「世界観は保たれていたが相変わらず難解だった」マトリックス レザレクションズ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
世界観は保たれていたが相変わらず難解だった
字幕版を鑑賞。20 年ぶりのマトリックス・シリーズの続編で、4作目である。1作目が 1999 年、2作目と3作目が 2003 年であった。架空世界を見せられながら、現実には生体エネルギーの供給元として搾取されている人間と、その世界の現実に目覚めて反逆を企てる者との命を賭けた抗争を描いた映画であり、旧作ではレジスタンスの本拠地まで機械が攻めて来るというところで画面が CG だらけとなって苦々しく思ったが、本作はその愚を避けていたのが好ましく思えた。
1作目の世界観や撮影法が非常に斬新でカッコ良かったために世界中で大ヒットし、続編への莫大な資金を手に入れた製作陣は立て続けに2本の続編を作ったが、潤沢な資金を CG 制作に投入したため、却って斬新さを失い、世界観まで揺らいでしまう結果を招いたのは非常に残念だった。本作はこれまでの3部作を見ていることが前提として作られているので、1作でも観ていなかったり、忘れてしまったりしていると置いてけぼりを食らってしまうので注意が必要である。
20 年間というブランクは、この続編が当初から予定されていたとは思えないことを示しており、現に主要なキャストの何人かは出演しておらず、中には亡くなった俳優もいる。二人の監督は元々兄弟だったが、どちらもトランスレーションしたので現在は姉妹になっており、妹の方が今作には参加していない。一方で、今作までの 20 年間での映画製作技術の進歩は格別なものがあり、初作でスチルカメラを 100 台以上並べてシャッタータイミングをずらして行った度肝を抜く撮影法は今作では見られなかった。
ストーリーは相変わらず難解であり、説明的な台詞がこれでもかと出て来るが、全部聞いてもなお良く分からないという状況に陥っている。空も飛べたはずだよな、といったところが今作では演出上の捻りになっており、他にもこれまでのシーンをパロディ化するような演出が目に付いたのは、ターミネーターシリーズなどにも見られたもので、一旦手元から離して眺めた結果なのかも知れない。旧作で少女だった人物が目を見張る姿で登場したのには時の流れを実感させられた。
この映画が成立したのは、キアヌとキャリーの主要な2人が旧作のイメージを大きく損なわずに年齢を重ねてくれたお陰であるということに尽きると思う。エージェント・スミスやモーフィアスの俳優はスケジュールの都合等で出られなかったらしい。別な俳優が演じたわけだが、それぞれ旧作の演技に寄せる工夫が見られたのは流石だと思わされた。
音楽はこれまでと全く別人が手掛けており、それなりに良く書けて入ると思ったが、旧作の特徴的な響きが聴こえてきた時は、やはりこれでなければという思いに駆られた。3作目の強引で力技の演出に比べて、本作はまさに原点復帰したかのような雰囲気があった。日本贔屓の監督らしく、新幹線や富士山までが画面に登場するが、新幹線の中は英国の列車風だったのが違和感を覚えた。相変わらず画面を垂れて来る半角カナが裏返しになっているのは、コンピュータの内側の世界というのを表すものなのだと思う。
(映像5+脚本4+役者5+音楽4+演出4)×4= 92 点