「笑ってる場合じゃないんだよ」17歳の瞳に映る世界 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
笑ってる場合じゃないんだよ
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映画を評価するポイントって人それぞれだと思うが、個人的には話の展開があまりない映画は評価が低くなりがちだ。でも、そんな映画でもたまにすごく印象に残ったり考えさせられたりすることがある。そうなるとどう評価していいのか迷ってしまう。この映画がそうだった。
妊娠が発覚した女子高校生がいとこと一緒に中絶手術をしに旅をするロードムービーだから楽しい内容ではないと思っていたが、ここまでシリアスで暗い感じだとは思わなかった。
州によると思うが、アメリカで中絶することの大変さを感じたし、17歳の女性が男からどんな目で見られて、どんな扱いを受けているのかという現実を突きつけられた。バイト上がりでレジのお金を戻すときに上司の男が彼女たちの手のひらを舐め回すシーンはなかなか衝撃的だった。
映画としての山場は、ソーシャルワーカーがオータムに質問するくだり(原題の回答例)なんじゃないか。あそこは緊迫感があっていいシーンだった。結局誰に何をされたのかはぼかしたままだが、性被害にあっているということだけは伝わった。妊娠した子どもの父親はオータムの父親なんじゃないかと思ってしまう(高校の男子生徒の態度からすると違う可能性は高いけど)。つまり、中絶手術は成功したけれど、彼女たちの抱える問題は何ひとつ解決しないまま日常に帰っていくわけだ。これは考えさせられた。彼女たちの手を舐められるシーンで少し笑いが起きていたが、笑っている場合じゃない。
それでも映画としての評価は高くできなかった。悩ましい。
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