あの頃。

劇場公開日:2021年2月19日

あの頃。

解説・あらすじ

マネージャーやプロデューサー、ベーシストとして「神聖かまってちゃん」などのバンドや音楽ユニットにかかかわってきた劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」を、松坂桃李主演で実写映画化。大学院受験に失敗し、彼女もお金もなくどん底の生活を送る青年・劔。松浦亜弥のミュージックビデオを見て「ハロー!プロジェクト」のアイドルに夢中になった彼は、イベントで知り合ったコズミンら個性的な仲間たちとともに、くだらなくも愛おしい青春の日々を謳歌する。しかし時は流れ、仲間たちはアイドルよりも大切なものを見つけて離れ離れになっていく。そんなある日、コズミンがガンに冒されていることを知った劔は、かつての仲間たちと再会を果たすが……。「愛がなんだ」の今泉力哉監督がメガホンをとり、「南瓜とマヨネーズ」の冨永昌敬が脚本を手がけた。劔がアイドルにハマるきっかけとなる松浦亜弥役を、「ハロー!プロジェクト」のアイドルグループ「BEYOOOOONDS」の山崎夢羽が演じる。

2020年製作/117分/G/日本
配給:ファントム・フィルム
劇場公開日:2021年2月19日

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(C)2020「あの頃。」製作委員会

映画レビュー

3.5 味のある役者陣のやりとりが徐々に癖になる

2021年2月28日
PCから投稿

この映画には何か、若き頃に未知なる扉を押し開いたときに感じた部室臭のような空気が満ちている。それは懐かしさと共に酸っぱさすらこみ上げる記憶。歳を重ねて口にする機会は減っても、それでも、当時の仲間とならいつでもあの頃に戻って盛り上がれる。思い出して笑顔になれる。ハロプロ好きでもそうでない人でも、誰もがそういう記憶、場所、仲間に思い当たるところがあることを、じわじわと気づかされる作品だ。イベントで集う仲間は、各々が格別の芸達者ばかり。はじめはとっつきにくそうに思えても、幾度も場面を重ねていくことで、徐々に味が沁み出し癖になり、しまいにはこちらの方が「馴染みのあの感じ」を求めてしまうほど。また、今泉演出は決して感傷的になりすぎず、お涙頂戴にも陥らない。だからこそ、あの苦笑してしまうくらい掛け替えのない日々が輝きだす。いつもとガラリと違う個性を放つ松坂桃李、そして波に乗る仲野大賀の魅力も堪能した。

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牛津厚信

4.0 冨永昌敬脚本×今泉力哉監督にしては少々物足りないが

2021年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

今泉監督作は大好きなものが多いので、鑑賞前の期待のハードルを上げすぎてしまったかも。本作では脚本を担当している冨永昌敬監督にしても、いつもならある種独特のモノローグで雰囲気を作りつつ物語を牽引するのだけれど、劔を演じる松坂桃李のモノローグはまあ割と普通のトーンで(もちろん今泉演出なので真似をする必要もないのだが)、何か少しずつ物足りない思いがした。

評者もバンド経験があるので、仲間と何かを一緒に追求したりだらだらと馬鹿みたいな時間を過ごしたりする感覚はよくわかるし(共感しすぎてつらくなる場面さえあった)、関心のない人から見たら価値がよくわからないことに夢中になれるのが青春なのかもな、と自分に重ねながら観ていた。

昨今のアイドル事情に疎いので、握手会の場面で登場するのが松浦亜弥本人?と一瞬思い、でも今こんなに若いはずないし…CGで若く見えるよう加工した?などと悩んだが、ハロプロの山崎夢羽さんというすごく良く似た子を起用したのですね。このキャスティングはなかなか憎い。

公開前の作品と比較して恐縮だが、4月公開予定の「街の上で」の方が今泉監督らしさがよく出ていて断然好き。「あの頃。」で劔とちょっといい感じになる中田青渚が、「街の上で」で印象的な関西弁の女の子役で好演している。

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高森郁哉

3.0 他人のモノサシを捨て、「今」を生きる極上の幸福

2026年8月22日
iPhoneアプリから投稿

驚く

世間の目、他人の評価、社会が作った幸福のレール――そんなものは一切関係ない。「今、この瞬間が一番楽しい」という純度100%の衝動だけで生きることが、これほどまでに愛おしく、贅沢なことなのかと気付かせてくれる傑作だ。物語は、うだつの上がらない青年が松浦亜弥のMVを観て涙し、ハロー!プロジェクトのアイドルを推す仲間たちと出会うことから始まる。彼らの生き方には、大人の世界にありがちな損得勘定や利害関係、マウンティングは存在しない。ただ「好き」という共通の情熱だけで繋がり、銭湯に通い、遅くまでバカ話に花を咲かせる。現代人は、将来への不安や他人の目線に縛られがちだ。しかし本作が描くのは、承認欲求から完全に解放され、自分のモノサシだけで掴み取る「極上の幸せ」である。たとえ傍から見れば不器用で、生産性のない時間に見えたとしても、彼らの泥臭くも輝かしい日々は、間違いなく人生の黄金期だ。他人の作った価値観を脱ぎ捨て、自分の「好き」にどこまでも誠実でありたい。忙しない日常の中で、本当の豊かさとは何かを思い出させてくれる、私の憧れの生き方がここにある。

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レフトアローン

5.0 あの頃は、思い出してもいいんだと思えた。

2026年7月6日
スマートフォンから投稿

正直、最初はハロプロオタクを描いた映画という印象しかなかった。

でも観終わった今、この作品はそんな一言では語れない映画になった。



この映画には、大きな事件も劇的な展開もない。

誰かが夢を叶えるわけでも、人生が大きく変わるわけでもない。

ただ、好きなものを語って、仲間と笑って、くだらないことに本気になって、それぞれの人生を歩いていく。

それだけの映画

でも、そのそれだけがたまらなく愛おしかった。



最初はコズミンに対しては苛立ちさえ覚えたが
情けないところも、人間臭いところも、最低なところも、少し優しいところも全部見せてもらったからこそ、気付けば私も登場人物たちと同じように笑える存在になっていた。



だから彼が亡くなった時も、可哀想という感情より、最高の友人に囲まれて、良い人生だったなと思えた。


橋の上でコズミンを思い出しながら話し合って笑い合うシーンが本当に好きだった。



もう本人はいない。

それでも自然と会話の中に現れる。


その姿を見て、人は亡くなっても、人との関係まで消えてしまうわけではないのだと感じた。



亡くなった人を思い出して笑うこと。

あの人ならこう言うだろうなと思い返すこと。

それは、その人との時間が今も自分の中で生き続けている証なんだと思えた。



この映画を観て、思い出してもいいんだ、無理に忘れなくてもいいんだと、少しだけ心が軽くなった。



あの頃を思い出すことで、今この瞬間をもっと大切にしよう。
友達と笑い合う時間も、くだらない会話も、何気ない日常も、いつか誰かのあの頃になる。
だから今を大切に生きよう。
そんな静かなメッセージを受け取った。



人によっては退屈に感じる作品かもしれない。
でも私は、この映画を通して誰かの人生を追体験し、その人生ごと愛することができた。

あの頃。は、私にとって面白い映画ではなく、人生のどこかと重なる映画だった。

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りん