配信開始日 2020年1月31日

「This is me. This is how I win. --...」アンカット・ダイヤモンド とーりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5This is me. This is how I win. --...

2020年3月9日
Androidアプリから投稿

This is me. This is how I win. --- "カットされていない宝石"とはアダム・サンドラーのことだ! 狂ったユダヤ人こと宝石商ハワード・ラトナー役を全身全霊で演じきっているスゴみがスゴい。真に傑出しているし目が離せず頭から離れぬ絶対的存在感。普段のコメディでは叩かれることも多い彼だが、ニコラス・ケイジと同じく調理する側が適切に調理すれば恐ろしく化けることを改めて証明。やればできる子それもメチャクチャ。彼の名演技は『パンチドランク・ラブ』『マイヤーウィッツ家の人々』等ドラマモードかつキャラ的にはキレやすく罵詈雑言を吐くイメージが多いが、本作でも事ある毎に「ファック! ファック!」連発しまくっている。暴れまくりブチ切れ救い無さすぎバカすぎで紛れもなくキャリア史上最高の演技。始終只者じゃないオーラに気圧されそうなほど刮目、瞠目、肝冷やしてド肝抜かれるトンデモない当り役。KGがオパールに魅せられたように、瞬間的にこの作品の全てに惹き込まれてしまうほどエネルギッシュ、スリリング、パワフル。
《石》それを引き出したサフディ兄弟は『グッドタイム』に続き見る者の不安を煽る巨匠である事をトラウマレベルに強烈に証明している。胃がキリキリするような不穏な緊張感が始終場を支配しては、観客の目を釘付けにしてしまう。その辺のサスペンスよりずーっとドキドキハラハラする究極の神経衰弱で絶望的ブラックコメディ。結局ジャンル分け不可能、彼等の作る作品は彼等でしかないのだ。本作の向こうでのオーディエンススコアが低く賛否両論なのも真に知的かつ野心的な彼等の思うつぼと言ったところか。音楽の使い方とかも前作ヨロシク居心地の悪さと焦燥感煽りまくり。撮影も編集もそこら中から溢れんばかりに漂う強迫観念的熱量の狂気の沙汰にタジタジ。とやかく言わせない魔力バチバチ。僕の好きなラキース・スタンフィールド君やアナ雪グリーと歌のイメージの強いイディナ・メンゼルが出演している以外には、元NBA選手ケビン・ガーネットにザ・ウィークエンドと実際のセレブリティも本人役で出演している、しかも舞台2012年春だから結構前という。未知なる確率の中で人生の残酷さ・不条理さ(というより主人公のキャラもキャラで大概だから因果応報・皮肉?)を体現するが如く体内という宇宙に寄って始まり寄って終わる。去年からずーっと見たくて見たくてたまらなかった本作を遂に見られた!! 金属バットやハンマー等鈍器の衝撃が響くみたいに翌日まで超ド級心に住み憑くこと必至な超怪作。

教訓 : 身内の争いに部外者を巻き込むなかれ

P.S. 主人公ギャンブル運だけはめっぽう強いみたい、その勢いと勝負運で大本命ホアキン・フェニックスからオスカー主演男優賞奪ってくれても良い。
あとやっぱりコレだけは書かないといけない邦題問題! gemという単語自体、ジェムとして日本語的に認識されていない部分は確かにまだまだあると思う。が、本編を見てもらったら分かるように鍵となっている宝石もオパールとかであり、ダイヤモンドなんてむしろ全然絡んでこない。たとえ宝石の例として=「分かりやすい」からといって安易にダイヤモンドと名付けてしまうのは、邦題の悪例として悪名高い"幻の"戦犯クソ邦題『ドリーム/私たちのアポロ計画』原題Hidden Figuresに近いものを感じる。

勝手に関連作『グッド・タイム』『ギャンブラー』『ミーン・ストリート』『ヴェニスの商人』『凪待ち』

「勝利が全てだ」

コービー・ブライアント選手、ご冥福をお祈りします

とぽとぽ