「最低限のセリフと最低限の音楽、最低限の解説で進む“望まない妊娠をした女性”のための映画。」17歳の瞳に映る世界 015🎬さんの映画レビュー(感想・評価)
最低限のセリフと最低限の音楽、最低限の解説で進む“望まない妊娠をした女性”のための映画。
なお、自分の中では上半期に観た映画No.1です。ファーザーより良かった。
主人公のオータムはペンシルベニアに住む17歳の女性。
母親や一緒のスーパーに勤める従妹にも言っていないが、妊娠をしている。
子どもをどうにかしたいと思いながら、近所の産婦人科に行くも、
自分でもやれるような妊娠検査薬程度の検査で「10週目」であると告げられる。
子どもを産み、養子に出すよう産婦人科から強いられるオータム。
“産む行為”自体を迷う彼女は、
彼女の状態を察知した従妹のスカイラーと共に、両親に何も言えないままNYへと旅立つ。
このオータムとスカイラーの出生地であるペンシルベニアについて、
映画内ではかなり閉鎖的な田舎町として描かれています。
この初っ端から表情筋が死んでる主人公のオータムの特技が歌なのですが、
(ちょっとラナ・デル・レイっぽい歌声、The ExcitersのHe's Got The Powerという曲のようです)
歌う彼女に「メス犬!」と囃し立てる奴がいる。
勤務先のスーパーでも男性上司に手を握られる等のセクハラが横行しており、
女性にとっては非常に暮らしにくい場所のようです。
なお、このペンシルベニアの産婦人科。
どう見てもおばあちゃんなDr.がオータムの検査を請け負うのですが、
なんかめっちゃテキトーです。
オータムの意見も聞かずに養子縁組の案内と、中絶禁止ビデオみたいなのを見せてきます。
そりゃ逃げるわ。
一方、オータムが無事に辿り着いたNYの産婦人科ですが、
まず保険の説明から入り、カウンセラーによるカウンセリングの実施、
その後、本人の意思を都度確認しながら、中絶するか産むかを聞きます。
これが都会か。
このカウンセリングの段階で、初めて、
“なぜ、オータムが妊娠してしまったのか”が発覚するわけです。
めっちゃきつい。
結果として、オータムはある選択をするのですが、この選択をした後、少しずつですがオータムの表情筋が生き返るのですよ。
最後の最後でちゃんと笑えるようになるんですよ。
もうその移り変わりを確認するだけでも、この映画を観る価値はあるってもんです。
オータム、お疲れ。
なお、このオータムにつかず離れずいる謎の従妹のスカイラー(販促写真だと頭乗っけられてる方の女子)ですが、
めっっっっっっっっっっっっちゃ美人です。
バイト先のスーパーで、客からも店員からも口説かれれば、高速バス内でも知らんお兄ちゃんに口説かれる。
ただし、彼女の関心事はオータムを守ることしかないっぽいです。
彼女がオータムと一緒にペンシルベニアからNYに脱走するために、ありとあらゆることをしでかすのですが、
どっちかと言えば仲の良い親族と言うよりも、頼りがいのあるアニキみたいな性格と行動をする方です。
強いです。
惚れます。
…こんな感じで。
個人的には言葉として語られる情報が非常に少量な分、却っていろいろ考えさせてくれる貴重な映画でした。素晴らしい。