はりぼてのレビュー・感想・評価
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私たちははりぼてであり、政治家はカラスである
カラスが良い。カラスのインサートショットや本筋とは関係ない公園のカラス駆除のエピソードが挟まれるのだが、これが良いメタファーとして機能している。
公園課の職員が「カラス禁止」の立て看板を設置しながら言う。「カラスは看板の文字を読めないけど、公園に来た市民がカラスを監視してくれればいなくなる」。
富山市議会の屋根に大量のカラスが群がるショットがある。不正を働く市議会議員たちは、汚い金に群がるカラスのようなものだと言っているわけだ。そして、それは市民が監視をせねばならない。
その権力の監視役たるメディアがこの作品の主人公だ。地道な調査報道で領収書の捏造を暴き、多くの市議を議員辞職に追い込むことに成功する。だが、不正が次から次へと発覚し、次第に議員側もスキャンダル慣れしてしまい、辞職しなくなっていく。結局、何も変わらないことに愕然とする。
メディアが主人公だが、メディアを持ち上げるわけでもなく、自分たちもまた「はりぼて」であることを示唆して映画は幕を閉じる。市民も政治家もメディアもはりぼてから人間にならないといけない。
富山市の政務活動費不正受給
富山市の政治家たちのドキュメンタリー映画
チューリップテレビが政治家の不正を報道で暴く。政治家は不正が明るみになり不正に得たお金を返還し辞職する
チューリップテレビもコロナの補助金を不正受給して返還する。悪者しか出てこない
市町はコメントする立場にないですべて乗り切る。不正はしてなさそう
はりぼての正体。
今、日本の政界を揺るがしている自民党派閥による裏金問題。本作はまさにその壮大な前振りとも言える富山県で起きた自民党会派を中心とした政務活動費問題を描いたドキュメンタリー。
雄大な立山連峰を望む富山の街、その中でもひときわ近代的で奇抜なデザインの富山市庁舎。そこには不穏な烏の大群が群がっていた。公金という名のえさに群がる烏の群れが。
そこでは今まさに市議会議員給与引き上げ条例が市民の反対を押し切り可決されようとしている。それを主導した会派のドンに言わせると、今の給与では退職後年金だけではやっていけないからだという。しかしそれは市民も同じだ。また別の理由として議員は雪かきなどもやってるからだという。確かに雪国では少子高齢化で人手が足りないとはよく耳にするがまさか議員さん自身がやってるとはねえ、て議員がやってどうする。人手が足りないことに対して対策考えるのが仕事でしょう。まあ、実際にはやってないだろうけど。
このドンが行っていた政務活動費の不正が発覚するのを皮切りにとめどもなく不正があらわになってゆく。
ここからはまさにコントか漫才を見てるかの様相に。出てくる議員出てくる議員皆一様にすぐばれるような噓言い訳をしてはその後観念するといった感じで、まさに漫才のフリとオチといった具合だ。不正を働き心機一転出直した老議員が再び不正を記者から問われた時、俺にわかるわけないだろうと言い返した時には爆笑してしまった。そんな議員の再選を許したのは有権者だ。
その後もパターンは踏襲され、一見誠実そうな議員、汚職を熱く糾弾していた議員もやはりその後不正が暴露される。
議長を何度変えても不正が発覚するもんだから最終的に議員になりたての人間が選ばれていた。議員やってなかった人間しか清廉潔白な人間はいなかったというオチ。
また肝心の市長は終始傍観者ヅラして制度論的に口を出せる立場にはないとの一点張り、自分の部下が記者の開示請求を漏洩させてる事実についても議会のせいにして責任逃れ。まさに見た目通りの狸だ。
散々笑わせてもらい不正を働いた議員が成敗されてゆく様を見て溜飲が下がるが、後半では笑えなくなる。飛ぶ鳥ならぬ烏を落とす勢いだった取材チームが局によって解散させられてしまう。時期的には第四次安倍内閣発足時、チューリップテレビも御多分に漏れず忖度を強いられたということだろう。
だが取材チームはよくやった。民主制の過程で有権者に情報を提供するという報道の役割を十分に果たした。後は有権者に託された。
今回の裏金問題も予想通り検察は適当なところで手打ちにしようとしている。そもそもあれだけ派閥幹部の逮捕もありうるのではと期待させておいて会計担当者の逮捕で済ますなどと失望した人も多いはず。共謀の事実を証明できないからなどと聞いた風なことを言ってるが今まで散々人質司法でもって自白強要してきた検察が何を言うのか、国会議員に対しても同様に動機を自白させて起訴にでもなんでも持ち込めたはずだ。
所詮は政権と同じく検察も権力機構に過ぎない。彼らに期待するのは腐敗した政権に自浄作用を求めるくらい愚かなことだ。
政権も派閥の問題に矮小化してことを収めようとしているが、これでは政治とカネの問題を根本的に解決することにはならない。
結局は主権者たる国民に最終的な判断がゆだねられている。このような政権を許すか許さないか。ただ今回のことを次の選挙まで有権者が記憶してるかどうか、それ以前にこれで解決したと思ってる有権者も多いのではないか。
はりぼてという本作のタイトルの意味を考える。立派な富山市庁舎の建物、その中には公金に群がり市民のことなど全く考えてない議員しかいない。まさにこれをはりぼてというのだろう。だが、主権者たる国民が自分の主権を行使もせず腐敗政治を野放しにしている、民主主義を空虚なものにしてしまってる今のこの国の状況を見ていると、この国ははりぼての民主国家なのではないかと思った。
ウミは出し切らず隠すもの。
政務活動費を巡る、議員、市長、職員そして後援会の護送船団的悪事。何も富山市に限った話ではないのだろう。
JNNは「全国自治体を調べてみた」をシリーズにしたら良いのにと思いきや、(おそらく永田町からの圧に屈し)報道に支障が出る結末に。日本の暗部をさらに露呈する始末。
政治への不信を通り越して、そりゃ無関心にもなるわ。
余りにも稚拙な犯罪
第二の議員報酬とも称され、全国の地方議会で不正使用が後を絶たない政務活動費(政活費)、城崎温泉(豊岡市)に195回の空出張を繰り返した兵庫県議の野々村竜太郎の2014年7月1日の号泣会見がTVで報じられ呆気にとられましたね・・。
本作はその翌年、富山市議会で連鎖辞職騒動を巻き起こした不正議員への取材活動を描いたチューリップTVの報道ドキュメントです。
領収書の改ざんなどすぐにばれるのは子供でも分かりそう、余りにも稚拙な犯罪、謝罪したり開き直ったりする当事者と他人事のような為政者、地元の損得しか考えない市民が御用聞きのような議員を輩出してきたことは自明ですね、本作はまさに日本の政治の本質を突いた悲喜劇です。
当時、チューリップTVの報道キャスターで取材の中心人物でもあった五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)監督は、不正を働いた議員が悪いのは基よりだが単純に正義感で片づけられない根の深さを感じている、はりぼてとは日本の戦後民主主義を象徴する言葉として用いたとも語っていた。
退社シーンでやっぱり会社に圧力があったのかと思ったが真相は不明、五百旗頭氏は石川テレビに転職後も石川県議会に矛先を変えた「裸のムラ」を撮っています。
さんざん報道されているので映画にしてまで観ようとは思いませんでしたが、色々考えさせられる良作でした。
もう誰も信じられない
おもしろすぎる!使い込みは富山の風土病なのかとすら思うほど。最初の中川ってジイさんが巨悪なのかと思ったら次の五本というジイさんのほうがたちが悪いし、クリーン丸出しだと思った村上という人もまったく同じ。誰が最後まで立っていられるのかゲームみたいで面白すぎる。いろんな騒動があったのに何と制度大好き市長はまだいた。熱血ストーカー議員のお口直し的な挿入も愉快。テンポのいい編集も良い。
ジャーナリストの見本
こういう追及ができる、そしてそれを映画にできる、そのことに関係者への敬意を表したい。これに比べ、権力の不正や大手芸能事務所の性加害について何も報ぜずに、日々、全国のどこで火事が起きたとか、逮捕された被疑者の自宅からブツが発見されたとかというプロレス中継まがいの報道しかしない日本の大手マスコミが哀れにしか思えない。
絶対笑われないと構えるひとこそ、笑えてしまう
政治ドキュメンタリーはわりと好きなジャンルなので観てみた。正義感あふれる若い記者2人が、富山市議会議員にはびこる不正なカネ疑惑を切り裂いていく。
ターゲットにされた議員は、政治資金の明細を調べ上げられ、突っ込みを受け、やがては公にされて詐欺の刑事告発を受ける。この過程で、辞職したりする。政治活動の名のもとに、自らの懐を肥やすために架空領収書を切ってしまう議員たち。皆がやっているからだとか、政治とはこんなものだとか、そういった風習がはびこっていたのかもしれない。
それにしても、弁明、謝罪の過程で晒す人間性は生々しく、生真面目であるがゆえに滑稽で、どんな芸人のコントよりも、逆説的におもしろい。芸人や芸人をこころざすひとこそ、こうした政治ドキュメンタリーを観てネタをつくってほしい。笑いをとろうとするひとより、絶対笑わわれないぞって構えるひとこそ、逆に笑えるというパラドックス。
それにしても、議員ってどんな仕事しているんですかね。一旦当選してしまえば任期が確定して、既得権益ごと引き継げば、そこにあぐらをかいてしまって仕事をしないひとが多数ではないですか。それをはねのけて、仕事をするひとって、やはり、精神的な強さ、信念のあるひとじゃないと勤まらないでしょうね。
報道陣の本気を見せられた。権力に臆さず不正を追及するというマスコミ...
報道陣の本気を見せられた。権力に臆さず不正を追及するというマスコミの本懐である。国レベルでも大手テレビ局は頑張ってもらいないものだ
制度論
あっけなく崩れて、皆、頭を下げて退場する。その様は滑稽でしかない。しぶとく居座る人の論は解釈が取れぬが、理が通らないことを解せぬ厚顔がのさばる。そんなフィルターを置いたつもりもないが。皆、纏めて処分してしまえとも思うが、機能しない民主制が歯痒い。
メディアが機能しなければ今回の問題が浮かぶこともなかった訳で、市民による監視とメディアの重要性を示している。しかし市民の方は扱いが軽いかな。メディアは気まぐれなので、より市民の方に着眼して欲しいもの。
再三でてくる森市長。この人の語る制度論には嫌悪感しかない。確かに制度は議会が作るもの。しかし正しい市政のために制度の下書きをして、提案するのは行政の役割。議会が作った制度を踏襲するだけの市長なら役人でよい。何のために公選されているのか?まやかしの制度論をきっちりと突くべきだろう。
お笑いな悲劇
出でくるおっさん、みな、あまりにも薄汚く知性もなく、この人らが選挙に出て当選するて、どーゆーことなんですか、と思う、たまたま自民党員なる謎の人らが人口対比たくさんおられる富山県なのか、相対的に日本国の縮図であり本当にこのような高額な報酬もらいさらに血税を泥棒するような人らが議員とかなんとかいうタイトルで人前で偉そうにしているが反知性というかノー知性な方々で、富山だけじゃないよな。自民党とか維新とか選挙すれば勝つわけだしな。
せっかく待ちに待ったこの映画、やっとネット配信で見られたのでもう一度見たいがあまりにおっさんたちがあまりに汚らしくて2回目見る気になかなかなれない。制度として、とかなんなの。市政のトップの人の無責任ぶりも笑える。それに対しチューリップ の報道の方たちの潔さよ。
トップの人が嘘をついたり横領したりする日本国なので、畏れ多いほどに美しい立山連峰を据えたこの土地でも当たり前のようにこうなってしまうし、また、なにかおこぼれを期待してか知らんけど、自民党の党員も辞めず税金もなんも無駄遣いされていると思いながらまた自民党に投票してしまうのだろう。農協の人とかなのか。意味不明。
議員の給料10万上げると。
生活苦しいとか、議員辞めたら生活苦しくなるとかおかしいこといっぱいいってるが、市民は
月に10万も収入なくて苦しい生活してる人かいるのに、と嘆き怒っている。
よその国なら、これだけの茶番からすもたぬきもびっくりな恥ずかしい人らにはまず支援者が怒り支援者が問い詰めるだろうと思うよ。日本てダメな国。ジャーナリストもほとんどだめだけどこの監督さんたちのような意欲と使命ある人もたくさんおられる。
日本て、ゲスなところだね。あらためて。 そしてゲスにゲスされても怒らないところだね。五百旗頭さん皆さまどんどんやってほしい。応援したい。
永久に追求し続けること
不正を働く人たちは、見つからなければラッキー、喉元すぎれば熱さ忘れるといった感覚なのだろう。
だとしたら、不正を許さない立場の人たちも同じぐらい粘り強く追求を続けていかなければならない。
メディア側も市民も、ものすごく耐久力が必要だと思った。
誰かが疲れたら次の人が、年を取ったら若い人が代わりに、飽きることなく引き継いでいかなければいけない。
コレクティブを見終わった時と同じような気持ち。
監督が想像していたより若くて、今後の活躍が期待できそうで、それが唯一の希望。
コメディータッチだけど、これ現実です!!
大きな選挙が近いので、今一度選挙の大事さを教えてくれる映画を〜〜
全国の町議、村議、市議、県議、国会議員の全てで
同じ様な事が行われて、国民はみんな
クソオヤジどもに喰いものにされてるんでしょうな〜
これはもう立派な搾取〜〜〜
映画の最初の方で
若い記者に威圧的に喋ってたクソオヤジが
事件が発覚した後、失踪!って小学生か!!
その後はナメクジに塩の様にヘナヘナになっていく。
でも、それはほんの序章でしか無かった!!
同じ様な悪事が次々と発覚し
一人また一人と不正の証拠を突きつけられていくのですが
そのうち、だんだんとクソオヤジ議員どもは
書類も修正してお金も返したんだから
終わった事だと、
厚顔無恥に居直り始めやがる!
笑うしかない脱力の連続の後
、背筋が寒くなる様な無力感
ぜひ、この映画を観て、笑って呆れて
そして真剣になって下さい。
で、月に8回ほど映画館に通う
中途半端な映画好きとしては
昨年の「新聞記者」を観たときも思ったけど
マスコミの頑張りがいかに大切なのか!!
マスコミは役人や為政者をウオッチして
これはオカシイ?と言う事を
どんどん視聴者や読者に
報告するのが仕事のはず。
なのにいつの間にか今のマスコミは
役人や為政者の広報に成り下がっている。
今回のチューリップテレビのディレクターや記者は
本当に頑張ってたのに最後は〜〜
画面のクソオヤジの加齢臭が
漂ってる気がしたのは私だけだろうか?
時々、富山の街を見守る様にインサートされる
神々しいまでの立山連峰の姿〜
あのお山に顔向けできますか!
おそらくは不正を行なっていると言う自覚すら無いんじゃ無いの!
こんな腐った世の中で私に出来ることは
次の選挙でよく考えて、たった1票を投票するしかないのか?
もう一つ、せめてこうしてレビューを書いて
あなたも選挙にちゃんと行ってね!とお願いすることくらい。
あなたもご自身の地元の次の選挙には
ちゃんと考えて投票してくださいね。
ああ、若い候補者でも安易に投票しないで下さいね。
数年前にあの「号泣県議」を出してしまった
不甲斐ない県民としてのせめてものお願いです。
久々の映画館 3月20日以来 その後オリンピックが中止となり日本中...
久々の映画館 3月20日以来
その後オリンピックが中止となり日本中がパニックになって
映画どころではなくなった
で再開1本目
富山の小さいTV局のドキュメント番組をベースにした作品
ドキュメントだがコメディ しかし笑ってていいのか…という
議員たちのすっとぼけぶりとかこずるさとか
演技での表現は無理レベルだ
演技論について考えさせられる
ホントの会話ってつるつるしゃべれなかったり
主語と述語が対応してなかったりする
でもそれを劇で見せるとわかりにくくなる
分かり易くするには言語明瞭である必要がある
でもリアルからは遠ざかる…
最初議員に丸め込まれる記者が監督のひとり
こいつの無邪気さも最高のスパイスになっている
一番の悪役は市長(あ 役ではないか悪か)
なんかよくわからん制度論で
自分は当事者ではないとケムに巻く 要は逃げる
最後はダサいジャケットを着てオールバックになっている
口先だけ こういう人間が大嫌いだ
古臭い議員の方にまだ親しみを感じるほど
どうでもいいほのぼのネタを隣の女子アナが読んでいるときの
キャスター(もう一人の監督)の微妙な表情
記者の異動とか退職とかが圧力やそんたくを匂わせる
テーマ音楽 タイトルも素晴らしい~愛すべき人間の性~
あと山根基世のナレーションがよかった
抑揚を押さえながらちょっととぼけた感じ
あぁ面白かった
他人ごとじゃないッス
私が住む石川県金沢市と映画の舞台:富山県富山市はお隣で県庁所在地同士、つながりは深く、特有のライバル意識があり、仲の悪さもよく指摘される関係である。また、どちらも保守王国で体質的に同じではないかとの思いがある。この映画への注目度が高いのも当然だ。
映画では、疑惑の議員に対してチューリップテレビの二人がインタビューをする。ファーストコンタクトでは議員側は余裕しゃくしゃくである。しかし自分に突きつけられた刃が「真剣」であり、かわすことができないと悟るや表情が一変する。急にしどろもどろになるか、沈黙せざるをえない。そして場面は急転直下、辞職会見のシーンに変わるのだ。その際の表情は数日前の「わしは先生様でござい」と言わんばかりの自信満々なものとは打って変わってこの上なく情けなくしょぼくれたものとなる。
この変貌は観る者に滑稽に映り、客席からはたびたび笑いが起こった。これは本当に現実の出来事か?フィクションではないのか? そう疑ってしまうほどに呆れた展開が続く。渋りはてた彼らの言動はコメディそのものではないか。編集テクニックのなせる技もあって、登場する富山市議会議員達はあまりにも愚かしく、あまりにも非常識に描かれており、その傍らにいる富山市長は「私はコメントする立場でない」とあまりに無責任な印象を与える。
人間、弱みを突かれたらなんと情けない姿を晒すものか。
攻めている時は勇ましいが、守りに入った途端に醜い本性を現す。
ひるがえって自分は大丈夫だろうかと考えた。私は政治家でないし、権力者でもない。会社のお金、人のお金を着服するようなことはしていないし、何かしら不正に加担している自覚もない。しかし、自分の行動が100%オープンになったと仮定して、100分の100、天地天命に誓ってやましいことはない、と言い切る自信はない。たとえば、皆が職場で働いている時間中、プライベートなことに時間を使うこともある。もし誰かにそこを突っ込まれると返答に窮すだろう。
本映画のように数千万円の税金が不正に流用されるレベルではない。しかし私の”勤務時間中のサボりのようなもの”は、事の本質においてたぶんそれほど変わらない。言わば本人からすればちょっとしたズル。金銭感覚に大いにズレはあるにせよ「ま、これくらいは」と思っている部分において、議員も私も変わらない。議員の場合は市民の税金を着服したことになるので罪は大きいが、私だって会社から給与を得ているのだ。もし私のズルが発覚し、部下からどういうことかと詰め寄られたとする。私は社員たちの前でとんどもない醜態を晒すのではないか。そんな怖さを感じた。
富山市議会議員の世界にあまりにも非常識な慣習がはびこっていたために、非常にわかりやすい内容の映画となった本作。ただし疑問もいくつかある。なぜ五百旗頭氏は退職し、砂沢氏は異動になったのか。チューリップテレビとの間で問題があったのか。ならばこの映画をチューリップテレビが配給しているのもよくわからない。また、不正に着服された数千万円の政務活動費は、何に使われたのかが明らかでなかった。単に議員のポケットマネーになったのか、それとも何らかの政治活動に回っていたのか。不正に手を染めなければならなかった根底をえぐって欲しかった。
そして身近で素朴な疑問。我が街・金沢はどうなのか。ぜひ対岸の火事とせず、地元メディアの検証を期待したいところである。五百旗頭氏はチューリップテレビを退職して石川テレビに来たらしい。そのうちお会いする日も来るかもしれない。
シリアスなポスターとは裏腹に能天気なテーマ曲が爆笑を煽る爆笑エンターテインメントドキュメンタリー
2016年富山県のローカルテレビ局チューリップテレビの取材で明らかになった市議会のドンと呼ばれる議員による政務活動費の不正使用。この報道を皮切りにまさに芋蔓式に不正が発覚し14名の市議会議員が辞職するという未曾有の事態に陥った一部始終をチューリップテレビのスタッフの目線で追い続けたドキュメンタリー。
上記のようにあらすじをまとめると堅苦しいイメージになりがちですが、これが驚くべきことに随所で思わず爆笑してしまう完全なるコメディ。どうしようもなさすぎて失笑するしかない弁明を真顔で開陳する議員、つい数日まで繰り返した前言をシレッと撤回する議員、議員として以前に人としてどうかしている行為に手を染める議員、次から次に現れる議員達が本人達の意図とは裏腹に笑いをかっさらっていくのがとにかく痛快。そしてその笑いを随所で盛大に後押しするのが映画のテーマ曲“はりぼてのテーマ~愛すべき人間の性~“。この素っ頓狂なまでに呑気なサウンドが炙り出すどうしようもない政治腐敗に呆れながら腹筋がキリキリ痛みます。そしてタイトルの“はりぼて”が何を意味しているかを繰り返し映像に叩きつけながら、その批判の目をしっかり自分達にも向ける真摯な態度にピリッとした気概もしっかりと滲ませます。
本作の監督の一人、五百旗頭幸男氏はその独特な苗字でピンときましたが私と同郷。辛辣なテーマを一切損なうことなく盛大に笑えるエンターテインメントに仕立て上げたセンスに触れて勝手に誇らしい気分になりました。
底なし沼に加えて、組織人としての難しさも
富山市議会が政務活動費問題で大変なことになっていたのはニュースで知っていたのですが、発覚は地元の小さなテレビ局の丹念な仕事の成果だったとは知らなかった。
次から次へと不正が発覚する議員の他にも、不誠実な対応の市長や誰に向かって仕事をしているのか分からない市役所の職員など困った人物が勢ぞろいで、すっとぼける相手に対して鋭い追及をする2人の記者が格好いいのですが、最後は田舎の閉鎖性、保守性というのか意外な展開もあり、時折差し込まれる動物の絵も効果的で、あっという間の上映時間でした。
しかし、ベテラン議員がいなくなることで、なんと一期目の議員が議長になるなど、議会のチェック機能もさらに落ち、また頼もしそうな発言の後に不法侵入で有罪になっても辞職しない議員とか、色々ありすぎ!
最初の悪い奴も、素直に責任を認めて辞任するだけ後の奴よりはマシかなとか思いつつ、やっぱりみんな選挙に行こうよと思ったのでした。
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