「男という存在は、いかに悪であるか」17歳の瞳に映る世界 SSYMさんの映画レビュー(感想・評価)
男という存在は、いかに悪であるか
まず、映画の最後まではちゃんと中絶できるのか不安だった。中絶せずに、「私はこの子を生んで母親として頑張ります」みたいなオチじゃなくてよかった。
オータムとスカイラーが夜の街をさまよっているだけのシーンでハラハラしてしまう。結局は何も起こらないのだが(変態野郎に視姦はされる)、いつ事件が起きても不思議ではない雰囲気が終始つきまとう。ニューヨークに漫喫はないのか。
バスで出会う青年のキャスティングが、極悪人ではないが良いヤツにも見えない絶妙な線をいっている。金を貸す代わりにディープキスを強要ってのも、レイプほど悪辣ではない感じがいやらしい。
この映画に出てくる男は最低なやつらばかりだ。でも、それが女性から見た男たちの真実の姿なのかもしれない。どれだけフェミニズムが浸透しようと、まだ世の中は男社会で、女性は弱い。二人が夜の街をさまようシーンも、特に危険な演出がされているわけではないのに、観ている我々が勝手に心配してしまう。これが同じ17歳でも男なら、そこまで心配しないのではないだろうか。つまり、それだけ少女にとってこの世界は危険なのだということだ。
まだ大人にもなりきれていない17歳の少女にとって、同年代以上の男は存在自体が脅威でしかない。そういうことを、男性の側は自覚していない。この作品を観た男性は、それに気づかされる。
オータムのために文字通り体を張るスカイラーはめっちゃ良いヤツなんだけど、オータムはそれを言葉で感謝したりしないし、ずっと二人でいる割に会話も少ない。基本的にスマホばっか弄ってる。ストーリーが盛り上がるような展開もないが、このあえてドラマが抑制されている感じは好きだ。ラストの術後の食事のシーンで二人で冗談を言い合うのも、印象に残る。
中絶は無事にできたけども、心底から喜んでいるような感じはオータムは全然ない。中絶する前と後でも、世界は全く変わっていない。