劇場公開日 2020年6月13日

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「まだ私の中には14年前と同じまっさらな初心が息づいております。」なぜ君は総理大臣になれないのか 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0まだ私の中には14年前と同じまっさらな初心が息づいております。

2020年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

五回も当選していながら、つまりそれだけの時間、永田町の魑魅魍魎を目の当たりにしていながら、こんな真っすぐで純粋な国会議員がいるのか。それは、初当選当時と今と、加齢分しか顔つきが変わっていないことで察しがつく。呆れた笑顔でいながらもしっかりサポートする家族の表情でもわかる。
小泉総理のときの民主党、民進党、希望の党、そして無所属。その経歴だけを追えば、まったくもって信用ならない道筋でしかない。それだけ僕には日本の野党という存在に不快感があるというということ。だからといって自民党が最善ではない。野党が不甲斐ないのだ。政策で対峙せず、あらを捜し、足を引っ張るだけ。真っ当な正論も、薄ら笑いで簡単にあしらわれるって相手にされてないってことでしょう?それを不甲斐ないと言わずしてなんと言おうか。
その、野党のいち議員を追ったドキュメンタリ。「中道を目指して」という政治姿勢には、片方に寄り過ぎる危険臭もないし、他者の意見を受け付けない融通の無さもない。「試練やなあ。」と半ベソでつぶやきながらも、どこか自分の逆境を楽しんでいる素振りさえある。嬉しそうに、というよりは、運命を受け入れているという風体で。だからこそ、彼は、常に自分に足りないものを意識し、人の話を聞きながらしっかりと腹に落とし込み、素直に涙を流すことができる男のようだ。それゆえにこちらも爽やかな涙を流せる。
国会議員でありながら、4万7千円のアパートにいまだ住み、好物の安い油揚げを美味しそうに食べる。彼のような政治家が増えればいい、とまでは言わない。だけど、国政にはこんな政治家もいる多様性は必要だと思う。
こんな男が総理になれるかって?なれるわけがないだろう。ひとえに純粋すぎる。
だけど、かつて芥川龍之介は言った。「ゲーテになることをきまり悪がっていては、ゲーテの御者にさえなれない」と。

栗太郎