったような匂わせで終わるが、結果論で、コスモポリタンだか知らんが、妻一人、負けるとわかってる日本に置いていかないと、全く共感できなかった。
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