「彼女たちが世界をどう見ているか、深く考えさせられる一作。」17歳の瞳に映る世界 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女たちが世界をどう見ているか、深く考えさせられる一作。
無表情を装った心の鎧が、一瞬綻びを見せる瞬間の儚さが印象的な作品です。
高校生のオータムとその従妹スカイラーの短い旅を追う、一種のロードムービーですが、彼女らの目指す先は重く、陰鬱で、それ故に二人の表情は終始曇ったままです。高校生のオータムは、自分の人生を決定しなければならない状況で余りにも無力です。しかし彼女の心の鎧をますます厚くしてしまうのは、単なる状況の過酷さだけでなく、周囲の、時におぞましい扱い、そして眼差しです。無遠慮に近づいてくる彼らにとってはひとときの、軽い振る舞いのつもりでも、その矛先となる女性たちにとってそれがどれほど嫌悪感を催し、恐怖をかき立てるか。多くの場面でオータムが無表情であるが故に、抑え込み、無視しないと対処し得ない苦しみがむしろ切実に伝わってきます。
決して楽しい物語ではないし、誰にでも勧めたくなる作品ではありませんが、深い余韻を残す映画と言えます。
一貫して10代女性の内面を描いてきたエリザ・ヒットマン監督は、本作が劇場長編作品としては三作目に当たります。第一作の『愛のように感じた』(2013)もまた、八月以降に全国で公開となるようです。こちらのヒットマン監督の筆致も気になります。
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