アングスト 不安のレビュー・感想・評価
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狂人の視座
狂人が出てくる映画は数多いが、ここまで徹底的に狂人側の視点に立った映画はなかなかない。お蔵入りになった理由もよくわかる。この映画は狂人の精神状態を常人に体験させようという映画なのだ。それは不快に決まっている。
ただ、不快かもしれないが、ものすごく貴重な体験でもある。この世界にはこの映画の主人公のような理解するのが困難な人間は現に存在しており、そういう人間とも社会の中で遭遇することもあるのだ。そういう人物を追体験することは、観客の視野を広げ、世界の理解を深める。優れた映画は、観客に普段の視点とは異なる視座からの世界を体験させ、世界の見方を変えてくれるものだが、本作はまさにそういう作品である。ただし、美しい視座を与えてくれるわけではない、とびきりゆがんだ世界の見方を与えるので、注意が必要だ。
この世界には、こういう常人の理解を超えた行動をする人間が現にいる。そういう人間の視座を体験することは確かに貴重な機会である。
この超絶的に奇妙なカメラワークに心酔しっぱなし
83年に本国公開された際はあまりの衝撃ゆえ1週間で打ち切りになったとか。出所したシリアルキラーがまたも衝動に駆られて身を疼かせる本作は、まるで犯人の精神状態を体感するようなヴィジョンが生々しく展開する一作だ。が、公開から40年近く経つ今となっては、ホラー描写に震え上がることはなかったし、主人公の行動が笑ってしまうほど悲しく滑稽に見えることも多かった。
逆に、本作が今なお誰にも越えられない鉄壁を持っているとしたら、その筆頭に挙げるべきは超絶的なカメラワークだ。主人公の周囲をふわりと漂ったかと思えば、突飛な行動に合わせてカメラも突発的に感応し、またある時には主人公を「やや斜め上」から見つめる。さらに屋外シーンではどうやって撮ったのか見当もつかない超俯瞰が炸裂。見れば見るだけ本当に奇妙で、目が離せなくなる。まさか衝撃、震撼ではなく、魅了、心酔させられるとは。私は頭がおかしくなってしまったのか。
この映画のもっとも怖い部分は「実話」ということ…
「ある幸せの家庭に犯罪者が突然やってきて一家を殺す」という映画はわりとあります。
代表的なところで言えばファニーゲームなんかがそれでしょう。
しかしそれらの映画はだいたい「幸せな一家が幸せな一家の視点から見て、殺人鬼に壊されていく」というものでしょう。
これは殺人鬼から見た視点で『なぜこのような行動をとったか』というモノローグ付きで殺人が行われていきます。
こういう作品はなかなかありません。
この映画よりグロテスクな作品はいっぱいありますが、この映画は何故か全ヨーロッパで上映禁止になりました。
もっと残酷な映画が他にあるのになぜ禁止になったか考えると『主人公の気持ちが理解できてしまうから』なんだと思います。
殺人鬼の気持ちが理解できてしまうことこそが他の映画よりも最大のホラー……
しかもこの映画は実話です。
必要なので観ることにした
ホラーとスプラッターは大嫌いなので、絶対観ないことにしている自分。
なぜ禁を犯し、自制を解いたかと言うと
大切なフォロアーさんが僕の「桜桃の味」に下さったコメントに、ふと本作に触れる一文を残して下さっていた事と、
もう一つ、一昨々日、職場で僕は大変な経験をしてしまったからなのだ。
つまり、
会社の立ち話で最近話題になっていたのは
・お隣り中国で日本人駐在員の家族が立て続けに刃物で襲われ、そして
・日本国内でも先々日は福岡のマックで、そして
・先日は僕が住む街のバス停でも、通り魔が中学生やサラリーマンを次々と包丁で刺した。
犯人は徒歩で逃亡中であり、現在報道で大騒ぎになっている。
・なぜだろう、世の中のみんなが恐ろしく不安とイライラを抱えていて、殺傷沙汰や戦争が頻発している昨今。
それで、
仕事中に同僚との何気ないやり取りがあったのだ ―
「僕だって本心をむき出しにすれば包丁でこうするかもよ」と笑って言ったらば、彼は
「ちょ、、やめてもらえる? 亡くなったのは友人なんです。さっき知ったばかりで」と急に泣きながら場を離れた。
だから、「何が起こったのか」を、僕は急きょ、知る必要が出来たのだ。
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「この問題」は、実は以前から僕の課題でもあって、精神科医の講演会で挙手して質問を投げかけた事もある、
Q:私「患者は犯罪を犯しますか?その確率は?」
A:ドクター
「よく尋ねて下さいました。精神疾患の患者さんの犯罪発生率は健常者の10分の1です」
「報道と記憶に強く残るので病人はやりかねない人々と思われがちですが、実際は病人は犯罪を起こしません」と。
では“正常ではない状況の人たち”はどのように裁かれるのかも知りたくて、森田芳光の「39.刑法第三十九条」も僕は観ている。
ずっとこれまで、病者との付き合いが多かった僕にとっては、今回、同僚を泣かしてしまった不始末を、改めて消化する義務が生じたのだ。
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本作、
猟奇殺人を繰り返す男の
「供述調書」と
「医師の鑑定の所見」と、そして
本人の独白 (ナレーション )だけで成り立っているシナリオ。
徹頭徹尾、本人の目線だけでスクリーンは完結する。
何も納得することも、
学習することも、また同情することもなく、鑑賞を終了した。
空虚な思いだが、友達を失った同僚がいる職場に今から戻るところだ。
題名通り!視聴後も不安でいっぱい
色んな国で上映禁止になった映画。
大丈夫でしょうーと軽い気持ちで視聴したけれど、
不安でいっぱいな気持ち、、。
ずーっと心がザワザワしていました。
遠くから撮影するわけではなく、
常に犯人の顔を映したり、後ろ姿を映していた。
サイコスリラーの映画って大体被害者の泣き叫ぶ演技がフィーチャーされがちだが、この映画は徹底的に犯人の演技が際立つように、被害者たちは全体的に控えめに演技されていた。それかもう亡くなっているから本当の反応なんて分からず、犯人の語った被害者の状況だけだとあのような様子だったのかもしれない。
後犯人は躁鬱気味なのかな、
BGMが変わるたびに犯人が全然違う人間に入れ替わっているみたいで戸惑った。
靴音や水の音、すべての環境音が他の映画と比べて
大きめなところも不安を感じる要因なのかな、
本当の事件では飼い猫も惨殺されていたけれど、
映画の中で飼われていたワンちゃんは元気にソーセージを食べていて良かったです。
下手なスプラッターよりも気持ち悪いと嫌悪感が出る映像
煽りすぎ。
この映画を絶賛する奴とは気が合うはず
本物の異常が今、放たれる。後悔してももう遅い。
原題
Angst
感想
世界各国上映禁止、常軌を逸した実話を描く、映画史上最も狂った驚異の傑作。
面白くはないがある意味凄い映画だと思いました。それほどグロいとも思わなかったです。ただ嫌悪感は残ります。
自分ではスマートにやってるつもりが雑だったり変な行動をしてたり、テンポが悪かったり…だがこれが殺人の生々しい映像なんだなと思いました。
ドアノブに足を縛るは意味不明です笑
斬新なカメラワークや音楽、冷たく陰鬱なトーンも良かったです。
犬が可愛いのと娘が美人でした。
実際の事件では3人を7〜11時間に渡る素手での拷問の末に絞殺したそうです。
実際は犬じゃなく飼っていたのは猫。そして猫も殺害されたそうです。
殺人鬼ヴェルナー•クニーセクの言葉
「女性が私のために恐怖で震えているのが大好きだ。それは中毒のようなもので、絶対に止まらない」
「私は単に殺人への欲望から彼らを殺した」
彼に下された刑はー終身刑
女ドライバー全くそそらんがそれでもええのか
生理的に堪える咀嚼の音
行ったきり来たりの不可解な行動
タイガージェットシンばりのタオルを凶器にした攻撃
寄りすぎのカメラ
観ている方のアタマもぶっ飛ばすマーターズ以来の怪作。
50点
アレックスシネマ大津 20200818
こみあげる嫌悪感
カルトになっていてカメラワーク、Erwin Lederの演技、ナレーション、サウンドトラックなどがプロパーから賞賛されている。
今ではカメラが小型化しブレ補正も進歩しているので身体にくっつけて顔を近接でとらえる体幹と連動するようなカメラはよく見られるが1983年に既にそういうカメラワークを見せていた。
頬が痩けすきっ歯でぎょろ目のErwin Lederに不安をおぼえ、犯行は即物的で人間味がなく、見る者が凶行に加担しているかのようなナレーションがかぶり、暗澹たる気分をもたらす映画に仕上がっている。暴力描写のため長らく上映禁止にされていたそうだ。
個人的にはやはりヨーロッパ製ということにつきる。
しばしば言ったことがある見解だがロジェのマーターズとアメリカのマーターズは別物。クオリティもそうだがクオリティというより暗度と湿度が米欧では天地ほどもちがう。
それはアメリカで再製作したハネケのファニーゲームにも言えるし、ロジェがアメリカへ進出してつくったトールマンにもいえる。アレクサンドルアジャにしてもHaute Tensionとアメリカでの仕事は質感がちがう。
アスターの映画はとても恐ろしいがそれでもやっぱり欧映画とはちがうアメリカ的乾きがある。
Fabrice du WelzのCalvaire(2004)は変態村と邦題されてしまっているのだが、ようするに変態であると定義するほかない退廃と暗渠がヨーロッパにはある。それが上質なホラー素地になるのは言うまでもない。
Imdb7.2、RottenTomatoes100%と73%。
Gerald Kargl監督にはこれ以外のしごとがほとんどないが共同脚本と撮影を担当したZbigniew Rybczyńskiはその後もミュージックビデオやショートなど製作のほかコロンビア大や女子美大など各国で教鞭をとったことがあるそうだ。
大筋を実在した犯罪者とその事件にもとづいている。St. Pölten murdersの項を検索したら事実はもっと酷かった。モデルとなった男は幼いころから虐げられやがて加虐が趣味になり小動物を殺傷するようになり・・・世の殺人鬼成長行程を踏襲している。オーストリアでは死刑が廃止されていることもありいまだ存命だそうだ。
殺人は爆発
私には主人公にとっての殺人とアーティストにとっての作品づくりが同じ行為に思えました。芸術は爆発、殺人も爆発。多分、監督もこの殺人鬼に対する衝動的な好奇心からメガホンを握ったのだと思う。(でなければ全額自費では作らない。これが最初で最後の作品であることもそれを物語っている)
後半は飽きてしまったけれど見る価値はある。冒頭から主人公の"非現実感"が滲み出ていて撮り方が秀逸だなと思った。他人から見られることの恐怖もよくわかるし、ソーセージを貪るシーンも迫ってくるものがあった。
正直、私には他人事に思えないんですよね、主人公の境遇や心理状態が。彼の訳のわからないとされる行為が、私にはなんだかわかる気がするんですよ。ラストの殺人現場周辺の時間だけが止まり、それ以外(世間)は動いてるシーンを見てると物悲しくなってきました。
2年位前に公開された時に見逃し、再上映された今がチャンスと思う一方、GWに見るべきか悩みました。けれどこういのこそ映画館で見るのが最適だし、実際に見て正解。このチャンスを逃したらポスターの顔がずっと尾を引くことになっていたと思う。(こういうのってポスター画で既にトラウマを残してくる。個人的な話だがマタンゴはそれで20年くらい引っ張った)
時代だからなのか麻痺しているからなのか、公開禁止になるような代物とはあまり思わなかったです。クリーンシェービングとかに通ずる作品だなーと思いました。もうこの手の映画は見ないかもなー。
未体験ゾーン
一家を襲い、片付けるまでのほぼワンカット(?)のシーンは必見
狂気に満ちた表情と動作、思考を体験できるのは素晴らしい
本能と直感で突き進むように見えるが、本人は至って冷静である。計画に成っていない計画を「完璧な」と語るところも狂人の思考が垣間見える
特に遺体を引き上げるシーン、殺人をした事実を改めて認識し興奮するときの動きは妙にリアルで恐ろしい
幼少期から自身のサディズムに気付き、それを恥ずかしさを感じる周囲の目に共感しつつも、肯定し生きてきた結果。
そしてそれが実際の事件であり、実際の犯人が3日間の仮釈放期間で事件を起こしたという事実。まだ終身刑に服している(現在の動向は自分には見つけられず)という事実はなかなか衝撃的なものである
時間も90分程度で気疲れなくみられる限界を攻めてて良い
グロ描写も個人的にはマイルドめなので"これ系"が大丈夫な傾向が少しでもあればみんなに勧められる
※あとなぜか懐いてしまう犬かわいい
カメラワークが絶妙
シリアルキラー好きとしては見逃せない!と配信終了直前に鑑賞。
カメラワークが魚眼レンズで絶妙な定点撮影かつ上下に揺れまくったり、俯瞰で撮ってたり、オリジナリティがすごい。
刑務所から出てきて即日一家殺人するほど溜まってたのねぇ。被害者の母親の、え?なんでそこで逃げないの?ってところも、現実を理解できないのと咄嗟のときって人間ああなるんだろうな、ていうリアルな感じが逆にいい。
娘が片足をドアノブにくくり付けられてた時も、絶妙な部分を固定してて笑った。スタイルが良くて手足が長いと逆に届かないのか…。
一家を殺して、車に乗ったところで血まみれだけど?!と心配したら、台所で水浴びしたり、移動しようとしたら他のマダムの車にぶつけて「出てきなさい!」って言われて半狂乱になって首と体を高速でぶりんぶりん揺らすとことか、精神疾患ではないけど常軌を逸している人間のギリギリの精神状態ってあんな感じなのかな。
40年前の作品だから、昔テレビで観たような映像の色味や雰囲気で女の子も昔の髪型とメイクなんだけど、主人公は10年もムショにいたら時代遅れだって言ってたけど、一番現代っぽかった。
見始めた時は最近の映画かと思ったくらい。
ベーシックは普遍的なんだなぁ。
「事件を映画化した」わけではない
実際にあった事件を映画化!という宣伝文句を信じて見に行ったら、全然違いました
「実際にあった事件を元にした映画」で、内容はかなり違います
実際の事件は相当場数を踏んだ殺人者ですが、この映画の主人公はまだ全然殺人に慣れていないシリアルキラーが試行錯誤しながら必死に人を殺す、といった内容です
あー、こういう失敗するって聞いたなあ、みたいな内容です、とてもよく調べて考察したと思います
上映がすぐ止められたのは、残虐な殺人シーンとかではなく、死体に対して…のシーンのためだと思います
そういう内容だと理解して見れば、とても良い出来だと思います
特にカメラワークと音楽と犬は出色の出来でした
【エンタメ要素が一切ない、極北の殺人実録映画。ギャスパー・ノエ監督は本作を60回鑑賞。1983年公開時、本国オーストラリアでは1週間で上映打ち切り。ヨーロッパ全土で上映禁止になった作品。】
<Caution !
本作は1980年1月にオーストリアで実際に起こった一家惨殺事件を描いております。本作は娯楽を趣旨としたホラー映画ではありません。実在の殺人鬼ヴェルナー・クニーセクの心理状態を探るべく、制作されたスリラー映画です。特殊な撮影方法と奇抜な演出方法は観る者に取り返しのつかない心的外傷を及ぼす危険性があるため、この手の作品を好まない方、心臓の弱い方はご遠慮くださいますようお願いいたします。又、ご鑑賞の際には自己責任において覚悟して劇場にご来場ください・・・。と、小さい小さい文字で、当時のフライヤーに記載されている。>
◆感想
・殺人鬼ヴェルナー・クニーセク(アーウィン・レダー:良く引き受けたなあ・・。)が仮出獄してからの画面から伝わって来る、緊迫感が尋常でない。
・背景にずっと流れる冷え切ったエレクトロニックサウンド。
・当時、どの様に撮影したのか、ヴェルナー・クニーセクの焦燥と不安に駆られた異常な行動を俯瞰した位置からカメラが長廻しで、捉えている。
・”獲物”を探すヴェルナー・クニーセクの心理状態をアーウィン・レダーの抑揚のないモノローグで綴る。
<劇中で語られるように、ヴェルナー・クニーセクは幼少期、母と祖母から愛されず、それがトラウマとなって、殺人鬼になっていった。
その中で、彼自身が持つサディストの性癖が開花し、更に暴走して行ったのである。
ジェラルド・カーグル監督は、今作が唯一の作品であるが、相次ぐ上映禁止により、全財産を失ったという、曰く付きの作品である・・。
嗚呼、不安だ・・。
2021年9月12日 コロナワクチン2回目接種を終えた後に鑑賞。>
ヘンテコカメラワーク
見掛けたら側には居たくない奴
演技ではあるが完全に病んでいるものの表情でちょっと凄い(笑)
不安の強い表情からじっとしていない様子まで、異常になった事は理解出来るが、殺人を犯した統合失調症患者が10年の刑期で出所するのは恐ろしい。
出所後に街をフラフラ出歩いて、自身の行動を解説していくが、ただただ不安感に煽られてその場しのぎで動いているだけで、この狂人の“計画” とやらは狂いっぱなし。
全編に渡り、一方通行で見た目も非効率、物語としても助長と感じるし、内容も不快なら作品としても狂人が無軌道、無計画に他人を殺害しただけの作品であったと思う。
このよく分からない(分かりたくない)行動を延々と見せられ、観ている側としてこの落とし前はどうつけられるのか?に向けられてくるのだが、リアル路線と言うか…あっさり終わってセリフによる説明で終わってしまうので、「そんなんで終わり?」ってなった。
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