「UFOは砕け散り、彼は最後までヒーローだった」砕け散るところを見せてあげる あおねるさんの映画レビュー(感想・評価)
UFOは砕け散り、彼は最後までヒーローだった
この作品はヒーローに憧れるとある青年(北村匠海)が自分の亡くなった父親について心語りしているシーンから始まります。そんな青年を見つめる女性(原田知世)の姿も。そのシーンの中でこの作品の主人公である清澄(中川大志)が登場するため、青年の父が清澄であることが分かります。
シーンは清澄の学生時代へと遡る。学校に遅刻した高校3年の主人公清澄は体育館で行われていた全学年合同の朝の集会で1年生の列の最後尾に並ぶと、蔵本玻璃(石井杏奈)という少女がいじめに遭っているところを目撃します。
清澄はなぜか彼女の事を放ってはおけず、教室でいじめられている彼女を目撃すると机を直してあげたり、床に投げられた靴をロッカーへと戻してあげたりします。
とある夜にトイレで水をかけられびしょ濡れで閉じ込められている玻璃を発見します。彼女を助け濡れた彼女の制服を馴染みのクリーニング店で乾かしてもらう間自宅に連れて行き彼女と話す中で清澄は、玻璃がおかしな人間などではなく皆と同じで痛みを感じ涙を流すことができる、そして素顔も可愛いよく喋る普通の少女であることを知ります。
そこから清澄と玻璃、二人の距離が縮まっていきます。
クラス内でのいじめから彼女を守ることで清澄は玻璃を守れているつもりだった。しかし玻璃が抱えている事の真実はもっともっと過激でおぞましくて恐ろしいものであった。
ある日清澄は玻璃の腕の痣に気付く。その後学校帰りに玻璃は清澄の自宅に立ち寄るが、門限に厳しい父親の帰り時刻が近づいていることに気付き、清澄の母の車で急いで玻璃を送る途中、目の前を走る車が玻璃の父の車であることに気付き、彼女は父の名を大声で叫ぶと、突如として後方に急発進する車。
驚きながらも車内から姿を現した玻璃の父の姿、清澄の母が玻璃が一緒に住んでいると話していた祖母の話をすると父親の表情が一変し、清澄は怯える玻璃とどこか不気味な玻璃の父に違和感を覚える。
そんな事があった後のとある夜、玻璃が夜遅くに清澄の自宅前に現れ、清澄や清澄の母に危険が迫っているため逃げるように伝える。
清澄が玄関の灯りをつけ見えた玻璃の顔に、彼女が父親から異常なまでの暴力をふるわれ危険な人物であると知る。
玻璃は父が過去に祖母を殺害しキャリーケースに入れ水の中に沈めた事実を打ち明ける。
清澄は逃げずに玻璃と共に闘い抜くことを誓い、父が祖母の死体の入ったキャリーケースを沈めた場所で中が空っぽのキャリーケースを引き上げるが、それは玻璃が家出をしたと思っていた母親が持っていたキャリーケースだという事に気付き、自分の父親が母をも殺めていたことを知る。
二人は警察に通報しようとするが、その場所に玻璃の父親が現れ、二人をゴルフクラブで容赦なく殴ります。血まみれで声を出すこともできず息も絶え絶えで動くことができない二人。
父親は二人を焼き殺すため部屋中にガソリンをばら撒きます。
隙を狙って玻璃は父をゴルフクラブで殴り殺します。
目を覚ますと清澄は病院の中。
玻璃は事件の後名前を変え新たな人生を歩むこととなり、清澄がもう一度玻璃の名前を呼ぶことは許されなくなった。そして二人は高校を卒業した。
3年後名前の変わった彼女と清澄は再会した。
二人が結婚し彼女が出産間近の頃、大雨の中清澄は氾濫した川で転覆した車の事故に遭遇し溺れた人々を助け自分が犠牲となった。
清澄は最後までヒーローを貫いた。
シーンは最初の場面に戻り、ここで漸く青年を見つめていた女性が青年の母親、玻璃であることが分かる。
この作品凄く面白かったです!
最終的に清澄は人を助け息子が産まれる前に命を落としてしまうけれど、清澄は本当の意味でのヒーローだったと思うし、清澄と玻璃の決して千切れることのない強い強い愛の絆を感じました。
中川大志さん、石井杏奈さん、清原果耶さんのお芝居がとても素晴らしかった…!
そしてサイコパスな堤さんのお芝居にも魅了されました…!