「地味だがどんな青春映画よりも胸にささる傑作」ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
地味だがどんな青春映画よりも胸にささる傑作
これはわたしの青春時代だからだ。
今作を観て改めて、共感性がどれだけわたしと映画にとって大切かを感じた。
ストーリーのはじまりはすごくロマンチックでドキドキするものだった。
身分を隠して、好きな人と文通をする。
だがこれはエイミーにとっては、もうひとつの意味を持つ。
彼女はポールの姿を代理に、恋愛を楽しんでいるのだった。
結局、触れることは叶わないのだけど、そのときのエイミーにとっては、
最高のシチュエーションだっただろう。
今作はいかにもありがちなラブコメではない。
よくあるのは、手紙の代筆をすきな人に頼まれたとかね。
それ以上に切ないシチュエーションをこの映画では見事に描いている。
また、ポールが全然嫌なやつじゃないのもミソだよね。
本当に憎めないいいやつで、だからこそ、より物語がカオスになるのだけれど。
彼が最初は美人だからってだけで相手を選んでいたのが、
内面に変わっていくのも見どころだよね。
彼もしっかり成長している。
あとエイミーのお父さんの存在もよかったー
「私みたいになるな。」って、父親としてどうかと思ってたけど、
今思うと、こんな勇気ある父が欲しかったなあ。
アスターを見ていると学生時代のある人を思い出してしまって、
余計にエイミーに感情移入してしまったよ…
正直、ほんと出だしからうるうるきていたのだけど、
この映画コメディ要素もしっかり笑えるから、
絶望的な気持ちにはならないのよね。
最初はエイミーを抱きしめたくて仕方なかったけれど、
もうラストにはそんなこと思う必要が一切なかったね。
それほどに強くなってた。
彼女自身の”大胆な愛“のおかげだね。
複雑だが、ピュアな三人が愛おしくて、
ああ、本当に出会い方さえ違ければなあ、と思った。
でもああいう形で全力でぶつかってっていう日々を送りたかったなあ。
(ウォールフラワーや17歳の肖像を思い出したりしました。)
若いうちに本作に出会えていればと心底思った。
こういう映画が作られることに本当に感謝している。
こんなにもゲイがあっさりと描かれて、チャイニーズが
当たり前のように主演して、恋をして、
そんな映画が作られるようになったのか。
今の若者の背中を押す一作。
苦しんでいる人にこそ見てほしい。
(学生時代のわたしにも見せたい一本。)
2020/12/17 2回目の鑑賞
2020年最もよかった映画を再鑑賞。
やはりこの映画に出てくるキャラすべてが愛すべきキャラクターで、本当に愛おしい。
考え尽くされて作られたことがわかる。