劇場公開日 2021年1月15日

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「よくよく考えたら強引で乱暴で身勝手なお話」43年後のアイ・ラヴ・ユー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0よくよく考えたら強引で乱暴で身勝手なお話

2021年2月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公は妻に先立たれたベテラン演劇評論家のクロード。渾身の原稿を持ち込んだ出版社で目にした記事で、かつての人気舞台女優リリィがアルツハイマーで介護施設に入ったことを知る。実は若かりし頃の恋人だった彼女とはある日を境に疎遠となったままだったが当時の美しい思い出を忘れられないクロードは家族にはスペイン旅行に行ってくると言い残し、親友のシェーンの協力を得て彼女と同じ介護施設にまんまと入所、リリィに自分と過ごした日々を思い出させるために奮闘する。

何十年も前に別れた彼女にもう一度告白するというと一見ロマンティックですが、よく考えてみると随分強引で乱暴で身勝手な話。いい歳した老人なのにクロードのメンタリティはほぼ中学生レベルなのでリリィの心情などお構いなしで猪突猛進。その無神経さにチクリとひとくさりあってもよさそうですが、そこは一切問わない辺りが正直物足りないです。しかしながらシェークスピア劇のセリフを巧みに引用したクライマックスは美しいし、クロードとシェーンの子供じみた友情も微笑ましくてハートフルであることは確か。もう少し辛辣さを滲ませていたら『50回目のファースト・キス』のような分厚いドラマになったかも。

渋い役が多い印象のブライアン・コックスが文句を垂れながらもクロードをサポートする親友シェーンを軽快に演じているのが印象的。クロードの娘セルマを演じているのが、『バイオハザード2』で演じたジル・ヴァレンタインがクリソツ過ぎてファンの度肝を抜いたシエンナ・ギロリーだったのにビックリ。年頃の娘を持つ母親役がしっくりくる女優になっていたことに月日の流れの速さを感じますが、一方のアリスを演じたミラ・ジョヴォヴィッチはまだまだ現役でモンスターと戦っていらっしゃるわけで本筋とは全然関係ないところで人生について深く考えさせられます。

よね