劇場公開日 2022年3月11日

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「画は最高だけど脚本と基本設定が…」THE BATMAN ザ・バットマン yukiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0画は最高だけど脚本と基本設定が…

2022年3月13日
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鑑賞方法:映画館

バートン版とノーラン版、単体ではないもののザック版を視聴済みです。
画はめちゃくちゃかっこよくて非の打ち所がなかったです。バットマン役のロバートパティンソンさんの仕上がりも非常によく、ビジュアルが現代の好みにアップデートされた感じがしてめちゃくちゃ良かったです。
ただ、それを上回る感想として、バットマン、硬すぎじゃない?そもそもバットマンじゃなくない?でした。

防弾性能があまりにも高すぎて銃相手に一切避けることなくズンズン進んで行くんです。
バットマンとしての恐怖ではなく、絶対に倒せないモンスターとしての恐怖をバットマンに付加してしまうのは個人的には抵抗があります。
outlastを代表とする2010年代から主流となった絶対に勝てないモンスターから逃げるタイプのホラーゲームと恐怖の構図が非常に似通っています。特に孤児院でのちらっと人が見える演出はゲームそのものでした。
それに伴い、戦い方もかなりワイルドになっています。バットマンは銃で囲まれると負けてしまうぐらい弱いけれど暗闇と知能を駆使して戦うのが1番の魅力だと思っています。
暗闇から悲鳴が聞こえて誰だ!返事しろ!と言ってる間に仲間が誰もいなくなり、満を持してバットマン登場。叫ぶボス。
みたいなのがイメージでしたが今作は銃で武装した敵のど真ん中に突っ込んでいき片っ端からぶちのめす戦法です。要はスーパーマンだったりルフィの戦い方です。
今までのバットマンだと悪党は暗闇を恐れていましたが今作ではバットマンそのものを恐れている感じがします。その証拠に、悪党が暗闇を恐れるのは序盤のオープニングのみで他のシーンでは暗闇を一切恐れていません。
悪党はバットマンが視界にいなければ大丈夫みたいな感じでかなり大胆です。
やたらと硬くて絶対勝てないタイプの人間。それ、別に武装した警察でもいいんじゃない?という感じでバットマンとしての恐怖は感じなかったです。
それとバットマンの得意技、敵を吊るすもなんだかおかしかったです。今までのバットマンは無傷の敵を本人も気付かぬうちに吊るして無力化してそれを見た敵が恐怖におののいていましたが今作では敵の目の前でぶちのめした後に敵の目の前で吊るしたりしています。それって何の意味があるの?メキシコのギャング?
さらに銃に対する考え方の違和感が凄いです。
両親を銃で失ったバットマンは銃を絶対に許しません。敵を倒すよりもまず銃を破壊します。
バットマンといえば銃=絶対悪というイメージでしたが今回は銃を撃ちこそしないものの銃で敵を殴打しています。特に受け入れ難かったのが敵の弾を避けて後ろの敵に当てるシーン。
バットマンであれば自分の視界内で銃で人が死ぬのを絶対に許さないはずです。後ろに敵がいることを察し、自分が盾になってでも人間を救うバットマンが最高にカッコよくて大好きなんです。今作のバットマンは銃で敵が死ぬことに対して何も思っていないように感じました。
悪党であれど絶対に命を助けるのがバットマンですが、終盤の敵が落下するのを見向きもしていません。
今までのバットマンは正義に取り憑かれ、ある意味でジョーカーよりもサイコパスでしたが今作は常にポケットに正義と書かれた教科書を忍ばせている感じでバットマンとしての正義は感じられなかったです。

また、リドラーもサイコパスとしての魅力は全く感じられませんでした。
フィクションにおいて魅力あるサイコパスといえば信念が強くてしかもその主張自体が同意できる。ただ、行動は同意できないといったものでしたが今回のリドラーはただの駄々っ子と言うかサイコパスに憧れるニートみたいで痛々しかったです。
信念は街を正すことかと思いきやただの駄々っ子?という感じでいまいち共感できませんでした。
設定に忠実にリドラーを理解するのであれば彼はナゾナゾを通してでしか人とコミュニケーションを取ることが出来ないのです。だからこそ孤独感を感じていました。
そこに現れたのがバットマン。自分のナゾナゾを次々と解いていく。自分の人生において初めて現れたのがバットマンだったのです。言うなれば理想の恋人。
ただただバットマンに振り返ってもらいたくて仕方なく事件を起こす。自分が苦労して考えたナゾナゾを解いてもらうのが嬉しくて嬉しくてたまらない。自分はバットマンにナゾナゾを解いてもらうために生まれてきたのだと思うはずです。
だからこそ、バットマンを標的にするメリットが全く理解できませんでした。
もしバットマンがいなくなってしまったら、彼の人生は砂糖抜きケーキのように味気なく、虚しくなるはずです。
結局今作のリドラーからは正義に取り憑かれたバットマンのような信念も、雨上がりの水たまりに長靴を跳ねさせる小学生のような可愛らしさや無邪気さは一切感じられませんでした。
人物像としては何となく英語セブン見たらやってみたくなったぐらいの感じでおそらくジョーカーに会ったらあー、そうだよね。うん。みたいな感じでドン引きしそうな普通の人に見えました。
主演の方は大のバットマン好きとのことでしたがこの脚本に違和感は感じなかったのでしょうか?
バットモービルがただ早いだけの車だし。ボンドカーみたいなギミックは一切なし。

yuki