劇場公開日 2020年6月13日

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「スシローこと田崎史郎の魑魅魍魎ぶりがすごい」なぜ君は総理大臣になれないのか よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0スシローこと田崎史郎の魑魅魍魎ぶりがすごい

2020年7月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

センセーショナルな香りがするタイトルですが、衆議院の小川淳也議員を2003年の初出馬から現在までを追いかけたベタにも程がある労作ドキュメンタリー。

総務省を辞めて32歳で地元香川から民主党候補として出馬するも惨敗。2年後に比例で初当選、2009年の政権交代で政治を変えることができると期待を露わにするが、比例当選の身では党内での発言力もない。政策オタクと自称するほど政策立案に勤しむが党内でも出世出来ないまま自民党に政権奪還されてしまう。2017年の総選挙では政党分裂を経て小池百合子に対する不信感と同郷の玉木雄一郎に対する仁義に翻弄され希望の党から出るか無所属で出るかでギリギリまで決断出来ない・・・何一つ思い通りにならない政治の世界で七転八倒するホンモノの“政治バカ“と、彼を支える家族と仲間の奮闘、その背後に見え隠れするのは現代日本の民主主義を制する圧倒的なパワーゲーム。本作のクライマックスは同じ香川一区のライバル、自民党の平井卓也議員との対決。三世議員で地元メディアの四国新聞社CEOは実弟と圧倒的に有利な平井陣営に対して、街宣カー、自転車、徒歩とひたすらベタな触れ合いとマニフェストの郵送と電話アタックといったプリミティブな選挙活動で対抗する小川陣営。政党のお家騒動に翻弄された被害者なのに有権者からは厳しい言葉を浴びせられる。自宅の家賃は47000円。どうかしているレベルで愚直な小川議員と彼を支える人々の健気な選挙活動に胸が熱くなります。特に衝撃的だったのは出陣式に招かれた慶應大学の井出教授の演説。出席者だけでなくこちらの涙腺までもタコ殴りにしてくる言葉がとにかく圧巻です。もう一つの見どころはスシローこと田崎史郎の登場。一体何千万円の寿司を食わせてもらったのかと唖然とする安倍政権ヨイショも強烈ですが、さりげなく予言も織り交ぜながら政界を暗躍する魑魅魍魎ぶりが天晴れです。

こんな地味なドキュメンタリーがハンパな田舎のスクリーンで上映される、これは昨年の『新聞記者』のスマッシュヒットと同じ爽快感を伴う快挙。130分の長尺を感じない熱気が清々しい良品です。

よね