「エルヴィスの人生と音楽性の起源を辿れる映画」エルヴィス 臥龍さんの映画レビュー(感想・評価)
エルヴィスの人生と音楽性の起源を辿れる映画
エルヴィス・プレスリーがいかにして音楽の才能を育み、いかにしてトップスターに駆け上がり、そのなかでどれだけの苦悩を抱え、いかにして生涯を終えたのか。それを辿る映画です。
そして、プレスリーを語るうえで欠かせない剛腕マネージャーの存在。その関係性にもスポットライトが当てられています(むしろこちらがメイン)。
クイーンの『ボヘミアンラプソディ』に近い構成ではあるものの、ライブをメインに据えた『ボヘミアン』と比べ、どちらかといえばプレスリーの人生とマネージャーとの関係性にスポットライトが当てられた構成になっています。
自分は、過去の映像でしかプレスリーを見たことがない世代ですが、この映画でプレスリーの人となりを知ることができ、個人的にはすごく楽しめました。
(以下ネタバレ含む)
個人的には、マネージャーとの関係よりもプレスリーの人生と音楽性の起源、プレスリーが生きた時代背景を辿れたのがすごくよかったです。
プレスリーは白人でありながら、家庭の事情で幼少期から黒人社会で育ち、ゴスペルやR&Bに慣れ親しみ、それが彼の音楽的なバックボーンになっています。
まだ黒人差別が根強かったアメリカで、白人であるプレスリーが黒人の音楽を歌い、さらに性的魅力を前面に押し出し、世の女性を魅了してスターダムにのし上がる。
それに対するアメリカ保守層の猛烈な反発と抵抗。
一時はその圧力に屈し、路線変更や俳優業への転身を試みるもうまくいかず、原点回帰して自分の道を突き進み、見事再ブレイクを果たしたプレスリー。
そして、そんなプレスリーを利用しようと周囲で蠢く金の亡者たち。その代表格が剛腕、強欲マネージャーのトム・パーカー。彼がいかにしてプレスリーを操り、金儲けの道具として搾取し、追い詰め、死に追いやったのか。
馬車馬のように働かされ、薬漬けで痛々しいほど心身共にボロボロとなるプレスリー。最期は薬の影響と思われる心臓発作により42歳の若さで亡くなります。
なんとも後味が悪く、胸糞悪い展開ですが、それでもプレスリー個人の魅力とその音楽性、パフォーマンスは多くの女性を魅了し、男性の自分でもその圧倒的な存在感と魅力に引き込まれました。
日本人が好む『等身大で、身近で、手の届きそうなアイドル』ではなく、『特別な才能を持つ選ばれしスター』が持つ圧倒的、かつ唯一無二の存在感はやっぱり伊達じゃないです。