なぜ君は総理大臣になれないのかのレビュー・感想・評価
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これを受けて次で香川1区がどうなるか
常に誠実に生の言葉を語ろうとする人のドキュメンタリーが面白くない訳がない。普通に観れば、支持政党に関係なく小川さんを応援したくなってしまう。ちゃんと(?)香川の劇場でも公開されているようなので、この映画が実際の政治に影響を与え得るかという点に興味が湧いた。このメッセージを受け取った我々が当事者意識を持たなければ全ては無意味。
スシローこと田崎史郎の魑魅魍魎ぶりがすごい
センセーショナルな香りがするタイトルですが、衆議院の小川淳也議員を2003年の初出馬から現在までを追いかけたベタにも程がある労作ドキュメンタリー。
総務省を辞めて32歳で地元香川から民主党候補として出馬するも惨敗。2年後に比例で初当選、2009年の政権交代で政治を変えることができると期待を露わにするが、比例当選の身では党内での発言力もない。政策オタクと自称するほど政策立案に勤しむが党内でも出世出来ないまま自民党に政権奪還されてしまう。2017年の総選挙では政党分裂を経て小池百合子に対する不信感と同郷の玉木雄一郎に対する仁義に翻弄され希望の党から出るか無所属で出るかでギリギリまで決断出来ない・・・何一つ思い通りにならない政治の世界で七転八倒するホンモノの“政治バカ“と、彼を支える家族と仲間の奮闘、その背後に見え隠れするのは現代日本の民主主義を制する圧倒的なパワーゲーム。本作のクライマックスは同じ香川一区のライバル、自民党の平井卓也議員との対決。三世議員で地元メディアの四国新聞社CEOは実弟と圧倒的に有利な平井陣営に対して、街宣カー、自転車、徒歩とひたすらベタな触れ合いとマニフェストの郵送と電話アタックといったプリミティブな選挙活動で対抗する小川陣営。政党のお家騒動に翻弄された被害者なのに有権者からは厳しい言葉を浴びせられる。自宅の家賃は47000円。どうかしているレベルで愚直な小川議員と彼を支える人々の健気な選挙活動に胸が熱くなります。特に衝撃的だったのは出陣式に招かれた慶應大学の井出教授の演説。出席者だけでなくこちらの涙腺までもタコ殴りにしてくる言葉がとにかく圧巻です。もう一つの見どころはスシローこと田崎史郎の登場。一体何千万円の寿司を食わせてもらったのかと唖然とする安倍政権ヨイショも強烈ですが、さりげなく予言も織り交ぜながら政界を暗躍する魑魅魍魎ぶりが天晴れです。
こんな地味なドキュメンタリーがハンパな田舎のスクリーンで上映される、これは昨年の『新聞記者』のスマッシュヒットと同じ爽快感を伴う快挙。130分の長尺を感じない熱気が清々しい良品です。
日本の未来を真剣に考える野党議員の姿
腐敗が進む日本の政界に、まだこのような国会議員がいたことに驚きました。
ストーリーの中で政治主張については一切触れられていませんが、小川議員の情熱と真剣さ、そして溢れ出る誠実さは大変良く伝わってくる素晴らしい映画です。自分の身だけでなく家族を巻き込んで多くの苦労を背負い、ただ日本の将来を思って真剣に政治を志すが、総理大臣はおろか野党の中でも発言力が弱い現状。
(それでもメディアを使って攻勢をかけてくる、地元のテレビ局と新聞のオーナー一族に対して、選挙で僅差まで追い詰めている時点で相当すごいことだと思いますが。)
小川議員の主張・信条や国会答弁をYouTubeで見ましたが、深い知識と磨き抜かれた政策、情熱と誠実さを兼ね揃えたここまでの人物は中々いないでしょう。この映画では、このような素晴らしい議員を総理大臣にしてあげられない我々国民はなんなのか、皆は日本の将来を本気で考えているのか、ということを問われているように感じます。
政治を知らない人から、日本の政治に絶望している人、または小川議員の地元である香川県の人には是非おすすめしたい映画です。私は小川議員に日本の将来を託してみたいという気持ちが湧いてきました。
*コロナで見れないかたは、8月1日にライブ動画配信サービスの「PIA LIVE STREAM」および「uP!!!」でオンライン上映会を実施するそうです。
日本の政治の限界を感じた
日本だけでは無いと思うが、真正面から国民のためと言う信念で代議士になるのは無理だと感じた。国民のためにとは言いながら自分の党利党略に忖度して自分をいつまで生き残らせるか画像第一義で無いと生き残れない世界。また選挙運動が旧態然で相変わらず名前を連呼するのも変えていく必要があると思った。
小川淳也氏は、柚月裕子の「佐方貞人」シリーズの佐方と重なることに気がついた。リアルな世界では生きるのが難しいのだと思う。
政治家とは
正直者が馬鹿を見る世の中であってはならない。
とは思うけれど、小川氏は人を引っ張っていける器の人ではないだろう。政治家には向いていない、と母親は言うが、おそらくサラリーマンでも出世出来ないと思うくらい人が良すぎる。
個人的に政治家に清廉潔白さは求めていない。多少私腹を肥やしたって国民のために粉骨砕身働いてくれるのであれば、私個人は多少目を瞑ったっていいと思っている。別に政治家まして総理に年収300万で働いてもらおうなんて思っていない。
ただただ誠心誠意ひたむきに頑張ってますアピールされたって具体的に政策を語っている姿が(この映画の中では)見えなかったので、好感度があろうと総理の器ではないと感じた。
小川氏を総理にしたいか、と問われたら私はNOと答える。
どんな職業でも向いていようがいまいが、努力する姿勢は素晴らしいと思う。けれど皆んな何らかの形で努力はしている。地べた這いずり回って苦渋を舐めて、そんなことみんな経験している。
清貧語って高邁な思想掲げたって結果が全て。これは政治の世界だけではない。
世渡り下手で処世術に長けていない人ががむしゃらに頑張っている姿は確かに涙を誘う。だけど政治家ってそれでいいの?それって政治家に必要な資質?最後、選挙に敗れて皆んなに慰められている姿は、甲子園を目指して頑張っていたけど夢叶わなかった高校球児を慰めているように見えた。
小川氏は確かに誠実な人だろう。こういう人が総理になって、彼を支える人たちもまた謙虚で献身的な人たちで国民もまた好意的な人たちであれば幸福に満ち溢れた世の中になるかもしれない。
だけどそんな世界は夢物語だと思う。
金と権力に塗れ、他人を蹴落としてでも這い上がりたい、という欲望渦巻く世界で、誠実さだけで生き残れる世界がどこにあると言うのか。
前評判も良く感動した、という声が多かったので期待した分がっかりした。こういう人は結局敗れ去るのか、と暗澹たる気持ちになった。
ただ、小川氏のような人を総理にしたいと思う人が多く夢や希望を託して選挙に行く人が増えるのだとしたら、これからの日本に一抹の希望は見出せるのかもしれない。
井戸塀政治家・ですら、ない。
小川代議士は、保守王国の四国・高松で、地盤も看板もカバンもなしに強力な自民党現職に挑み続けてきた代議士です。
50歳までには総理大臣になる、と宣言して32歳の時に初当選。
ただ、もうすぐ50歳に手が届く今でも、野党でくすぶっています。
小川氏は、というか、多くの人間に共通する点でもあるのですが、ウソをつく時や、どう誤魔化そうかと考えている時、左側に視線が泳ぐという共通の特徴があります。
画面で言えば右側に視線を泳がせながら小川氏が何かを話している、そんなシーンがけっこうあるので、この点を注意深く観察すれば、人間ウォッチングとして楽しめます。
一般的な政治家では、このような眼の動きを見せる人は少ないので、そういう意味でも小川氏はプロではなく、素人っぽさが抜けないままの政治家なのでしょう。
だから君は総理大臣にはなれないのだよ。
私はそう思いましたが、監督や小川氏自身はこの点に気がついていないのかも知れません。
「井戸塀政治家」というのは政治を志す者の一つの理想の姿だと思いますが、この言葉の意味を小川代議士には噛みしめて欲しいと思ったのでした。
つまり、たくさんの個人資産を自分の理想の政治のために注ぎ込んで、最後、家屋敷もなくなり、井戸と塀だけが残ったという状態を、尊敬の念を込めながら揶揄するのが「井戸塀政治家」という言葉の意味。
最初から無資産の小川代議士は、失うべき井戸も塀すらも持ち合わせていないじゃないか、ということなんですが。
もちろん、政治で蓄財するなんてのはもってのほかなので、清貧を貫く点だけは小川氏を高く評価できる点です。
ただし、のちに「党首の生活が第一」みたいな名称の政党を作った蓄財王「お縄先生」とのニアミスが存在するはずなので、そういう点についても知りたかったところですね。
ドキュメント映画ではあるものの、監督が取捨してしまった側にこそ、いったいどんなエピソードが隠れているのだろうと気になりました。
政治に関心のない人も必見
こんな地味なテーマなのに結構ヒットしてるのが不思議で見に行ったが、確かに面白かった。
素直に引き込まれるドキュメンタリー映画だと思う。
1人の無名に近い人間を20年近く追い続けているだけでも価値がある。
そして、同時に日本の政治のおかしさについても考えるさせられるだろう。
どんな感想を抱くのかは人それぞれだが、見て損すら映画ではないのは確かだから、是非劇場に足を運ぶことをお勧めする。
見ることで政治に対する向き合い方が変わると思う
今年見た中では1番良い作品です。
民主党の1議員が政党に振り回され、自身の理想に近づけない現実と向き合っています。
こういうバックグラウンドを報道機関は紹介して欲しいが、多分無理なのだろう。理由は本作にも描かれてます。
まだ私の中には14年前と同じまっさらな初心が息づいております。
五回も当選していながら、つまりそれだけの時間、永田町の魑魅魍魎を目の当たりにしていながら、こんな真っすぐで純粋な国会議員がいるのか。それは、初当選当時と今と、加齢分しか顔つきが変わっていないことで察しがつく。呆れた笑顔でいながらもしっかりサポートする家族の表情でもわかる。
小泉総理のときの民主党、民進党、希望の党、そして無所属。その経歴だけを追えば、まったくもって信用ならない道筋でしかない。それだけ僕には日本の野党という存在に不快感があるというということ。だからといって自民党が最善ではない。野党が不甲斐ないのだ。政策で対峙せず、あらを捜し、足を引っ張るだけ。真っ当な正論も、薄ら笑いで簡単にあしらわれるって相手にされてないってことでしょう?それを不甲斐ないと言わずしてなんと言おうか。
その、野党のいち議員を追ったドキュメンタリ。「中道を目指して」という政治姿勢には、片方に寄り過ぎる危険臭もないし、他者の意見を受け付けない融通の無さもない。「試練やなあ。」と半ベソでつぶやきながらも、どこか自分の逆境を楽しんでいる素振りさえある。嬉しそうに、というよりは、運命を受け入れているという風体で。だからこそ、彼は、常に自分に足りないものを意識し、人の話を聞きながらしっかりと腹に落とし込み、素直に涙を流すことができる男のようだ。それゆえにこちらも爽やかな涙を流せる。
国会議員でありながら、4万7千円のアパートにいまだ住み、好物の安い油揚げを美味しそうに食べる。彼のような政治家が増えればいい、とまでは言わない。だけど、国政にはこんな政治家もいる多様性は必要だと思う。
こんな男が総理になれるかって?なれるわけがないだろう。ひとえに純粋すぎる。
だけど、かつて芥川龍之介は言った。「ゲーテになることをきまり悪がっていては、ゲーテの御者にさえなれない」と。
なぜ僕は総理大臣に無関心だったのか
使命感に取り憑かれたような生き様
という視点からの羨望
国政政治家にもこんなに真摯で誠実な方が!?
という発見と期待
何故今まで世の中に出ていなかったのか!
という驚愕
むしろ今こそ必要なリーダーであり、遂に使命と時代がマッチするのでは!
という希望を抱かずにはおれない!
既得権益アレルギーな個人的感情も入ってるけれど、でも今多くの人々に観てほしい!
都内にいて、メディアに操作された情報で動かされるのもうんざりだ。
自分で考え、自分で動こう。
そう言う時代の政治家に、この方は相応しい!
引っ掛かりを感じる
これが現実なのかもしれない。
しかし、語られる言葉の端々に引っ掛かりを感じ、まさにタイトル通りに原因はそこなんだろうと思う。しかしそれが作品となった時に、面白さは感じなかった。
向いてるとか向いていないと語られる悩ましい部分とか、過酷な舞台裏とか。まるでPR映像の様な苦労話に若干うんざりしてしまった。
“向いていない”ことこそ向いている
大島監督がフォーカスする人間に惹かれ、彼が長期密着してきた人物に興味関心があり鑑賞。強い地位と発言権の会得に邁進するだけで何十年も苦闘させるこの国の政界。確かに、政治家は強かな人間こそ務まるのでしょう。しかし、“腐敗した病巣=霞ヶ関”での出世社会において特異な存在は、長きに渡り家族と地元後援者の支えを受けながら、盤石な保守地盤で小選挙区当選に挑み続ける。宛ら選挙大河ドラマな本作で描き出される、自らに十字架を課す“年齢”への縛りや、対“世間の空気”への重圧から醸し出される悲壮感。51対49の論理で、51の側が49の思いを背負う覚悟を…印象的な言葉に象徴される純粋な思想や覚悟・行動に、今からでも声援を送りたくなる。ボンボンやエリートさんの生活を連想していた後に映し出される、凡そ代議士らしからぬ質素な生活こそ、この家族の純な願いを想起させるのだ。無所属で居るべき矛盾…自問自答を繰り返す車内の外から風に乗って聞こえてきた「クラリネットをこわしちゃった」のメロディが…“どうしよう”のフレーズがまた、なんとも皮肉で象徴的なシーンでもあるのだ。
政治家にとって致命的なものと引き換えに
ひとりの政治家を17年間にわたり撮り続けたドキュメンタリー!かなりよかった!!
真面目や誠実さって、ときに辛抱と我慢の連続であって。。
そうしてまでも、つかみ取りたいもの、守りたいもの、がリアルに浮かぶ。
ドキュメンタリーっていいなとつくづく思う!
リアル政治家の哀れ
最初は威勢のいいことをいいながら、最後は一度後ろ足で砂かけたはずの立憲民主党の尻尾に成り下がり、政権の揚げ足取りに腐心する、哀れな政治家のドキュメンタリー。君はお国に必要ないのだから、お母様のもとに帰れよ、と声かけたくなる映画。
音の使い方が良い
音の使い方が良い。
このようなドキュメンタリーだとまあ配信なりで観ようかとなるかもしれませんが、これは映画館で観るべき作品になってる。音、BGMがなかなか効果的に使われている。
2時間エンターテインメントとして観ることもできる。
2003年~2020年の映像記録をうまく使って、特に本人よりも、父母や娘たちがその時間の経緯をうまく表しつつ
17年間の圧縮しているからこそ、次から次への難題が巻き起こり、それをいかに乗り越えるか?逃げずに真正面から行くのが不器用でカッコ良くもありカッコ悪くもある。飽きさせない。
わたしは日本における政治家と軍人のイメージの悪さがおかしいと思っている。本来国を導く人と国を守る人は尊敬されてしかるべきなのに。子供が憧れるような仕事のはずなのに。
なぜだろう。その答えの一端がこの映画にはある。
2021/11/4追記
今回の衆院選では選挙区で当選しましたね。立憲民主党の代表戦にも出馬もありそう。映画も支持拡大の一因だど思います。悪いことではないです。映画でしか彼を知りませんが、この真っ直ぐなまま代表になると面白いだろうなあとワクワクはしてきます。
静かな感動
私は小川さんと同じ選挙区に住んでいましたので、小川さんが初出馬したときから応援していました。香川に彗星のような存在の政治家が現れたと思いました。あれから17年の歳月が流れたのですね。映画を観て、家族の皆さん方の献身的な活動を知りとても感動しました。上映中、感動がじわじわと湧き起こり涙が頬を伝わりました。小川さんのセリフにあった「決してあきらめてはいけない」を胸に刻み、私も日々を頑張って生きようと思いました。草原を焼き尽くす燎原の火のごとくこの映画の上映館が増え、一人でも多くの方に小川さんのような熱い志を持った政治家がいることを全国に、いや、世界中に知っていただきたい。そして小川さんのような政治家に小選挙区で勝ち抜き、責任ある立場で政治活動をしていただきたいと実感しました。また、小川淳也さん夫妻とその娘さんそして小川さん自身のご両親と深い信頼関係で結ばれていることが良く理解できました。あるべき家族の姿を見せていただいたと思っています。
素晴らしい映画を作成された大島監督と小川さまに深く感謝いたします。ありがとうございました。
1票の責任
自分の選挙区の方が映画で紹介されて、鑑賞。
もともと誠実な印象を持っていたが、ここまで私利私欲でなく、政治の事、これからの日本の事を考えている人とは知らなかった。
コロナ禍の中、このままの日本に不安がある中で、1票の重みと責任を感じました。
影ながら応援していきたいです!
面白かった!!
面白かった!!
若手政治家の20年という時間を追ったドキュメンタリーなんだが、なかなかに見応えがあった。
ひとりの若者が政治の世界で挫折に挫折を重ねて、いろんな思案に翻弄され、一見とことん疲れていくさまが映し出される。
でも、彼は疲れていても失敗を重ねても、いや失敗を重ねるからこそ、敗れ続けてより立派になっていく。
己れの足りない部分を見つめ、負けた側や少数派の意見を届けようともがく。
立派という他はない。
こんな経験を重ねて、人間としての厚みを増した者がリーダーに、いやこの世に増えていったらどれだけ住みやすい世の中になることか、と思った。
「人間はそんなもんじゃない」。彼のこの人間の力を信じた言葉が胸に残る。素晴らしい人だと率直に思った。
彼とともにいる家族がまたすごい。家族が選挙を一緒に戦う姿に、涙があふれた。娘さんがあんなに丁寧に頭を下げていた姿はなにかとても純で美しいものを見せてもらった気になった。
家族のドキュメンタリーとしても一級品だと思った。
希望と絶望のあいだ
恥ずかしながら小川淳也という政治家を知らなかった。いやどこかで目にしたり耳にしたりはしたことはあると思う。思うが認識していなかったということだ。衆議院議員の定数は、現在は日本国憲法施行後最少とはいえ465。全員を認識している筈もないので致し方ないとは思いつつも、しかしその465人の中で私たちが明確にその主張を知る人は何人いるのだろうか。
この映画は大島新監督が、知己である小川淳也議員を初出馬から17年間、追ったドキュメンタリーである。
ドキュメンタリーは否応なくその監督の「物語」であるから、本作に於ける「小川淳也」は些か理想型を体現しすぎた人物のようにも映る。しかしまた、その理想型だけでは政治の世界を泳いではいけないこともこの映画はリアルに映し出す。
若き日の小川は「51対49」の論理を語る。たとえ51対49でも結果は1対0。そのとき51の側は49を背負っていかなければならない。しかし、現実は51しか見ていない。
確かに今の政治というのは「敵か味方か」が強くなりすぎて、負けた方を背負う行為が「妥協」と見做される空気がある。落とし所を見つけるということができずに硬直し対立する。悪循環である。
小川の両親が指摘するように、彼は「理想型」の中道政治家であり、本質的に今の政治「業界」には向いていないところがある。母は「大学教授の方が向いていたんじゃないか」という。啓蒙する側が向いているのではと。確かにそうかもしれないと思える部分が多々映画には映し出される。51対49の論理などその典型である。
映画の中心は、2017年の衆議院議員選挙、小池百合子率いる「希望の党」が政局を引っ掻き回した選挙である。希望の党への合流を決めた前原誠司の側近であった小川は、葛藤しながらも希望の党に合流するが、大島監督に問う。
「無所属で出るべきだったか?」
理想と現実の狭間を見る思いである。小川は小池百合子を「小池」と呼び捨てにし、全く信頼を置いていないものの、様々なしがらみと党に所属する利点を鑑みて合流する。
選挙戦は見ていてもこちらが苦しい。いつまで経っても変化しない選挙戦術もそうだし、家族総出の運動(「娘です」というタスキをかけた娘さんたちの活動を大変複雑な思いで見ていた)も。罵倒する人、励ます人、そして無視する人。どれだけ理想を持っても、名のある者、地盤がある者が勝つのが選挙だという現実。そして選挙区で勝てる者が力を持つ構造。
理想と希望に溢れた若者が、年を経て現実に絶望する物語としても興味深い。小川淳也は理想を持ち続けてはいる。しかしそれは常に現実との葛藤である。どれだけ真っ当なことを言っても、政治は数。人脈。
政治家に希望を持たせると同時に政治に絶望する映画でもある。
「君はなぜ総理大臣になれないのか」という問いの答えはこの映画全体が物語る。コロナ禍で監督とSkype越しに交わす会話で小川はこの問いに「YESと答えられなければ議員辞職している」と言う。しかし、彼は勿論知っている。自身が所属した民主党政権の崩壊と、その崩壊を基盤とした安倍政権の盤石さを。彼が総理大臣になれないのは、小川淳也という人間の問題というより、この国の政治のあり方(それは有権者の意識も含めて)の問題なのだが、それはどうやったら変えられるものなのか、正直私にも分からない。
とてもいいドキュメンタリーです‼︎
タイトルに惹かれて何気なく見ましたが、本当に驚きました。初めて映画館で泣きました。涙が出過ぎてマスク濡れました。こんな政治家が日本にいるんだという嬉しい驚きと、自分の生き方を考え直したくなる映画でした。こんなに心を動かされる映画に出会うとは思ってなくて、0時過ぎたのになかなか眠れないのですが、明日仕事なのでもう寝ます。
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