劇場公開日 2021年7月16日

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「最低限のセリフと最低限の音楽、最低限の解説で進む“望まない妊娠をした女性”のための映画。」17歳の瞳に映る世界 015🎬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5最低限のセリフと最低限の音楽、最低限の解説で進む“望まない妊娠をした女性”のための映画。

2021年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なお、自分の中では上半期に観た映画No.1です。ファーザーより良かった。

主人公のオータムはペンシルベニアに住む17歳の女性。
母親や一緒のスーパーに勤める従妹にも言っていないが、妊娠をしている。
子どもをどうにかしたいと思いながら、近所の産婦人科に行くも、
自分でもやれるような妊娠検査薬程度の検査で「10週目」であると告げられる。
子どもを産み、養子に出すよう産婦人科から強いられるオータム。
“産む行為”自体を迷う彼女は、
彼女の状態を察知した従妹のスカイラーと共に、両親に何も言えないままNYへと旅立つ。

このオータムとスカイラーの出生地であるペンシルベニアについて、
映画内ではかなり閉鎖的な田舎町として描かれています。
この初っ端から表情筋が死んでる主人公のオータムの特技が歌なのですが、
(ちょっとラナ・デル・レイっぽい歌声、The ExcitersのHe's Got The Powerという曲のようです)
歌う彼女に「メス犬!」と囃し立てる奴がいる。
勤務先のスーパーでも男性上司に手を握られる等のセクハラが横行しており、
女性にとっては非常に暮らしにくい場所のようです。

なお、このペンシルベニアの産婦人科。
どう見てもおばあちゃんなDr.がオータムの検査を請け負うのですが、
なんかめっちゃテキトーです。
オータムの意見も聞かずに養子縁組の案内と、中絶禁止ビデオみたいなのを見せてきます。
そりゃ逃げるわ。

一方、オータムが無事に辿り着いたNYの産婦人科ですが、
まず保険の説明から入り、カウンセラーによるカウンセリングの実施、
その後、本人の意思を都度確認しながら、中絶するか産むかを聞きます。
これが都会か。

このカウンセリングの段階で、初めて、
“なぜ、オータムが妊娠してしまったのか”が発覚するわけです。

めっちゃきつい。

結果として、オータムはある選択をするのですが、この選択をした後、少しずつですがオータムの表情筋が生き返るのですよ。
最後の最後でちゃんと笑えるようになるんですよ。
もうその移り変わりを確認するだけでも、この映画を観る価値はあるってもんです。
オータム、お疲れ。

なお、このオータムにつかず離れずいる謎の従妹のスカイラー(販促写真だと頭乗っけられてる方の女子)ですが、
めっっっっっっっっっっっっちゃ美人です。
バイト先のスーパーで、客からも店員からも口説かれれば、高速バス内でも知らんお兄ちゃんに口説かれる。
ただし、彼女の関心事はオータムを守ることしかないっぽいです。
彼女がオータムと一緒にペンシルベニアからNYに脱走するために、ありとあらゆることをしでかすのですが、
どっちかと言えば仲の良い親族と言うよりも、頼りがいのあるアニキみたいな性格と行動をする方です。
強いです。
惚れます。

…こんな感じで。
個人的には言葉として語られる情報が非常に少量な分、却っていろいろ考えさせてくれる貴重な映画でした。素晴らしい。

BONNA