「憎悪、嫌悪、腐敗にまみれたゴッサム。そして復讐と怒りに燃える者たち」THE BATMAN ザ・バットマン Ko Fuさんの映画レビュー(感想・評価)
憎悪、嫌悪、腐敗にまみれたゴッサム。そして復讐と怒りに燃える者たち
バットマンの新たなるストーリー。ブルースがいかにしてバットマンとなるのかは先のビギンズにて非常に完成度の高い映像によって紡がれており、本作は敢えてそこには触れずに、バットマンが現れてニ年目の世界を描いている。悪人は闇の中にバットマンがいるかもしれないと怯え、世の中は自警団気取りのコスプレした奴がいる。程度の認識が浸透し始めた頃。その「彼はまだヒーローではない」の距離感が大変に良い。ブルースは復讐に燃えており、静かに闇の中で怒りを悪にぶつけている。その未熟さは痛々しくも猛々しく、これまでのバットマンでは見られなかった姿を見せてくれる。
そして復讐に燃えているのは彼だけではなかった。ゴッサムの中にはとても抱え込むことのできない憎悪が渦巻き、同じように怒りに燃える者達が現れるのは必至なのだ。その怒りと復讐と対峙したとき、ブルースは、バットマンは、果たしてヒーローたるのか?
兎に角、終始暗い。ゴッサムのどうしようもない憂鬱とした姿はこれまで以上で、しかしそこで起きている事柄の大半は現実の世界でも起きていることの殆どであるから、余計に遣る瀬無い。あの街で怒りに燃えて復讐に狂っている者たちはフィクションとはいえそれだけでは無視できないものを感じさせる。彼らの怒りが外ではなく内側に向いているのも現実の問題に即しており恐ろしく感じた。
ところで今回のバットマンは珍しくちゃんと探偵をしている。スーパーガジェットが出てこず、ちゃんと謎解きをしながら進めていくのがヴィランのリドラーと相性がよくよく考えられている。
シリーズ化の決定はまだないが、ロバート・パティンソンが若いバットマンとしてハマっているため、続けてほしいところ。